初恋ラプソディ

 何で。

「パパ」

「……そういうことか」

「何が」

「さっき妙に説明が短いと思った」

「…………」

 裏切られた。

「亞紗斗さん!」

 ママがパパの腕を叩く。

「聞いた!?」

「ああ」

「律、瑠花ちゃんにキスされて鼻血出したんだって!」

「聞こえてた」

「どうしよう!」

「何がだ」

「だって律が!」

「鼻血出しただけだろ」

「キスされて!!」

「頬だろ」

「そうだけど!」

 パパがボクを見る。

「律」

「何」

「……お前」

「何」

「意外とわかりやすいな」

「…………」

 最悪だ。

「パパにだけは言われたくない」

「何でだ」

「ママ相手だと同じじゃん」

「違う」

「同じ」

「違う」

「絶対同じ」

「律」

「何」

「話を逸らすな」

「パパも、ママにキスされて鼻血出せばいいんだ」

「出さない」

「わからないじゃん」

「出さない」

「何、その自信」

「ちょっと待って」

 ママが、急にボクの顔を両手で挟んだ。

「律」

「何」

「瑠花ちゃんのこと好きなの?」

「…………」

 来た。

 一番来てほしくなかったやつ。

「ママ」

「うん?」

「離して」

「答えて」

「嫌だ」

「なんで?」

「なんでも」

「律?」

「知らない」

「好きなの?」

「知らないって」

「じゃあ嫌い?」

「違う」

「じゃあ好き?」

「なんでそうなるの」

 ママの目が、どんどん輝いていく。

 やめてほしい。

「もしかして……」

「何」

「瑠花ちゃんに彼氏できたって聞いたとき、ちょっと機嫌悪かったのって」

「悪くない」

「悪かったよ」

「悪くない」

「亞紗斗さんもそう思ったよね?」

「ああ」

「パパ!」

「事実だ」

「パパ、裏切りすぎだろ……」

 パパが、ほんの少し口元を緩める。

「面白いな」

「何が」

「律が」

「もう、笑うなって」

 ママはもう完全に楽しんでいる。

「律ぅ」

「何」

「初恋?」

「違う」

「ほんとに?」

「知らない」

「じゃあ今、瑠花ちゃんにまたキスされたら?」

「…………」

 想像した。

 最悪だ。