初恋ラプソディ

 若葉さんの声が、少し申し訳なさそうになる。

『瑠花から全部聞いた』

「……瑠花ちゃん?」

 ママがボクを見る。

 ボクは思わず目を逸らした。

「律」

「……」

「何か隠してる?」

「別に」

『梨歩』

「うん?」

『律くん、瑠花を助けてくれたの』

 胸がざわつく。

「……どういうこと?」

『瑠花の付き合ってた先輩がね、嫌がってる瑠花に無理やりキスしようとしたみたいで』

「……え?」

 ママの隣で、パパの動きが止まった。

『そこに律くんが来て、止めてくれたって』

「律が……?」

『うん』

「それで殴られたの?」

『そうみたい』

 ママは何も言わない。

 そして、ボクの方を見る。

「……律」

「何」

「なんで言わなかったの」

「言ったら、ママ騒ぐじゃん」

「騒ぐよ!!」

 ママが泣く。

「当たり前でしょ……!」

「ママ……ほら、やっぱり」

「だって……」

 そりゃ、ボクだって本当は怖かった。

 自分よりも体格が良くて、力も強い相手に適うはずがないとわかってはいたけど。

 瑠花が傷つくのを、黙って見ていられなかった。

 でも、

 もし、もっと強く殴られていたら。

 もし、倒れて頭でも打っていたら。

 そう考えたら、後になって余計に怖くなって。

 それでも。

 たとえ、ボクが怖い思いや痛い思いをしたとしても。

 殴られたのが瑠花じゃなくて、ボクで良かったと、心のどこかで思っていた。