初恋ラプソディ

「律」

「……はい」

「その顔、どうした」

 声が低い。

「……殴られた」

「誰に」

 即答だった。

「……」

「誰だ」

 もう一度。

 今度は、明らかに声のトーンが違う。

 ママはパパの方を見ている。

 パパはいつも冷静だけど、今は完全に目が据わっている。

「亞紗斗さん、ちょっと待って。まず律の怪我を――」とママが言うのを遮って、

「病院へ行く」とパパが言った。

「今すぐ」

「う、うん」

 ボクは小さく息を吐く。

 パパが怖い……と思うときは、こうやって静かに怒るときだ。

「律」

 パパがボクを見据えて言った。

「すぐに支度しろ」

「……はい」

 こうなると、もう誰もパパを止められない。

 *

 幸い、ボクは大きな怪我ではなかった。

 頬の打撲と、口の中を少し切った程度。

 それでも帰宅してからも、ママはずっと落ち着かない様子だった。

「ほんとにもう……」

「大丈夫だって」

「それ何回目?」

「たぶん五回目」

「数えないで」

 ママがボクの頬を冷やしていると。

 ママのスマホが鳴った。

「……若葉?」

 画面に表示された名前。

 瑠花のママ、若葉さんだ。

(嫌な予感……)

 ママが電話に出る。

 スピーカーフォンにしていた。

「もしもし?」

『梨歩?』

「若葉! ちょうどよかった! 律が怪我して帰ってきて――」

『うん。そのことで電話したの』

「え?」