【毎日更新】魔法王国の幼馴染み(旧・魔法王国の絆の軌跡)

 ルアンとセリスは、新婚旅行で南国のリゾート施設に来ている。

 二人は先に宿泊するホテルに行き、二人部屋の鍵を受け取った。
 そして案内された部屋に着くと、ルアンは荷物を置き、ホテルの前の浜辺に出て岸を歩き出す。

 ちなみに、新婚旅行とだけあって二人はいつもの宮廷魔法士の正装ではなく私服だ。ルアンは、無地で紫色のシャツに黒いパンツを着用し、セリスはライトグリーンのブラウスに、白いフレアスカートを着て、普段一つに結っている髪は下ろされている。

 
 「うっわー!凄い綺麗な海!」
 「そうだな。」

 セリスは、眼前に広がる幻想的なピンク色の海に目を輝かせ、感嘆の声を上げた。
 それに同意するようにルアンも相槌を打った。

 「連れてきてくれて、ありがとうルアン!」
 「おう、高級なリゾートじゃなくて悪いな」
 「全然!十分すぎるくらいだよ!」
 「それなら良かった」

 二人が来ているリゾート施設は、他より比較的リーズナブルな観光地として有名かつ人気だ。周辺には観光者向けのショッピング店などが多い。
 その為、どちらかと言うとファミリー層や、カップル向けだ。

 それでもセリスは目には愉悦の色を浮かばせ、大変歓喜している。
 そんな妻の様子に、ルアンはグレースに言われたとおり、来て正解だったなと思った。

 と言うのも、この新婚旅行はルアンからの提案だった。

 彼は、自分からは言ってこないがセリスが新婚らしい事をしたいのではないかと想念があった。
 そんな折、グレースが、ルアンにセリスと新婚旅行には行かないのか?と問いかけてきたのだ。

 「いや、一応それも考慮に入れてはいるんだが、セリスがそれを本当に所望しているのか分からなくてな。どうせなら、本当に求めている事をさせてやりたい。」
 「そっか。でも、一生の思い出になるんだから行った方が良いと思うよ!」
 「やっぱり、そんなものか?」
 「そうだよ!女の憧れだよ!セリスだって行きたいと思ってるはず!」

 こんな調子でグレースに押され、ルアンはようやくセリスに新婚旅行を提案する事を決めた。
 そして、その日の夜。
 夕餉を食べながら、ルアンはセリスに「新婚旅行に行かないか?」と誘った所、セリスが肯首し、今に至るわけである。


 ルアンが、一ヶ月前の事を想起してながら海を眺めていると、セリスがルアンの服を軽く引っ張った。

 「どうした?」
 「せっかくだから泳ごうよ!」

 セリスが声を弾ませて言った。

 「や、俺はいい。泳ぐなら、セリスだけで泳いでこい。俺はあそこで待ってるから。」

 しかし、ルアンは彼女の誘いを少し先のパラソルを指差しながら断った。
 それでも尚、セリスは食い下がる。

 「えー!海に来たんだから泳がないと勿体無いよ!」
 「俺はいいっての。」
 「あ、そういえば!ルアン泳げないんだっけ?」

 頑なに拒むルアンに、セリスは思い出したかのように言った。すると、図星なのかルアンはその言葉にピクリと反応した。

 「そ、んな事ねーよ。」

 そう言うルアンの声は動揺で僅かに上擦っている。

 「今、少し動揺したでしょ。」
 「してねー」
 「じゃあ、何で海に入ろうとしないの?」
 「それは…、あれだ。ほら、俺は雷属性だろ?雷属性の体には微弱な電流が流れてるんだ。だから、万一にも、一般人を感電させたら大変だからだ。」

 ルアンは、セリスに追求され苦し紛れの言い訳を言った。
 だが、そんなルアンの言い訳はセリスには通用しなかった。セリスは、さながら嘘を見抜くようなジト目をルアンに向ける。

 「なんだよ」
 「嘘だね。だって、それが本当だったら、こんな場所を選ばないでしょ。それにルアンなら、そのくらい制御できるはず。」
 「ぐっ…」

 痛い所をつかれ、ルアンは言葉をつまらせた。
 いつもなら、言い負かされるのはセリスの方なのだが、今回はルアンが負けたようだ。

 そういえば、昔からセリスにはこういう嘘は通用しないんだったと、ルアンは今更ながらに思い出す。そして、観念したように小さく息を吐くと白状する。

 「そうだよ。泳げないんだよ。」
 「だったら最初からそういえばいいのに。
 まぁ、いいや。じゃ、せめて水遊びでもしようよ!」
 「水遊びって、子供じゃねーんだから…」
 「もー。また、そういう事言う。いいじゃん!今は遊びに来てるんたから!ね、ほらいこう!」
 「おい!引っ張るな!」

 セリスはルアンの手を引いて波打ち際まで駆けて行く。そして、水が届くギリギリの所まで靴を脱ぎ、足首ぐらいの深さの所に入った。

 「ひゃっ!冷たーい!気持ちいい!」
 「気をつけろよ」
 「大丈夫だって!ルアンも早く!」
 「はいはい。」

 セリスから呼ばれ、彼女同様靴を脱ぐと、ズボンの裾をたくし上げて、浅瀬の水に足を踏み入れた。
 すると…。

 「えいっ!」
 「うわっ!」

 セリスが突然ルアンに水を飛ばした。
 不意の出来事に、ルアンは避けれらずに、モロに顔面に水をくらう。彼の顔からは水が滴っている。
 ルアンは顔を水を手で拭くと、反撃とばかりに水を掬いセリスかける。

 「やったな!こいつ!」
 「きゃー!」

 暫く二人でじゃれあっていると、セリスが足を滑らせて転びそうになる。しかし、間一髪ルアンに抱きとめられ事なきを得た。

 「…はぁ。だから言っただろ…。気をつけろって。」
 「ごめん。ありがとう。」
 「まぁ、怪我がないなら良い。疲れたし、そろそろビーチチェアに行こうぜ」
 「うん!」

 ルアンがセリスを立たせ、二人はパラソルの方に向かって歩き出した。

 周りからは「あの二人カップルかな!お似合い!」「本当!美男美女カップルって感じ!」「羨ましい!私もあんな彼氏ほしー!」「あの女の子可愛い!」などと二人を讃美する声が、アチラコチラから聞こえている。

 そんな中、ルアンは毅然たる態度で歩きながらも、心の中では(いや、カップルじゃねーし、夫婦だし。)と突っ込んでいた。

 片やセリスは、恥かしそうに俯き(私達お似合いに見えてるんだ…)と少し頬を赤らめた。

 そんなこんなで、砂浜を歩いていると二人は砂浜に到着した。

 「はぁ〜。疲れたね。」

 セリスは設置されているチェアに寝そべりながら言う。

 このリゾートのビーチチェアには魔法が使われており、疲れや体の負荷を軽減する仕様になっている。


 「はしゃぎ過ぎたな。俺、ちょっと飲み物買って来るから、セリスはここで休んでな。」
 「だったら私も行くよ?」
 「いや、セリスはここで番をしててくれると助かる」
 「ん、そういう事なら分かった。」
 「じゃ、ちょっと行ってくるな。もし変な男が来ても相手するなよ。」

 ルアンは、そう言うとビーチサイドにあるテラスへと向かった。

 それから暫くしても、なかなかルアンが戻らない。不思議に思ったセリスは様子を見に行く事にした。