初恋ラプソディ

 瑠花め。

 ボクに二回も頬キスするなんて……。まさか、そこまでしゃべってないよな?

 瑠花は、昔から距離が近かった。

 三つ年上で。

 ママの親友の娘で。

 小さい頃から何度も一緒に遊んで。

「律ー!」

 名前を呼ばれれば振り向くのが当たり前で。

「髪さらさらー」

「触るな」

「いいじゃん、減るもんじゃないし」

「崩れる」

「細かーい」

 勝手に髪を触られるのも。

 頬をつつかれるのも。

 いつものことだった。

 だから。

「瑠花ちゃん、彼氏できたんだって」

 ママからそう聞いたとき。

 胸の奥が変な感じになった理由が、わからなかった。

「……へえ」

「反応薄いね」

「別にボクには関係ないし」

「そう?」

「うん」

 本当に。

 関係ない。

 そう思った。

 そのはずだった。

 なのに。

 誰なんだろう、とか。

 どんなやつなんだろう、とか。

 瑠花はそいつの前では、どんな顔で笑うんだろうとか。

 そんなことばかり気になった。

 自分でも意味がわからなかった。

 *

 そして。

 あの日。

 嫌がる瑠花に、無理やりキスしようとしていた男を見た瞬間。

 頭の中が真っ白になった。

『やめろ』

 考えるより先に声が出た。

 瑠花が嫌がってる。

 それだけで。

 腹が立った。

 男に殴られた頬は痛かったけど。

 そんなことより。

『顔も可愛いし、スタイルいいし。連れて歩くには最高だと思った』

 そう言われた瑠花が……泣いたことのほうが。

 ずっと嫌だった。


 あいつは。

 何もわかってない。

 瑠花は。

 顔が可愛いだけじゃない。

 見た目が目立つだけでもない。
 

 すぐ笑うし。
 すぐ怒るし。
 困ってるやつがいたら放っておけないし。
 泣いてても次の瞬間には笑おうとする。

 強そうに見えるくせに。
 本当は結構傷つきやすい。

 そんなこと、ボクはずっと前から知っている。

 だから。

 あいつが瑠花を泣かせたことが――許せなかった。