(それにしても、ルアン遅いな……。混んでるのかな?)
セリスは、チェアから降りて、ルアンが向かった方へと足を進めていく。
すると、飲食店に大分近づいた辺りで、何やら数人のビキニ姿の女性が集まっているのが見えた。
(もしかして……)
嫌な予感がし、遠巻きに様子を窺う。セリスの予感は的中したようだ。
その女性達の中心にはルアンが居た。
どうやら逆ナンをされているらしい。キャッキャッと囲まれて迷惑そうなのが傍目にも見て取れる。
(ルアン、困ってるな…。助けに入った方が良いかな?でも、あの中に入るのも…)
セリスが躊躇っている間も、女性達のルアンを誘う。
「少しくらい平気だって!」
「私達と遊ぼうよ!」
「(しつけーな)だから、無理なものは無理だ。他を当たれ。」
女性達の執拗な誘いに、ルアンが辟易していると、女性の一人がルアンの腕に手を絡めた。
「そんな事言わずに…一緒に遊びましょうよ。」
「っ!?離せ!」
ルアンは女性の腕を振りほどこうとする。しかし、その女性はルアンの腕を離さそうとはしない。思わず舌打ちしそうになるのを何とか押し留めた。
(くそっ!こんな所、セリスに見られたら…傷つけちまう!)
ルアンがそう危惧した時、離れて見ていたセリスが駆けてきた。それから女性達とルアンの間に割って入り、あろうことか啖呵を切る。
「やめてください!その手を離して!」
「セリス……」
「は? 何、あんた」
「私は、この人の、つ、妻です!」
セリスは顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「だったら、証拠を見せなさいよ。彼の妻だっていう言う証拠を!」
「そうよ!」
「あるものならね!」
女性達に次々にセリスを責め立てる。
「証拠なら、ここにあります!ほら!」
言い寄られたセリスが示したのは、首からチェーンで吊るしてルアンとの結婚指輪だ。
仕事時は自宅の机に仕舞い、持ち歩かないのだが、今は新婚旅行という事で、特別に持って来ていたのである。
セリスが必死に抗弁している横では、ルアンがしつこい女性達に内心苛立っていた。
「何よ、それ? ただの指輪にしか見えないけど?」
「これは彼との結婚指輪です! 中にちゃんと名前も彫ってあります!」
「そういう事だ。これで解っただろ」
尚も訝しむ女達に、怯むことなく果敢にセリスは言い返した。それに続きルアンが加勢すると女達はようやく諦めて去って行った。
(はぁ……やっと行ったか……。)
ルアンは、ビキニ姿の女達が遠くに離れたのを確認するとセリスに向き直る。
「ありがとな、セリス。手荒に出来ないし、正直困ってたから助かった」
「だろうと思った」
「それと、折角の新婚旅行だっての悪かったな。不快な思いしただろ?」
「……うーん、少しだけ嫌だった……かも。ちょっと、嫉妬しちゃった」
セリスは少し逡巡の末、少し照れくさそうに小声でボソッと呟いた。
「!」
ルアンは、セリスからの返答に目を見開いた。
それもそのはず。セリスはこれ迄に、妬みなどの負の感情を、一切露わにしてこなかったのだから。
仕事中は、仕方ないと割り切っているのかもしれない。だが、プライベートでも口に出して言わなかった。
故に、自分から聞いたのにも関わらず、まさか素直に返してくるとは思わなかったのだ。
「安心しろ。俺はお前しか見えてねぇから。」
「そ、そっか……。でも、さっきのは忘れて! 恥ずかしいから」
セリスは自分の発言に羞恥し捲し立てた。
「嫌だ。折角お前が素直に本音言ってくれたんだ、忘れてたまるかよ」
「何で!? 忘れてよ! 恥ずかしいから!」
「何でって……、嬉しかったからだよ。だから、死ぬまで、……いや、死んでも忘れねーよ」
ポカポカとセリスに叩かれながらもルアンは、どこか満悦そうだ。そんな様子の彼に、セリスは赤面したまま恨めしそうに睨む。
「もう!」
「ハハッ! そんな目されても全然怖くねぇよ。むしろ、逆だ」
ルアンはそんな彼女を見て愉快そうに笑った。そして、そのままセリスを抱き寄せると、彼女の口に軽く口づけをする。
「!?!? …………ルアンの馬鹿ーー!!」
突然の事にセリスは体を硬直させた。
暫く放心状態になっていたが、ハッと我に返ると、羞恥のあまりプルプルと震えた後、赤い顔のまま叫んだ。
「うぉ! うるせっ!」
急に近くで叫ばれたルアンは耳を塞ぎ顔を顰めている。
「こんな場所でしないでよ! 誰が見てるか分からないのに!!」
「あー、悪い。少し魔が差した。でも、今はプライベートだし、別に知ってる奴は居ねぇんだから、このくらい良いだろ?」
セリスがプンプンと怒ると、ルアンは一度素直に謝った。だが、直ぐに開き直った。
「そういう事じゃない! こんな公衆の面前でしないでって言ってるの!」
「あー、はいはい。分かった、分かったから。そんなデケェ声出すな。またキスするぞ」
「!」
ルアンが、からかうように言うと、セリスはピタリと静かになった。
「とりあえず一旦ホテルに戻ろうぜ。」
「うん。」
一度部屋に戻り休憩することにした二人は、手を繋ぎホテルへと歩いていったのだった。
二人の泊まっている部屋には、淡いベージュの内装でお洒落なキングサイズのベッドが2つと、大きなソファ、透明の円卓がある。それからバルコニーがついている。そのバルコニーからはビーチが見渡せる。
そのバルコニーで、二人は途中で買ったトロピカルジュースを飲みながら海を眺めている。
「ここから見てても綺麗だねぇ〜。」
「そうだな。これから、どうする?夕飯まで、まだ時間あるし何処か行くか?」
「うーん。どうしようかな…。」
セリスは顎に手を置き思案する。
折角なのだから、色々見て回りたい気持ちはある。とはいえ、先程のようにルアンが逆ナンパされるのが嫌なのだろう。
そんな彼女の心情を察したのか、ルアンが提案する。
「だったら、ホテル内の施設にでも行くか?確か植物園があったはずだ。」
「あ、それいいかも!ゆっくり出来るし!」
「んじゃ、決まりだな。」
二人は部屋を出て、階段を降り一階にある植物園に足を運ぶ。
そこには色とりどりな草木が、所狭しと植えられている。そのどれもが珍しく、また南国らしい。
ルアンとセリスは興味深そうに観ている。
「へぇ〜。こんな植物があるんだ!」
「見たことのばかりだな。」
「見てルアン!面白い形の葉っぱ!……なになに?」
セリスが興味を持ったのは、水色で珍妙な形の葉っぱが垂れ下がった樹木だ。
手前の説明書きを読むと、そこにはサウンドリーフの樹と書かれ、葉は風で音が鳴ると書かれていた。
「風で音が鳴るの!?どんな音なんだろう!ルアン、ちょっと魔法で風起してみてよ!」
「ん。いいぜ。」
やや興奮気味のセリスに言われ、ルアンが手に少量の魔力を込め風を起こし、その葉を揺らした。
すると、カラーンカラーンと小気味いい音を奏でた。
二人は、その音色に思わず笑い合う。
「おぉ!本当に鳴った!ふふっ、かわいい音!」
「だな。面白いな。」
それから、また少し歩きながら鑑賞していると、セリスの足が止まった。
セリスは、チェアから降りて、ルアンが向かった方へと足を進めていく。
すると、飲食店に大分近づいた辺りで、何やら数人のビキニ姿の女性が集まっているのが見えた。
(もしかして……)
嫌な予感がし、遠巻きに様子を窺う。セリスの予感は的中したようだ。
その女性達の中心にはルアンが居た。
どうやら逆ナンをされているらしい。キャッキャッと囲まれて迷惑そうなのが傍目にも見て取れる。
(ルアン、困ってるな…。助けに入った方が良いかな?でも、あの中に入るのも…)
セリスが躊躇っている間も、女性達のルアンを誘う。
「少しくらい平気だって!」
「私達と遊ぼうよ!」
「(しつけーな)だから、無理なものは無理だ。他を当たれ。」
女性達の執拗な誘いに、ルアンが辟易していると、女性の一人がルアンの腕に手を絡めた。
「そんな事言わずに…一緒に遊びましょうよ。」
「っ!?離せ!」
ルアンは女性の腕を振りほどこうとする。しかし、その女性はルアンの腕を離さそうとはしない。思わず舌打ちしそうになるのを何とか押し留めた。
(くそっ!こんな所、セリスに見られたら…傷つけちまう!)
ルアンがそう危惧した時、離れて見ていたセリスが駆けてきた。それから女性達とルアンの間に割って入り、あろうことか啖呵を切る。
「やめてください!その手を離して!」
「セリス……」
「は? 何、あんた」
「私は、この人の、つ、妻です!」
セリスは顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「だったら、証拠を見せなさいよ。彼の妻だっていう言う証拠を!」
「そうよ!」
「あるものならね!」
女性達に次々にセリスを責め立てる。
「証拠なら、ここにあります!ほら!」
言い寄られたセリスが示したのは、首からチェーンで吊るしてルアンとの結婚指輪だ。
仕事時は自宅の机に仕舞い、持ち歩かないのだが、今は新婚旅行という事で、特別に持って来ていたのである。
セリスが必死に抗弁している横では、ルアンがしつこい女性達に内心苛立っていた。
「何よ、それ? ただの指輪にしか見えないけど?」
「これは彼との結婚指輪です! 中にちゃんと名前も彫ってあります!」
「そういう事だ。これで解っただろ」
尚も訝しむ女達に、怯むことなく果敢にセリスは言い返した。それに続きルアンが加勢すると女達はようやく諦めて去って行った。
(はぁ……やっと行ったか……。)
ルアンは、ビキニ姿の女達が遠くに離れたのを確認するとセリスに向き直る。
「ありがとな、セリス。手荒に出来ないし、正直困ってたから助かった」
「だろうと思った」
「それと、折角の新婚旅行だっての悪かったな。不快な思いしただろ?」
「……うーん、少しだけ嫌だった……かも。ちょっと、嫉妬しちゃった」
セリスは少し逡巡の末、少し照れくさそうに小声でボソッと呟いた。
「!」
ルアンは、セリスからの返答に目を見開いた。
それもそのはず。セリスはこれ迄に、妬みなどの負の感情を、一切露わにしてこなかったのだから。
仕事中は、仕方ないと割り切っているのかもしれない。だが、プライベートでも口に出して言わなかった。
故に、自分から聞いたのにも関わらず、まさか素直に返してくるとは思わなかったのだ。
「安心しろ。俺はお前しか見えてねぇから。」
「そ、そっか……。でも、さっきのは忘れて! 恥ずかしいから」
セリスは自分の発言に羞恥し捲し立てた。
「嫌だ。折角お前が素直に本音言ってくれたんだ、忘れてたまるかよ」
「何で!? 忘れてよ! 恥ずかしいから!」
「何でって……、嬉しかったからだよ。だから、死ぬまで、……いや、死んでも忘れねーよ」
ポカポカとセリスに叩かれながらもルアンは、どこか満悦そうだ。そんな様子の彼に、セリスは赤面したまま恨めしそうに睨む。
「もう!」
「ハハッ! そんな目されても全然怖くねぇよ。むしろ、逆だ」
ルアンはそんな彼女を見て愉快そうに笑った。そして、そのままセリスを抱き寄せると、彼女の口に軽く口づけをする。
「!?!? …………ルアンの馬鹿ーー!!」
突然の事にセリスは体を硬直させた。
暫く放心状態になっていたが、ハッと我に返ると、羞恥のあまりプルプルと震えた後、赤い顔のまま叫んだ。
「うぉ! うるせっ!」
急に近くで叫ばれたルアンは耳を塞ぎ顔を顰めている。
「こんな場所でしないでよ! 誰が見てるか分からないのに!!」
「あー、悪い。少し魔が差した。でも、今はプライベートだし、別に知ってる奴は居ねぇんだから、このくらい良いだろ?」
セリスがプンプンと怒ると、ルアンは一度素直に謝った。だが、直ぐに開き直った。
「そういう事じゃない! こんな公衆の面前でしないでって言ってるの!」
「あー、はいはい。分かった、分かったから。そんなデケェ声出すな。またキスするぞ」
「!」
ルアンが、からかうように言うと、セリスはピタリと静かになった。
「とりあえず一旦ホテルに戻ろうぜ。」
「うん。」
一度部屋に戻り休憩することにした二人は、手を繋ぎホテルへと歩いていったのだった。
二人の泊まっている部屋には、淡いベージュの内装でお洒落なキングサイズのベッドが2つと、大きなソファ、透明の円卓がある。それからバルコニーがついている。そのバルコニーからはビーチが見渡せる。
そのバルコニーで、二人は途中で買ったトロピカルジュースを飲みながら海を眺めている。
「ここから見てても綺麗だねぇ〜。」
「そうだな。これから、どうする?夕飯まで、まだ時間あるし何処か行くか?」
「うーん。どうしようかな…。」
セリスは顎に手を置き思案する。
折角なのだから、色々見て回りたい気持ちはある。とはいえ、先程のようにルアンが逆ナンパされるのが嫌なのだろう。
そんな彼女の心情を察したのか、ルアンが提案する。
「だったら、ホテル内の施設にでも行くか?確か植物園があったはずだ。」
「あ、それいいかも!ゆっくり出来るし!」
「んじゃ、決まりだな。」
二人は部屋を出て、階段を降り一階にある植物園に足を運ぶ。
そこには色とりどりな草木が、所狭しと植えられている。そのどれもが珍しく、また南国らしい。
ルアンとセリスは興味深そうに観ている。
「へぇ〜。こんな植物があるんだ!」
「見たことのばかりだな。」
「見てルアン!面白い形の葉っぱ!……なになに?」
セリスが興味を持ったのは、水色で珍妙な形の葉っぱが垂れ下がった樹木だ。
手前の説明書きを読むと、そこにはサウンドリーフの樹と書かれ、葉は風で音が鳴ると書かれていた。
「風で音が鳴るの!?どんな音なんだろう!ルアン、ちょっと魔法で風起してみてよ!」
「ん。いいぜ。」
やや興奮気味のセリスに言われ、ルアンが手に少量の魔力を込め風を起こし、その葉を揺らした。
すると、カラーンカラーンと小気味いい音を奏でた。
二人は、その音色に思わず笑い合う。
「おぉ!本当に鳴った!ふふっ、かわいい音!」
「だな。面白いな。」
それから、また少し歩きながら鑑賞していると、セリスの足が止まった。


