初恋ラプソディ

「……でも、えらかったね。律」

 ママは涙を拭う。

「瑠花ちゃん、きっと怖かったよね」

「うん」

「律、ちゃんと止めたんだ」

「だって、嫌がってたから」

「うん」

 これで瑠花を守れたんだと思うと、ちょっと誇らしく思った。

「えらいよ、律」

「別に」

「別にじゃない」

「普通だよ」

「普通でも、できない人だっているよ」

 ママはボクの頭を撫でた。

「瑠花ちゃんを助けてくれて、ありがとう」

「ママが言うことじゃないよね」

「言いたいの」

 電話の向こうで、若葉さんも泣いている気配がした。

『梨歩、本当にありがとうって律くんに伝えて』

「うん」

『瑠花も……かなりショック受けてたけど、律くんがいてくれて本当に助かったって』

「うん……」

 そのとき。

「若葉」

 パパが口を開いた。

『亞紗斗さん?』

「相手の名前は」

「ちょっと亞紗斗さん」

 ママが制止する。

『え?』

「律を殴った男の名前」

 怖いパパだ。

 声が静かすぎる。

『あ、えっと……』

「学校もわかるな」

「亞紗斗さん!」

「梨歩、黙ってろ」

「いやいやいや、何する気!?」

「話をする」

「その顔で!?」

 パパはママを見て言う。

「息子を殴られて、何もするなと?」

「そうじゃないけど!」

「しかも瑠花に無理やりキスしようとしたんだろ」

「うん、まあ……」

「その上、律を殴った」

「そうだけど……」

 パパの目が、完全に冷めきっている。

 氷点下。

 いや、絶対零度。