増子くんは恐そうだけど、本当は優しい

 その日、家に帰ってから兄さんにも増子くんの話をしてみた。

「え?」

 僕が渡した今日の分のプレゼントやお手紙を、確認している最中だった兄さんは、いったんそれをリビングのローテーブルの上に置く。

「それでその後は? また因縁つけられたりしなかった?」

 いつになく慌てた様子に、やっぱり兄さんは僕のことになると、ちょっと過保護だよなと恥ずかしくも嬉しくなる。

「大丈夫、もう増子くん帰ってこなかったから」
「それはよかった」

 休み時間に僕にひと言だけ言って、授業にはまったく出なかったのだから、決していいことではないはずなのに、兄さんはさも安心したかのように胸を撫でおろしている。

「知樹(ともき)の言うように、関わり合いにならないほうがいいよ。また何か言われても無視して。いいね?」

 知ちゃんと同じことを、兄さんも言うんだなと思っていたので、返事が少し遅れた。
 するとすぐに、兄さんが一歩間合いを詰めながら、確認してくる。

「聖良(せいら)? いいね?」
「あ……うん」

 僕が頷くと、何かぶつぶつ言いながらスマホをとり出している。
「どういうことだ」とか「状況を説明しろ」とか言っているので、たぶん知ちゃんに連絡しているんだろう。

 家が近所の知ちゃんは、兄さんにとっても小さな頃からよく知っている幼なじみだ。

 僕の話は簡単に内容を伝えるだけなので、いつも細かい説明を求められる知ちゃんには悪いなと思う。
 兄さんも僕に訊いてくれればいいのに、すぐに知ちゃんに連絡を取るのだから、実際詳しく説明する時間もない。

「わかった。そっちはお前に任せてるんだからな」と軽く圧をかけて、兄さんは知ちゃんとのやり取りを終わらせた。
 僕には笑顔で向き直る。

「聖良、夕飯前だけどお茶にするか? おいしそうなお菓子があったんで、帰りに買って来たんだ」

 指し示されたケーキ店の箱に、僕は「うん」と笑顔で頷いた。