増子くんは恐そうだけど、本当は優しい

 その日から増子くんは、なるべく屋上ではなく、教室で寝ることにしたようだった。

 寝ているようで、僕がそっちに気を取られて授業に集中していなかった時なんか、「英訳しろって言われてるぞ」とぼそっと教えてくれたりするので、実は時々起きていたりもするのかもしれない。
 僕はすぐに増子くんの方ばかり見てしまうので、前を向けという合図で教壇の方を指さされることもある。

 机に突っ伏している増子くんに、僕が普通に話しかけるので、みんな周りを避けて通るなんてこともなくなったし、なんなら知ちゃんなんか、会話の途中で増子くんに同意を求めたりもする。
 それに返事があることはないけれど——。

 それらを全部、「うるさい」とも「面倒だ」とも言わず、増子くんが僕の隣にいてくれることが嬉しかった。