教室から廊下へ出て、少し進んだところにある階段の曲がり角へ着くと、知ちゃんはささっと周囲をうかがい、僕の耳元へ顔を寄せた。
「聖ちゃん、増子の言ったことなんて気にするな。あいつヤバいから……」
「ヤバい?」
増子くんの言葉が、知ちゃんにも聞こえていたんだと知り、また頬が熱くなったけれど、「ヤバい」がよくわからなくて、僕は首を傾げた。
知ちゃんはそんな僕に肩を竦めて、早口で説明してくれる。
「いつも暴走族と喧嘩してるとか、実はヤクザの下っ端だとか、トクリュウの受け子だとか……野菜泥棒だとか、なんかいろいろ!」
(野菜泥棒? 知ちゃん……最後のほうはもうヤケになってない?)
僕が聞き返そうとするよりも早く、知ちゃんの手が僕の両肩を掴む。
「とにかく! 関わりあいにならない方がいいから、何を言われても無視! 返事しちゃダメ! わかった?」
前後に身体を揺さぶられて、がくがくと首が揺れる。
それを勝手に、僕が頷いたとしたらしく、知ちゃんは一方的に話を終わらせた。
「よし! じゃあ教室帰るよ!」
手を引かれて歩きながら、僕は知ちゃんの増子くん情報を、頭の中でもう一度考えてみる。
(なんか……不良ってこういうことやってるよねってイメージを、てんこ盛りで出された気がして、逆に信じづらい……)
だけど、僕の手を引いてずんずん歩いている知ちゃんは、小学校の頃からの幼なじみで、僕が困った時には手をさし伸べてくれる大切な親友だ。
頭の回転が速くて、運動が得意で、友だちも多くて、僕はいつも知ちゃんに助けられている。
その知ちゃんが言うのなら、増子くんには返事しなくていいかもしれない。
(そもそも、本当に僕に向かって言ったのか、まだ確かめてないし……返事しないで居なくなっちゃったし……聞こえなかったことにしたらいいのかも……)
そう考えをまとめながら、教室へ帰ったのに、僕の隣の席はいつの間にか、いつものように無人になっていた。
(なんだ……帰っちゃったのかな)
肩幅が広くて上背もあるものだから、増子くんが突っ伏しているとまるで見えなかった机が、今は丸見えだ。
(なんで、あんなこと言ったのかな……)
助言してくれた知ちゃんには悪いけど、ふとそういうことを思っては、何度もちらちらと、僕は次の現国の時間、ずっと隣の席を気にしていた。
「聖ちゃん、増子の言ったことなんて気にするな。あいつヤバいから……」
「ヤバい?」
増子くんの言葉が、知ちゃんにも聞こえていたんだと知り、また頬が熱くなったけれど、「ヤバい」がよくわからなくて、僕は首を傾げた。
知ちゃんはそんな僕に肩を竦めて、早口で説明してくれる。
「いつも暴走族と喧嘩してるとか、実はヤクザの下っ端だとか、トクリュウの受け子だとか……野菜泥棒だとか、なんかいろいろ!」
(野菜泥棒? 知ちゃん……最後のほうはもうヤケになってない?)
僕が聞き返そうとするよりも早く、知ちゃんの手が僕の両肩を掴む。
「とにかく! 関わりあいにならない方がいいから、何を言われても無視! 返事しちゃダメ! わかった?」
前後に身体を揺さぶられて、がくがくと首が揺れる。
それを勝手に、僕が頷いたとしたらしく、知ちゃんは一方的に話を終わらせた。
「よし! じゃあ教室帰るよ!」
手を引かれて歩きながら、僕は知ちゃんの増子くん情報を、頭の中でもう一度考えてみる。
(なんか……不良ってこういうことやってるよねってイメージを、てんこ盛りで出された気がして、逆に信じづらい……)
だけど、僕の手を引いてずんずん歩いている知ちゃんは、小学校の頃からの幼なじみで、僕が困った時には手をさし伸べてくれる大切な親友だ。
頭の回転が速くて、運動が得意で、友だちも多くて、僕はいつも知ちゃんに助けられている。
その知ちゃんが言うのなら、増子くんには返事しなくていいかもしれない。
(そもそも、本当に僕に向かって言ったのか、まだ確かめてないし……返事しないで居なくなっちゃったし……聞こえなかったことにしたらいいのかも……)
そう考えをまとめながら、教室へ帰ったのに、僕の隣の席はいつの間にか、いつものように無人になっていた。
(なんだ……帰っちゃったのかな)
肩幅が広くて上背もあるものだから、増子くんが突っ伏しているとまるで見えなかった机が、今は丸見えだ。
(なんで、あんなこと言ったのかな……)
助言してくれた知ちゃんには悪いけど、ふとそういうことを思っては、何度もちらちらと、僕は次の現国の時間、ずっと隣の席を気にしていた。



