初恋ラプソディ

*

 数日後。

 学校帰り、ボクはヴァイオリンのレッスンへ向かう途中だった。

 いつもの近道。

 人気(ひとけ)の少ない公園の横を通ったときだった。

「ちょっと……っ、ねぇ、やめてってば!」

  聞き覚えのある声がした。

 足が止まる。

「……瑠花?」

 植え込みの向こうに、瑠花がいた。

 それと、知らない男子。

 制服を見る限り、瑠花より二つくらい上。

 たぶん、例の彼氏……だろうか。

 男子が瑠花の腕を掴んでいた。

「いいじゃん。付き合ってんだから」

「嫌だって言ってるでしょ!」

「キスくらい普通だろ」

「だから今は嫌なの!」

 瑠花が顔を背ける。

(これは……)

 男が無理やり顎へ手を伸ばした。

(ヤバいやつだ)

 咄嗟に、ボクは二人のいるところへ駆け寄る。

「やめろ」

 自分でも驚くくらい低い声が出た。

 二人が振り向く。

「……律?」

 瑠花の目が大きくなる。

「何だよ、お前」

「嫌がってるだろ」

「は?」

「手、離せよ」

 男が鼻で笑った。

「ガキには関係ねえよ」

「関係ある」

「何が?」

「瑠花が嫌がってる」

 それだけで十分だった。

 ボクは二人の間へ割って入る。

「律、いいから」

「よくない」

「でも」

「瑠花は下がってて」

 男の顔が露骨に苛立つ。

「お前、こいつの何?」

「……幼なじみ」

「なら口出すなよ」

 男がボクの肩を押した。

「付き合ってる俺のほうが瑠花のこと知ってんだから」

「じゃあ」

 ボクは見上げた。

「嫌がっていることくらい、わかるだろ」

 男の顔が歪んだ。

「面倒くせえな」

 そして、「はあ」と大きくため息をつき、怪訝な表情で言い放った。

「瑠花だって、最初はノリよかったんだよ。顔も可愛いし、スタイルいいし。連れて歩くには最高だと思ったから付き合っただけで――」