初恋ラプソディ

「最低だな」

「……うん」

「二度と近づかせるな」

「それは若葉たちがちゃんと対応すると思うよ。特にエディが。瑠花ちゃんのこと、溺愛してるし」

「だとしても、足りない」

「何が!?」

「律を殴った」

 そこ。

 やっぱりそこ。

「亞紗斗さん」

「何だ」

「怒ってる?」

「見ればわかるだろ」

「かなり?」

「ああ」

 即答。

「今すぐ行きたいくらいだ」

「ダメ!!」

「パパ」

 ボクはパパに言った。

「何だ」

「ボクは、大丈夫だから」

「そういう問題じゃない」

「でも」

「お前が許しても、俺は許さない」

 ボクは、何も言えなかった。

「自分より年下の相手を殴るようなやつだ」

「……」

「まして、律は瑠花を助けただけだろ」

「ああ」

「なら、律が殴られる理由はない」

 低い声。

 でも、ただ怒っているだけじゃない。

 ボクのこと、心配してくれているんだ。

 パパもきっと――怖かったんだ。

「パパ」

「何だ」

「ありがとう」

「……」

 一瞬――パパの表情が止まった。

「別に」

「パパもそれ、言うんだ」

「うるさい」

 ママが笑った。

「ほんと、親子」

「違う」

「そっくり」

「違う」

「律も『別に』って言うもん」

「ママ」

「何?」

「おい、うるさいぞ」

「ほら!」

 笑ったら。

 さっきまでの怖さが、少しだけ和らいだ。

 でも。

 パパは、多分……まだ納得していない。

「律」

「何」

「次からは」

「うん」

「助けるなとは言わない」

「うん」

「自分も守れ」

「……」

「殴られていい理由にはならない」

「わかった」

 パパが、ボクの腫れた頬へ、触れないように手を伸ばす。

 その手が。

 ほんの少し震えていた。