【毎日更新】魔法王国の幼馴染み(旧・魔法王国の絆の軌跡)

 怪我も治り、完全に回復し動けるようになった頃。
 ルアンは、そろそろ書類仕事以外の仕事がしたいと彼は思っていた。

 そんな折、セリスとルアンに護衛の仕事が入ってきた。

 護衛対象は国王であるアリサンドで、隣国であるメルトビアまで護衛せよ、とのお達しだ。

 メルトビアとエルヴェリアは協定を組んでおり、近頃怪しい動きを見せている他国ついて合同会合を開催するとのこと。

 その会議にアリサンドも参加し、護衛をつけることになった。それが二人というわけである。

 厩舎(きゅうしゃ)前。
 セリスとルアンは、誰よりも早く馬の準備に取り掛かっている。

 「今日は久々の護衛の仕事か」
 「ここのところずっと書類仕事だったから、体動かすには丁度良いね!」
 「そうだな」
 「でも…」
 「?」
 「メルトビアの王子、私少し苦手なんだよね…」

 セリスは困り顔で言う。

 「あぁ…アイツか。」

 セリスの言葉で、ルアンは以前メルトビアを訪れた時の事を思い出す。
 前回二人がメルトビアを訪問した際、メルトビア王子がセリスに一目惚れし、猛アタックをしたのだ。

 無論、ルアンは今回も渡すつもりはないのだが。前回は、どうにかなったものの、今回はどうなるか分からない。


 「もし会っても無視しろよ?それか適当にあしらえ」
 「そ、それは出来るわけないよ、相手は王子なんだから」
 「それもそうか…。お前もう俺の恋人なんだから、アイツと二人きりにはなるなよ、気をつけろ」


イアンは最大限の忠告をして、セリスの頭を優しく撫でた。

 「うん」

 その今までとは違う手つきに、セリスは少し俯いて頬を赤く染め恥じらう。
 そんな甘い雰囲気が流れている中、
突然。

 「おーい、お二人さん。いちゃつくな-!」
 「私たちも居るからねー!」

 からかうようなガレンとグレースの声が聞こえ、ルアンとセリスはハッと我に返った。
そして慌ててパッと体を離した。

(い、いちゃ!?)
「いちゃついてない!」

 ガレンの言葉に真っ赤な顔で顔を赤くするセリス。ルアンは否定しているが、こちらも顔が赤くまるで説得力がない。

「そんな顔で言われてもなー」

ガレンが、ニヤニヤしながら更にからかう。

「うるせぇ!いつから見てやがった」
 「適当にあしらえのあたりだな。それにしても、やーーーっとくっついたのか、お前ら」
 「……まぁな」

 ルアンは、照れくさいのか、顔を見られないように後ろを向いて答えた。

 「いやー、良かった!二人がくっつくのを待ってたんだぜ!」
 「そうそう!本当に皆、待ってたんだから」
 「待って、皆って?」

 平常心を取り戻したセリスは小首を傾げながら聞き返す。

 「城の人達よ。早よくっつけって思ってたはずよ」

答えのはグレースだ。
 二人の仲の良さは城内でも有名であった。城の人間の多くは、ルアンとセリスの関係が、中々進展しないことにヤキモキしていた。
 それが、ついに恋仲になったのだ。
 きっと周囲に城の人間がいたら激しく頷いているだろう。

 「「!?」」

 自分達がそんな風に思われていたとは思わず、セリスとルアンは驚き目を丸くした。

 「嘘だろ…」
 「本当に皆、そう思ってたの?」
 「まぁ、だいたいの奴はな~」
((恥ずかしすぎる!))

 そして、セリスは恥ずかしさで再び赤くなった顔を両手で隠し、ルアンは片手で顔を覆い天を向いた。

 「あはは…照れてるところ悪いけど、そろそろ出発みたいだよ」

 グレースの台詞に、ルアンとセリスが城門前を見る。すると、既に準備を済ませた同行騎士数人が、ルアンたちを待っていた。

 「…ゴホン…さて、俺たちも行くか」

ルアンは、気まずさを咳払いでごまかし気持ちを切り替え三人を促す。

 「うん」
 「そうだな」
 「そうだね」

ルアンの一言にセリス、ガレン、グレースも切り替えた。
四人の表情が真面目なものに変わる。
そして四人は、メルトビアに向かうべく自分達の馬に跨った。

 前列にルアンとセリス、その後ろにガレンとエミリアといった配置で、馬車は動き出した。
馬車の真横には騎士達がいるため、魔法士の四人は馬車の後ろについている。

暫くの間、街道の石畳の道を進む。
国王を狙う輩はどこから来るか分からないため、街道だからと気を抜くことはしないのが基本だ。そのまま街や村を通り過ぎると、山林の中へと入った。木々の隙間から木漏れ日が差している。

 「今のところ順調だなー」

沈黙を破り、何気なくガレンが緊張感のない声で呟いた。

 「だからって油断するなよ」

 それを聞いたルアンが、前を向いたままガレンに注意喚起をした。

 「わーてるよ」
 「お前に何があろうが構わないが…。お前のせいで、もしセリスに何かあってみろ。どうなるか分かるよな?」

 軽く返事をしたガレンに、今度は声を低くしギロリと射るような目で釘を指す。"釘を指す"と言うよりは、むしろ恫喝に近い。

 「っ……怖ぇー」

 ルアンの眼光の鋭さに、ガレンの背中に冷や汗が流れる。それほどまでにルアンの眼光は凄まじいものだった。

 「まぁまぁルアン。落ち着いて。気持ちは嬉しいけど…やりすぎ」

 「そうだよー。ガレンだって悪気があったわけじゃないんだから」

 セリスとグレースがルアンを宥める。そのお陰か、ルアンは普段の状態に戻った。
 ガレンは、ほっと胸を撫で下ろした。