初恋ラプソディ



 数日後。

 学校帰り、ボクはヴァイオリンのレッスンへ向かう途中だった。

 いつもの近道。

 人気(ひとけ)の少ない公園の横を通ったときだった。

「ちょっと……っ、ねぇ、やめてってば!」

  聞き覚えのある声がした。

 足が止まる。

「……瑠花?」

 植え込みの向こうに、瑠花がいた。

 それと、知らない男子。

 制服を見る限り、瑠花より二つくらい上。

 たぶん、例の彼氏……だろうか。

 男子が瑠花の腕を掴んでいた。

「いいじゃん。付き合ってんだから」

「嫌だって言ってるでしょ!」

「キスくらい普通だろ」

「だから今は嫌なの!」

 瑠花が顔を背ける。

(これは……)

 男が無理やり顎へ手を伸ばした。

(ヤバいやつだ)

 咄嗟に、ボクは二人のいるところへ駆け寄る。

「やめろ」

 自分でも驚くくらい低い声が出た。

 二人が振り向く。

「……律?」

 瑠花の目が大きくなる。

「何だよ、お前」

「嫌がってるだろ」

「は?」

「手、離せよ」

 男が鼻で笑った。

「ガキには関係ねえよ」

「関係ある」

「何が?」

「瑠花が嫌がってる」

 それだけで十分だった。

 ボクは二人の間へ割って入る。

「律、いいから」

「よくない」

「でも」

「瑠花は下がってて」

 男の顔が露骨に苛立つ。

「お前、こいつの何?」

「……幼なじみ」

「なら口出すなよ」

 男がボクの肩を押した。

「付き合ってる俺のほうが瑠花のこと知ってんだから」

「じゃあ」

 ボクは見上げた。

「嫌がっていることくらい、わかるだろ」

 男の顔が歪んだ。

「面倒くせえな」

 そして、「はあ」と大きくため息をつき、怪訝な表情で言い放った。

「瑠花だって、最初はノリよかったんだよ。顔も可愛いし、スタイルいいし。連れて歩くには最高だと思ったから付き合っただけで――」