バスからホテルに到着し、腹が空いていた小笠原ら、サマーゲームパーティー参加者が目にしたものは、バンケットホールいっぱいの豪華なバイキングだった。
ライブキッチンでコックが目の前でステーキを焼く香ばしい匂いがする。
トレーを受け取って、思い思いのブースで好きな食材を自分の皿に取り分けようとした時だ。
食材を通せんぼするように、タブレットが問題を表示する。
『問題:「シェーブルチーズ」は、何の動物のミルクから作られているでしょうか?』
(こっちは腹が限界だというのに、なんだって……)
と心の中で毒づく。
なるほど「サマーゲームパーティー」だけあって、食事にもクイズが出されるというわけだ。
納得しながら、悩むまでもなく、マイクのボタンを押して答える。
「答えは、ヤギのミルクだろ!」
小笠原の声を認識したタブレットは『正解!』と画面を表示したあと、すぐに『好きなお食事をお取りください』とメッセージが現れた。
(まあ、食べることが目的なんだから、ゲームは簡単だな)
片方の口の端を吊り上げてから、トングを取ろうと肘を後ろに下げたときだ。
ドン、と背中に軽い衝撃があった。
「ごめんなさい」
透き通った少女の声がした。
こちらも咄嗟に、
「ごめん」
と声を出して振り返る。
――小笠原の目に飛び込んできた視覚情報の衝撃で、一瞬、時間が止まった。
振り返れば、そこには少女が立っていた。
いや、このゲームの参加者のほぼ半分は女子なので、驚くのはそこじゃない。
カーキ色のハーフパンツからのぞく脚は細くまっすぐで、コンバースの黒いスニーカーへと伸びている。少しオーバーサイズのクリーム色のTシャツには、スポーティな白いラインが入っている。
そんな普通も普通の服装なのに、足も腕も日焼けを知らないように白い。細い首の上には、薄めの栗色――言い換えれば、亜麻色――のショートヘア。それに縁取られた、光をたくさん集めたプリズムのような大きな目と、小さな鼻。バラ色の頬に、口角の上がった小さなピンクの唇が奇跡のようなバランスで配置され、透き通るような肌の白さと相まって、発光しているように見えた。
彼女は、自身のその輝きを隠すように、アディダスの黒いキャップを目深にかぶっていた。
胸がドキリと跳ね上がる。
(ああ、この子だ!)
と小笠原は直感した。
「……君、ナイチンゲール?」
絞りだした言葉は、蚊の鳴くようにかすれていたが、その言葉に彼女は少し嬉しそうに微笑んだように見えた。
「スパロウ?」
彼女が小笠原のハンドルネームを呼んだ時、彼女の後ろには光が降り注ぎ、天上から天使が、祝福のラッパを鳴らし始める。
――それが、有栖川美知、通称・未知、そして、ハンドルネーム・ナイチンゲールとの忘れ得ぬ出会いだった。
ライブキッチンでコックが目の前でステーキを焼く香ばしい匂いがする。
トレーを受け取って、思い思いのブースで好きな食材を自分の皿に取り分けようとした時だ。
食材を通せんぼするように、タブレットが問題を表示する。
『問題:「シェーブルチーズ」は、何の動物のミルクから作られているでしょうか?』
(こっちは腹が限界だというのに、なんだって……)
と心の中で毒づく。
なるほど「サマーゲームパーティー」だけあって、食事にもクイズが出されるというわけだ。
納得しながら、悩むまでもなく、マイクのボタンを押して答える。
「答えは、ヤギのミルクだろ!」
小笠原の声を認識したタブレットは『正解!』と画面を表示したあと、すぐに『好きなお食事をお取りください』とメッセージが現れた。
(まあ、食べることが目的なんだから、ゲームは簡単だな)
片方の口の端を吊り上げてから、トングを取ろうと肘を後ろに下げたときだ。
ドン、と背中に軽い衝撃があった。
「ごめんなさい」
透き通った少女の声がした。
こちらも咄嗟に、
「ごめん」
と声を出して振り返る。
――小笠原の目に飛び込んできた視覚情報の衝撃で、一瞬、時間が止まった。
振り返れば、そこには少女が立っていた。
いや、このゲームの参加者のほぼ半分は女子なので、驚くのはそこじゃない。
カーキ色のハーフパンツからのぞく脚は細くまっすぐで、コンバースの黒いスニーカーへと伸びている。少しオーバーサイズのクリーム色のTシャツには、スポーティな白いラインが入っている。
そんな普通も普通の服装なのに、足も腕も日焼けを知らないように白い。細い首の上には、薄めの栗色――言い換えれば、亜麻色――のショートヘア。それに縁取られた、光をたくさん集めたプリズムのような大きな目と、小さな鼻。バラ色の頬に、口角の上がった小さなピンクの唇が奇跡のようなバランスで配置され、透き通るような肌の白さと相まって、発光しているように見えた。
彼女は、自身のその輝きを隠すように、アディダスの黒いキャップを目深にかぶっていた。
胸がドキリと跳ね上がる。
(ああ、この子だ!)
と小笠原は直感した。
「……君、ナイチンゲール?」
絞りだした言葉は、蚊の鳴くようにかすれていたが、その言葉に彼女は少し嬉しそうに微笑んだように見えた。
「スパロウ?」
彼女が小笠原のハンドルネームを呼んだ時、彼女の後ろには光が降り注ぎ、天上から天使が、祝福のラッパを鳴らし始める。
――それが、有栖川美知、通称・未知、そして、ハンドルネーム・ナイチンゲールとの忘れ得ぬ出会いだった。



