初恋セレナーデ

「ずっと、好きだった」


 五年の歳月が過ぎても。


 律は、あたしを思い続けてくれた。



 あたしは……?



「瑠花?」

「え?」


「瑠花は、違うの?」


 あたしが、一番避けてた問い。


 その答えを出すときが、来たんだ。


「……違わない」


「え」


「あたしも、律が……好きだよ」


 やっと、言えた。


「今も、これからも」


 そう言って、あたしは背伸びをする。

「……あれ?」


 届かない。



「瑠花?」


「あ……あはは」

 そりゃ、そうだよね。

 律はもう、小さな男の子じゃない。


「ねえ、律」

「何?」

「鼻血、もう出さない?」

「え?」

「だって、あたしがキスしたらすぐ鼻血出してたじゃん」

 いつものように、あたしは律をからかう。

 彼の反応は。



 「試してみる?」


 予想外だった。
 

「…………は?」

「何、その反応」

「い、いや。ちょっと、やだ、何それ」


「いや、瑠花こそ何だよ。自分から誘っといて」

「誘うって……」

「違うの?」


 あれ?
 おかしいな。

 律って、こんなキャラだったっけ?


「……違わない」

「聞こえない」

「違わない!」

「ぷっ……」

「笑うな!」


 あたしの方が、からかわれた。


「瑠花」

「何よ」

「不意打ちがいいか、前置きありがいいか。どっち?」

「何の話?」

「キス」

「!!」

 やだ、もう。何、この展開……。
 これ、本当に律なの?


 もう、どんな顔すればいいのか……わかんなくなってきた。


 まともに律の顔すら、見られないなんて。


「瑠花」

「な、何?」


「オレからして、いい?」

「――!」

 この五年間で。

 さらっと、そんなことが言えるようになったんだ。

 「ボク」って言ってた小さな律。いつのまにか、「オレ」って言うようになってるし。

 あの可愛かった律に、こんなにドキドキさせられるなんて。


 五年前のあたしには、想像もつかなかった。

「瑠花?」

「は、はいっ!」

「何それ」

「うるさいな」


 その時。


 「――ッ」


 あたしの唇が、塞がれた。


 律が、すごく近い。


 ゼロ距離に、律がいる。


「瑠花」

 吐息混じりの律の声。

 やや低めの、甘い声で。


「好きだ」


 もう一度、唇が重なった。


 あたしを抱き寄せる律の腕に力が込められる。

「律……」


 このまま、ずっと。

 律を感じていたい。


 あたしも、律の腰あたりに腕を回す。

 もう、律から離れないように。


 律も、あたしと同じ気持ちなのかな。

 だったら、すごく嬉しい。


 律のぬくもりが、唇から全身に伝わってくる。


 ずっと、こうしたかったのだと。

 全身で、伝えているように感じた。





 唇が離れた。


 鼓動が早い。


「律」

「何?」

「これからのあたしは……律だけのものになるってことで、いい?」

「うん」

「じゃあ、あたし……もっと女磨かなきゃ」

「え?」


「これからは、いっぱいキスできるね」

「!!」

 他の誰でもない、律のために。
 幼なじみじゃなくて。
 ちゃんと、彼女として。

「あ……」

「え、何?」



「…………ティッシュ」


「え」



 やっぱり、律は律だった。


 五年経っても、あたしを好きでいてくれた。


 ピュアで誠実な。


 年下の、あたしの――自慢の恋人。