初恋ラプソディ

 視界が揺れる。

 一歩よろめいて。

 口の中に鉄っぽい味。

「……っ」

 頬が熱い。

 殴られた。この男に。

 体格も力も、ボクよりずっと上だ。

 だからって。

 なんでボクが殴られなきゃいけないんだ。


 と、その時だった。

「何すんのよ!!」

 聞いたことのない瑠花の声が響いた。

 振り向くと。

 瑠花が……完全に、キレていた。

「あたしの大事な律に……何してんのよ!!」

「は!? お前――」

「最低!!」

 バシッ。

 乾いた音。

 瑠花の平手が男の頬に入る。

「痛っ!」

「あたしのこと、顔と身体しか見てなかったくせに!」

「瑠花、ちょ――」

「しかも、関係ない律まで殴るとか、絶対許さない!!」

 もう一発。

「待て待て待て!」

「逃げんな!! この変態猿ッ!!」

「瑠花!」

「律は黙ってて!!」

「……はい」

 怖い。

 いや。

 ものすごく怖い。

 結局、男は捨て台詞を吐いて逃げていった。

 瑠花は肩で息をしながら、その背中を睨んでいた。

「……最っ低」

 そして、ボクの方を振り返る。

「律!」

「何」

「顔!」

 ボクの頬へ手を伸ばす。