教室を出て昇降口へ向かう間も、上履きから靴に履き替えて校門へ向かう間も、いろんな人たちが僕と増子くんをふり返って見た。
誰も声はかけてこないけれど、珍しい動物でも見るように注目されるのは、少し緊張する。
「バイト先に寄っていいか?」
増子くんがそう訊くので、僕は急いで頷いた。
「うんっ」
増子くんは、将来大工さんになりたくて、今も建設会社でアルバイトをしている。
今の現場は、学校の近くだと聞いていた。
校門を出て少し歩くと、工事をしている音が聞こえてくる。
想像していたよりも大きな建物で、たくさんの人が働いていて、僕はびっくりした。
「おおーっ、和威。今日は早いな」
声をかけてきた人に、増子くんが「おやっさんは?」と訊く。
その人が上を指さすので僕も上を見上げると、鉄骨を組んだ高い場所に、何人かの人がいるのが見えた。
増子くんが僕に「ちょっと待ってろ」と言って、その辺に転がっていたヘルメットを被り、鉄骨の足場を少し上る。
上の人たちが見えるくらいの位置まで行くと、カンカンと鉄骨を鳴らして合図した。
「おう、和威」
上にいる人が増子くんに気がついたので、増子くんが返事をする。
「用が出来たんで今日は休みます!」
「はああ?」
上の人たちが驚いた声を上げているけれど、僕もびっくりした。
工事の音にも負けないような大声を、増子くんが出したことに。
(あんな大きな声も出るんだ)
そして、その内容に。
(用って……え? ええっ?)
まさか自分と一緒に帰るために、アルバイトを休もうとしてくれているのかと焦る。
(いや、そこまでしてくれなくても……)
僕としては、一緒に教室を出て、学校から帰れた時点で、もう希望は叶えてもらっているのだ。
それ以上望んでいたわけでも、期待していたわけでもない。
「増子くんっ」
降りて来た増子くんにそう伝えようとしたけれど、「行くぞ」と手を引かれて、さっさとその場所を後にすることになった。
「明日は来るんだろうなー」
おじさんたちの問いかけに、増子くんは軽く手を挙げて応える。
「休んでよかったの?」
ようやく言えた僕の問いには、思いがけなく眼差しが降ってきた。
「ああ」
そう言って見つめられて、頬がかあっと熱くなるのが自分でもわかる。
それを増子くんに見られるのは恥ずかしくて、僕は慌てて前を向いた。
「聖良、家どっち?」
曲がり角で訊かれるので、僕は自分の家がある方を指さす。
「こっち」
名前を呼ばれることも、繋いだままの手も、足が地面に着いていないんじゃないかと思うほど嬉しかった。
夢の中をふわふわと歩いているみたいだった。
誰も声はかけてこないけれど、珍しい動物でも見るように注目されるのは、少し緊張する。
「バイト先に寄っていいか?」
増子くんがそう訊くので、僕は急いで頷いた。
「うんっ」
増子くんは、将来大工さんになりたくて、今も建設会社でアルバイトをしている。
今の現場は、学校の近くだと聞いていた。
校門を出て少し歩くと、工事をしている音が聞こえてくる。
想像していたよりも大きな建物で、たくさんの人が働いていて、僕はびっくりした。
「おおーっ、和威。今日は早いな」
声をかけてきた人に、増子くんが「おやっさんは?」と訊く。
その人が上を指さすので僕も上を見上げると、鉄骨を組んだ高い場所に、何人かの人がいるのが見えた。
増子くんが僕に「ちょっと待ってろ」と言って、その辺に転がっていたヘルメットを被り、鉄骨の足場を少し上る。
上の人たちが見えるくらいの位置まで行くと、カンカンと鉄骨を鳴らして合図した。
「おう、和威」
上にいる人が増子くんに気がついたので、増子くんが返事をする。
「用が出来たんで今日は休みます!」
「はああ?」
上の人たちが驚いた声を上げているけれど、僕もびっくりした。
工事の音にも負けないような大声を、増子くんが出したことに。
(あんな大きな声も出るんだ)
そして、その内容に。
(用って……え? ええっ?)
まさか自分と一緒に帰るために、アルバイトを休もうとしてくれているのかと焦る。
(いや、そこまでしてくれなくても……)
僕としては、一緒に教室を出て、学校から帰れた時点で、もう希望は叶えてもらっているのだ。
それ以上望んでいたわけでも、期待していたわけでもない。
「増子くんっ」
降りて来た増子くんにそう伝えようとしたけれど、「行くぞ」と手を引かれて、さっさとその場所を後にすることになった。
「明日は来るんだろうなー」
おじさんたちの問いかけに、増子くんは軽く手を挙げて応える。
「休んでよかったの?」
ようやく言えた僕の問いには、思いがけなく眼差しが降ってきた。
「ああ」
そう言って見つめられて、頬がかあっと熱くなるのが自分でもわかる。
それを増子くんに見られるのは恥ずかしくて、僕は慌てて前を向いた。
「聖良、家どっち?」
曲がり角で訊かれるので、僕は自分の家がある方を指さす。
「こっち」
名前を呼ばれることも、繋いだままの手も、足が地面に着いていないんじゃないかと思うほど嬉しかった。
夢の中をふわふわと歩いているみたいだった。



