禍々しい気が辺りを包み、空には暗雲が立ち込める。
そこから夥しい量の、黒い矢が降り注ぎ、他の場所で戦っている仲間達を傷つけていく。あちらこちらからの阿鼻叫喚がセリスの耳に届く。
セリスは急いで、黄金色の幕を辺り一面に張った。すると、闇の矢は幕に当たり消滅する。
続けて、セリスは聖光剣《セイレントソード》を再び出すと、バルファスに向かって斬りかかる。負けじと、バルファスも闇の剣で対抗する。
二人は鍔迫り合いをしながら言い争う。
「何でそんなに聖天魔法を消そうとするの!?」
「復讐するためだ。私達、闇の眷属を忌避し国から追放した貴様の一族へのな」
「それには何かしら理由があったはずよ!」
「黙れ!お前に何が解る!無理矢理国を追い出された私達の何が解る!」
「確かに私は何も知らない。一族の事も、貴方の事も!だからって私が関係ないとは言わないし、思わない。
でも、他の皆は違う、関係ないでしょ!」
「黙れと言っている!」
「復讐だと言うなら、私だけを狙えばいいじゃない!無関係の人達を巻き込まないで!」
バルファスの言っている事は信憑性に欠けるが、セリスの心が全く傷まないわけではなかった。
しかし、それ以上に無関係な彼らを巻き込んだ事に黙ってはいられなかった。
何より、大切な恋人を目の前で傷つけられ事の怒りの感情が勝ったのだ。
「無関係だと?笑わせるな!少なくとも、この国の王族は、この事を知っている!それだけで同罪だ。関係者は全員葬る」
「たったそれだけの理由で、無関係の者を殺そうとするなんて、ふざけないで!!ルアンや皆を傷付けた事絶対に許さない!」
「それは、こちらも同じだ!どれだけ仲間を失ったと思っている!」
セリスは、バルファスの身勝手な理由に、怒り心頭に達し柳眉を吊り上げて怒気を発した。
バルファスもまた許せないのは同じだった。彼はセリスの剣を押し返すと、二人は互いに、一度後ろ下がり距離を取る。
そして、またどちらともなく同時に斬りかかる。
セリスが素早く背後に回ると、バルファスは振り向きざまに一閃する。それをセリスは瞬時に飛び躱す。
苛烈な剣撃を繰り返したのち、セリスは聖光剣を消滅させた。
「どうした、ついに諦めたのか?ならば、死ね。」
「勘違いしないで。諦めたわけじゃない。それに私は死なないし皆も死なせない!」
彼女の行動を見たバルファスは、勝ち誇った顔で言うと、エネルギーを集める。
その間にセリスも、掌に聖天魔法のエネルギーを集結させていく。そして、その手をバルファスに向けた。
彼女の光の波動と、バルファスが闇の波動が放たれたのは、同時だった。
激しい光と闇のエネルギーの奔流が衝突する。
互いに引く気配はなく、暫くの間二人の魔法が鬩合いが続く。
そんな二人の戦いを、ルアンはセリスの聖なる結界の中から苦痛に耐えながら片目を開けて見ている。
(クソ…。俺は肝心な時に動けないなんて。何の為に強くなったんだ。)
遠目に映る二人の激闘を、ただ見るしか出来ない己に、ルアンは情けなさを感じていた。
その時だった。
セリスの光の力が、バルファスの闇の力を凌駕し押しきった。
もろに聖天魔法を受けたバルファスは、断末魔を上げて倒れ伏す。
「ぐっ、がぁぁぁ!まさか、私の魔法が押し負けるとは…!」
すると、立ち込めていた禍々しさと、暗雲が消えた。
「ハァ…ハァ…、何とか勝てた……」
セリスは、満身創痍で力が抜け座り込みそうになるのを耐え、ルアンの元に走る。
手足の傷はシールドのおかけで治っているようだ。しかし、顔色は先程よりも酷くなっている。
彼女は急いでルアンに両手を翳し、聖天魔法で治癒を施す。
「ちょっと待って今すぐ治癒するから!」
「うっ……くっ……!」
だがしかし、効果は薄いようだ。ルアンは冷や汗をかき、苦しそうに呻いている。
それでも、セリスは必死にルアンに声をかけながら、治癒を続ける。
「(負の力が強い、これじゃだめだ…。もっと強くしないと!)ルアン!死なないで!絶対に治すから!頑張って!」
「ハァ…ハァ…」
「(もっと…!もっとだ!絶対に死なせない!)」
額に大粒の脂汗を流しながら、セリスは黄金色に光る手を翳し続けるも、一向に良くならない。むしろ、逆に成長している気すらしてくる。セリスに焦りの色が見え始めた。
(だめだ…私の魔力が足りない…!)
その時だった。
「ぐっ!うぐっ!?」
「!?何、どうしたの!?」
ルアンが突然、一際激しい苦痛の声をあげた。それに驚きながらも、セリスは彼の腹部を見ると、ボコボコと彼の腹部が蠢いているのが分かった。
どうやら、彼女の聖なる結界の中で一時的に止まっていた種の成長が、結界を解いた事で一気に進み出したようだ。更には闇のエネルギーの侵食も加速した。
その種はルアンの魔力をぐんぐんと吸収し、みるみると膨張していく。
「うがぁあ……あぐぁぁ……ああぁぁ!」
魔力を強引に吸われる苦しみと、体内を侵す闇のエネルギーに、ルアンは悲鳴をあげ悶え苦しむ。
「負けないでルアン!私、まだルアンとしたい事も話したい事もいっぱいあるんだから!」
「はっ…はっ…」
そんな彼を目の当たりにし、セリスは涙目になりながら叫ぶ。
ルアンの意識はまだあるが、既に虫の息で、いつ止まってもおかしくはない状態だ。
(もうこんなに大きくなってる!この種をどうにかしないと!でも、どうしたら…。このままじゃルアンが!……そうだ!)
セリスが考えあぐねいている内にも、種は大玉スイカほどにまで肥大化し、ルアンの鍛えられた腹筋は大きく膨れ上がる。そして、彼の腹部を圧迫する。
耐えきれなくなった彼の|服のボタンは弾け飛び、黒く変色した腹部が露わになった。
そんなルアンに焦りながら必死に考えるセリス。そんな時、ある方法が閃いた。
それは、翳すのではなく膨らんでいる所に直接、聖天魔法のエネルギーを流し込む方法だ。
彼女は、大きく深呼吸すると一旦目を閉じ、少しして開いた。そして、手を腹部に当てて、セリスは渾身の力を込め、ありったけの聖天魔法に使うエネルギーを、ルアンの腹で形取っている種に向かって送り込む。すると、優しく清いエネルギーが、ルアンの中へ流れていく。
(大丈夫。私とルアンの魔力の相性は良いみたいだし。あの精霊さんも言ってたし。上手くいくはず)
自分にそう言い聞かせながら、掌に魔法の力を集める。それをルアンの腹部へと、どんどんと送り続ける。
(ルアンは、いつも命賭けで私を守ってくれてる。なら、私だってそのくらいの気持ちでやるんだから!)
セリスの強い覚悟に、反応するかのように彼女の中心に眩いばかりの光が溢れ、神々しく光る青白い光が幾つも舞った。
あまりの眩しさに、ルアンも薄目を開ける。そこには薄いベージュの髪は白銀色に変わり、瞳の色は桃花色から琥珀色に変わったセリスがいた。
そこから夥しい量の、黒い矢が降り注ぎ、他の場所で戦っている仲間達を傷つけていく。あちらこちらからの阿鼻叫喚がセリスの耳に届く。
セリスは急いで、黄金色の幕を辺り一面に張った。すると、闇の矢は幕に当たり消滅する。
続けて、セリスは聖光剣《セイレントソード》を再び出すと、バルファスに向かって斬りかかる。負けじと、バルファスも闇の剣で対抗する。
二人は鍔迫り合いをしながら言い争う。
「何でそんなに聖天魔法を消そうとするの!?」
「復讐するためだ。私達、闇の眷属を忌避し国から追放した貴様の一族へのな」
「それには何かしら理由があったはずよ!」
「黙れ!お前に何が解る!無理矢理国を追い出された私達の何が解る!」
「確かに私は何も知らない。一族の事も、貴方の事も!だからって私が関係ないとは言わないし、思わない。
でも、他の皆は違う、関係ないでしょ!」
「黙れと言っている!」
「復讐だと言うなら、私だけを狙えばいいじゃない!無関係の人達を巻き込まないで!」
バルファスの言っている事は信憑性に欠けるが、セリスの心が全く傷まないわけではなかった。
しかし、それ以上に無関係な彼らを巻き込んだ事に黙ってはいられなかった。
何より、大切な恋人を目の前で傷つけられ事の怒りの感情が勝ったのだ。
「無関係だと?笑わせるな!少なくとも、この国の王族は、この事を知っている!それだけで同罪だ。関係者は全員葬る」
「たったそれだけの理由で、無関係の者を殺そうとするなんて、ふざけないで!!ルアンや皆を傷付けた事絶対に許さない!」
「それは、こちらも同じだ!どれだけ仲間を失ったと思っている!」
セリスは、バルファスの身勝手な理由に、怒り心頭に達し柳眉を吊り上げて怒気を発した。
バルファスもまた許せないのは同じだった。彼はセリスの剣を押し返すと、二人は互いに、一度後ろ下がり距離を取る。
そして、またどちらともなく同時に斬りかかる。
セリスが素早く背後に回ると、バルファスは振り向きざまに一閃する。それをセリスは瞬時に飛び躱す。
苛烈な剣撃を繰り返したのち、セリスは聖光剣を消滅させた。
「どうした、ついに諦めたのか?ならば、死ね。」
「勘違いしないで。諦めたわけじゃない。それに私は死なないし皆も死なせない!」
彼女の行動を見たバルファスは、勝ち誇った顔で言うと、エネルギーを集める。
その間にセリスも、掌に聖天魔法のエネルギーを集結させていく。そして、その手をバルファスに向けた。
彼女の光の波動と、バルファスが闇の波動が放たれたのは、同時だった。
激しい光と闇のエネルギーの奔流が衝突する。
互いに引く気配はなく、暫くの間二人の魔法が鬩合いが続く。
そんな二人の戦いを、ルアンはセリスの聖なる結界の中から苦痛に耐えながら片目を開けて見ている。
(クソ…。俺は肝心な時に動けないなんて。何の為に強くなったんだ。)
遠目に映る二人の激闘を、ただ見るしか出来ない己に、ルアンは情けなさを感じていた。
その時だった。
セリスの光の力が、バルファスの闇の力を凌駕し押しきった。
もろに聖天魔法を受けたバルファスは、断末魔を上げて倒れ伏す。
「ぐっ、がぁぁぁ!まさか、私の魔法が押し負けるとは…!」
すると、立ち込めていた禍々しさと、暗雲が消えた。
「ハァ…ハァ…、何とか勝てた……」
セリスは、満身創痍で力が抜け座り込みそうになるのを耐え、ルアンの元に走る。
手足の傷はシールドのおかけで治っているようだ。しかし、顔色は先程よりも酷くなっている。
彼女は急いでルアンに両手を翳し、聖天魔法で治癒を施す。
「ちょっと待って今すぐ治癒するから!」
「うっ……くっ……!」
だがしかし、効果は薄いようだ。ルアンは冷や汗をかき、苦しそうに呻いている。
それでも、セリスは必死にルアンに声をかけながら、治癒を続ける。
「(負の力が強い、これじゃだめだ…。もっと強くしないと!)ルアン!死なないで!絶対に治すから!頑張って!」
「ハァ…ハァ…」
「(もっと…!もっとだ!絶対に死なせない!)」
額に大粒の脂汗を流しながら、セリスは黄金色に光る手を翳し続けるも、一向に良くならない。むしろ、逆に成長している気すらしてくる。セリスに焦りの色が見え始めた。
(だめだ…私の魔力が足りない…!)
その時だった。
「ぐっ!うぐっ!?」
「!?何、どうしたの!?」
ルアンが突然、一際激しい苦痛の声をあげた。それに驚きながらも、セリスは彼の腹部を見ると、ボコボコと彼の腹部が蠢いているのが分かった。
どうやら、彼女の聖なる結界の中で一時的に止まっていた種の成長が、結界を解いた事で一気に進み出したようだ。更には闇のエネルギーの侵食も加速した。
その種はルアンの魔力をぐんぐんと吸収し、みるみると膨張していく。
「うがぁあ……あぐぁぁ……ああぁぁ!」
魔力を強引に吸われる苦しみと、体内を侵す闇のエネルギーに、ルアンは悲鳴をあげ悶え苦しむ。
「負けないでルアン!私、まだルアンとしたい事も話したい事もいっぱいあるんだから!」
「はっ…はっ…」
そんな彼を目の当たりにし、セリスは涙目になりながら叫ぶ。
ルアンの意識はまだあるが、既に虫の息で、いつ止まってもおかしくはない状態だ。
(もうこんなに大きくなってる!この種をどうにかしないと!でも、どうしたら…。このままじゃルアンが!……そうだ!)
セリスが考えあぐねいている内にも、種は大玉スイカほどにまで肥大化し、ルアンの鍛えられた腹筋は大きく膨れ上がる。そして、彼の腹部を圧迫する。
耐えきれなくなった彼の|服のボタンは弾け飛び、黒く変色した腹部が露わになった。
そんなルアンに焦りながら必死に考えるセリス。そんな時、ある方法が閃いた。
それは、翳すのではなく膨らんでいる所に直接、聖天魔法のエネルギーを流し込む方法だ。
彼女は、大きく深呼吸すると一旦目を閉じ、少しして開いた。そして、手を腹部に当てて、セリスは渾身の力を込め、ありったけの聖天魔法に使うエネルギーを、ルアンの腹で形取っている種に向かって送り込む。すると、優しく清いエネルギーが、ルアンの中へ流れていく。
(大丈夫。私とルアンの魔力の相性は良いみたいだし。あの精霊さんも言ってたし。上手くいくはず)
自分にそう言い聞かせながら、掌に魔法の力を集める。それをルアンの腹部へと、どんどんと送り続ける。
(ルアンは、いつも命賭けで私を守ってくれてる。なら、私だってそのくらいの気持ちでやるんだから!)
セリスの強い覚悟に、反応するかのように彼女の中心に眩いばかりの光が溢れ、神々しく光る青白い光が幾つも舞った。
あまりの眩しさに、ルアンも薄目を開ける。そこには薄いベージュの髪は白銀色に変わり、瞳の色は桃花色から琥珀色に変わったセリスがいた。


