セリスとルアンが走ること十数分。
「ハァ……ハァ…」
「ここか」
二人が辿り着いた場所は、城の裏の岩垣の茂みだった。
そこには、漆黒の外套を被った一人の男が佇んでいた。
その男が、振り返りフードを取ると、黄土色の髪と赤い金壺眼が露わになった。
「来たな。聖天魔法の使い手、セリス・ミライル」
「あなたは、一体。なぜ、私と聖天魔法の事を知ってるの」
「お前を襲った男に聞かなかったのか?」
「聞いてないわ」
「なら、教えてやろう。私の名はバルファス。アルセウス一族を滅ぼした帝国の物だ。そして、お前と戦ったのは、セリス・ミライル、貴様の父親だ。貴様の父親は国を裏切ったのだ。」
セリスは、予想だにしなかった言葉に動揺し、目が揺らいでいる。
まさか父親が生きていたなんて。それも国を裏切っていた?でも…、どうして、何で?と、セリスの頭は混乱し思考がまとまらない。
動揺しているセリスに代わって、鋭い双眸を向けて尖り声で言う。
「テメェ、変な嘘をつくな!」
「嘘ではない。子供は居ないと聞いていたがな。」
バルファスはセリスに鋭い目を向ける。
それは、まるで仇を見るような恨みの籠も
った目つきだ。
そして、その眼光のまま、一歩一歩とセリスに歩み寄る。
ルアンは、セリスを守るように彼女の前に立つと、バルファスを睨みつける。
「それ以上近づくな」
「そこを退け。我々の目的は、聖天魔法魔法の継承者である、その女の抹殺し聖天魔法をこの世から消し去る事だ。貴様には用はない。」
「断る」
「そうか。ならば先に貴様から始末してやる」
バルファスはそう言うと、掌を頭上に向けると、禍々しい気を纏った黒い球体を出現させて、ルアンに向けて放った。
ルアンは球体を風魔法で弾き飛ばすと、自分の後ろで茫然自失としているセリスに、活を入れるように叫ぶ。
「しっかりしろ!セリス!」
「………」
「お前の父親の事は、俺には解らないが。奴はお前にしか倒せねぇんだろう!その為に来たんだろ!お前がやらないでどうする!」
「ルアン……」
「それに、お前が死んだら一体誰が一族の無念を晴らすんだ!親父さんだって何か事情があったはずだ!」
「そうだね。これは私の使命だ。ありがとうルアン」
ルアンの言葉に、ようやくセリスは我に返る。彼女の目には再び決意のこもった力強さが戻った。
セリスは立ち上がると、ルアンに笑ってみせた。
ルアンは元に戻ったセリスを見て、内心ホッとするのと、同時に一緒に来て良かったと心底思った。
きっと、彼女一人だったら、あのまま殺られていた事だろう。想像しただけで、彼は背筋が凍りそうになる。
(俺がいる限りは、そんな事には絶対にさせねぇ…。)
「フン。立ち直ったか…」
「えぇ、彼のおかげでね。バルファス、貴方は私が倒す!覚悟しなさい!」
セリスは、ルアンの隣りに並ぶとバルファスを射抜くように見ながら、力強くそう宣言した。そして魔力を高め聖天魔法を発動させる。
「いくよ!ルアン!」
「あぁ!」
セリスの掛け声に彼は返事をすると気を引き締め直し、彼女と共にバルファスに攻撃を開始する。
ここから、本格的な戦いが始まった。
「くらえ!」
「ハァァァ!」
ルアンの風魔法で風の刃を放ち、セリスが間髪いれずに神聖なる矢を射出した。
神聖なる矢は、一般的な光魔法の矢とは異なり、黄金色に輝く。そして直撃するとダメージを与えるだけでなく、邪悪な物を浄化する作用を持つ。が、当たればの話である。
バルファスはそれを躱すと、掌を二人に向ける。そこから闇の弾丸を複数作りだし連発する。
二人はそれぞれ躱しながら、別々の場所に着地する。
それを見てバルファスはニヤリと笑うと、ルアンの方に狙いを定め、今度は無数の闇の矢を放つ。
「まずは、お前からだ!」
「ちっ」
ルアンはそれを躱しながら、バルファスから距離を取る。
入れ替わるように、セリスが神々しく輝く聖光剣でバルファスに斬りかかるが、あっさりと躱され蹴り飛ばされ後方の木に激突する。
「うぁ!」
「セリス!大丈夫か!」
「~~~~っう。ハァ…大丈夫」
ルアンが焦ったように、セリス声をかける。セリスは返事をしながら流血してズキズキと痛む頭を無視してフラフラと立ち上がる。
ルアンは、その間に天雷球連弾、雷撃波雷を纏った竜巻で猛攻撃をする。
遅れてセリスも黄金色の光の矢を複数出現させ、バルファスに一斉に放つ。
だがしかし、バルファスには傷一つつかない。
「ハァ…ハァ…くそっ」
「次はこちらから行くぞ」
バルファスはそう言うと、ルアンの影を操り、鋭利な刃物にしルアンの体中に穿った。
「がぁっ!!」
「その足では、もう逃げられないだろう」
影が引き抜かれると同時に、ルアンの手足、肩、腹などから鮮血が吹き出て、彼は膝をつく。
しかし痛みに耐えながら、再びヨロヨロと立ち上がる。
「ハァ…ハァ…くっ!これなら、どうだ!」
そして、今度は体の前で手を構え、雷撃波上位版である大雷撃波を撃つ。
放たれた大雷撃波は、高速で一直線にバルファスに向かい、標的に当たると爆発した。
激しい轟音と共に、黒煙が立ち込める。残煙の中見えたのは、無傷のバルファスだった。
どうやら、バルファスは目には見えない闇のエネルギーを纏い、防御しているようだ。
(クソ!今のが直撃して無傷だと!?なんでだ!おかしいだろ!俺の魔法じゃダメージすら与えられないのか!?)
ルアンは、息を乱しながらバルファスの圧倒的な力の差に絶句すると同時に憤った。
そして、大技の連発で体力と魔力の限界を感じ始めている。
ルアンは、膝に手をつき息を整える。
そんなルアンとは対称的にバルファスは不敵な笑みを浮べている。
ルアンが息を整えている間に、彼の中腹に直径十八ミリ程の種のような物が撃ち込まれた。彼は何が起こったのか分からぬまま、血を吐き腹部を両手で押えながらガクッと膝をつく。
「ぐっ……ゴホッ」
「ルアン!大丈夫!?」
中腹を押え跪くルアンの元にセリスが駆け寄った。そして、ルアンを支えながら、敵を睨みつける。
「ルアンに何したの!」
「それは魔力を吸い込み次第に腹の中で成長し、闇のエネルギーで体内を侵す。その種を取り出さない限り、その男は死ぬ。」
「…ク…ソ、力が……抜ける……」
種がルアンの魔力を吸い取りだし、彼はとうとう崩れるように前のめりに倒れかける。それを寸前の所でセリスが止め、ルアンを仰向けに寝かせた。
玉のように脂汗を流し、顔色も悪く、呼吸も荒い。相当な苦痛な事が見て取れる。
「ルアン!」
「だ、じょうぶ…だ…」
苦しむルアンを見て、戦いの最中だと言うのに、セリスは胸が痛み思わず涙ぐんでしまう。そんな彼女を安心させようとルアンは笑ってみせる。
しかし、その笑顔は弱々しい。
「今直ぐに治すから!」
「俺は……後で、いい。」
「でも!」
「しん…ぱい、す…な…。このくらい…耐えてみ、せる…」
「……。分かった…。直ぐ終わらせるから、そのシールドの中で待ってて。」
「お……う…」
聖天魔法で、回復せようとするセリスの手を掴み、ルアンはそれを制した。
苦痛に耐えながら、声を絞り出すように言うルアンに、セリスは後ろ髪を引かれながらも、一先ず貫かれた傷だけを治し、淡く輝く聖なる結界を、バルファスに真正面から向き合う。
「よくもルアンを!」
「弱い邪魔者から殺るのは当然だろう」
バルファスはニヤリと笑うと、今までにないくらいの闇の魔力を解き放った。
「ハァ……ハァ…」
「ここか」
二人が辿り着いた場所は、城の裏の岩垣の茂みだった。
そこには、漆黒の外套を被った一人の男が佇んでいた。
その男が、振り返りフードを取ると、黄土色の髪と赤い金壺眼が露わになった。
「来たな。聖天魔法の使い手、セリス・ミライル」
「あなたは、一体。なぜ、私と聖天魔法の事を知ってるの」
「お前を襲った男に聞かなかったのか?」
「聞いてないわ」
「なら、教えてやろう。私の名はバルファス。アルセウス一族を滅ぼした帝国の物だ。そして、お前と戦ったのは、セリス・ミライル、貴様の父親だ。貴様の父親は国を裏切ったのだ。」
セリスは、予想だにしなかった言葉に動揺し、目が揺らいでいる。
まさか父親が生きていたなんて。それも国を裏切っていた?でも…、どうして、何で?と、セリスの頭は混乱し思考がまとまらない。
動揺しているセリスに代わって、鋭い双眸を向けて尖り声で言う。
「テメェ、変な嘘をつくな!」
「嘘ではない。子供は居ないと聞いていたがな。」
バルファスはセリスに鋭い目を向ける。
それは、まるで仇を見るような恨みの籠も
った目つきだ。
そして、その眼光のまま、一歩一歩とセリスに歩み寄る。
ルアンは、セリスを守るように彼女の前に立つと、バルファスを睨みつける。
「それ以上近づくな」
「そこを退け。我々の目的は、聖天魔法魔法の継承者である、その女の抹殺し聖天魔法をこの世から消し去る事だ。貴様には用はない。」
「断る」
「そうか。ならば先に貴様から始末してやる」
バルファスはそう言うと、掌を頭上に向けると、禍々しい気を纏った黒い球体を出現させて、ルアンに向けて放った。
ルアンは球体を風魔法で弾き飛ばすと、自分の後ろで茫然自失としているセリスに、活を入れるように叫ぶ。
「しっかりしろ!セリス!」
「………」
「お前の父親の事は、俺には解らないが。奴はお前にしか倒せねぇんだろう!その為に来たんだろ!お前がやらないでどうする!」
「ルアン……」
「それに、お前が死んだら一体誰が一族の無念を晴らすんだ!親父さんだって何か事情があったはずだ!」
「そうだね。これは私の使命だ。ありがとうルアン」
ルアンの言葉に、ようやくセリスは我に返る。彼女の目には再び決意のこもった力強さが戻った。
セリスは立ち上がると、ルアンに笑ってみせた。
ルアンは元に戻ったセリスを見て、内心ホッとするのと、同時に一緒に来て良かったと心底思った。
きっと、彼女一人だったら、あのまま殺られていた事だろう。想像しただけで、彼は背筋が凍りそうになる。
(俺がいる限りは、そんな事には絶対にさせねぇ…。)
「フン。立ち直ったか…」
「えぇ、彼のおかげでね。バルファス、貴方は私が倒す!覚悟しなさい!」
セリスは、ルアンの隣りに並ぶとバルファスを射抜くように見ながら、力強くそう宣言した。そして魔力を高め聖天魔法を発動させる。
「いくよ!ルアン!」
「あぁ!」
セリスの掛け声に彼は返事をすると気を引き締め直し、彼女と共にバルファスに攻撃を開始する。
ここから、本格的な戦いが始まった。
「くらえ!」
「ハァァァ!」
ルアンの風魔法で風の刃を放ち、セリスが間髪いれずに神聖なる矢を射出した。
神聖なる矢は、一般的な光魔法の矢とは異なり、黄金色に輝く。そして直撃するとダメージを与えるだけでなく、邪悪な物を浄化する作用を持つ。が、当たればの話である。
バルファスはそれを躱すと、掌を二人に向ける。そこから闇の弾丸を複数作りだし連発する。
二人はそれぞれ躱しながら、別々の場所に着地する。
それを見てバルファスはニヤリと笑うと、ルアンの方に狙いを定め、今度は無数の闇の矢を放つ。
「まずは、お前からだ!」
「ちっ」
ルアンはそれを躱しながら、バルファスから距離を取る。
入れ替わるように、セリスが神々しく輝く聖光剣でバルファスに斬りかかるが、あっさりと躱され蹴り飛ばされ後方の木に激突する。
「うぁ!」
「セリス!大丈夫か!」
「~~~~っう。ハァ…大丈夫」
ルアンが焦ったように、セリス声をかける。セリスは返事をしながら流血してズキズキと痛む頭を無視してフラフラと立ち上がる。
ルアンは、その間に天雷球連弾、雷撃波雷を纏った竜巻で猛攻撃をする。
遅れてセリスも黄金色の光の矢を複数出現させ、バルファスに一斉に放つ。
だがしかし、バルファスには傷一つつかない。
「ハァ…ハァ…くそっ」
「次はこちらから行くぞ」
バルファスはそう言うと、ルアンの影を操り、鋭利な刃物にしルアンの体中に穿った。
「がぁっ!!」
「その足では、もう逃げられないだろう」
影が引き抜かれると同時に、ルアンの手足、肩、腹などから鮮血が吹き出て、彼は膝をつく。
しかし痛みに耐えながら、再びヨロヨロと立ち上がる。
「ハァ…ハァ…くっ!これなら、どうだ!」
そして、今度は体の前で手を構え、雷撃波上位版である大雷撃波を撃つ。
放たれた大雷撃波は、高速で一直線にバルファスに向かい、標的に当たると爆発した。
激しい轟音と共に、黒煙が立ち込める。残煙の中見えたのは、無傷のバルファスだった。
どうやら、バルファスは目には見えない闇のエネルギーを纏い、防御しているようだ。
(クソ!今のが直撃して無傷だと!?なんでだ!おかしいだろ!俺の魔法じゃダメージすら与えられないのか!?)
ルアンは、息を乱しながらバルファスの圧倒的な力の差に絶句すると同時に憤った。
そして、大技の連発で体力と魔力の限界を感じ始めている。
ルアンは、膝に手をつき息を整える。
そんなルアンとは対称的にバルファスは不敵な笑みを浮べている。
ルアンが息を整えている間に、彼の中腹に直径十八ミリ程の種のような物が撃ち込まれた。彼は何が起こったのか分からぬまま、血を吐き腹部を両手で押えながらガクッと膝をつく。
「ぐっ……ゴホッ」
「ルアン!大丈夫!?」
中腹を押え跪くルアンの元にセリスが駆け寄った。そして、ルアンを支えながら、敵を睨みつける。
「ルアンに何したの!」
「それは魔力を吸い込み次第に腹の中で成長し、闇のエネルギーで体内を侵す。その種を取り出さない限り、その男は死ぬ。」
「…ク…ソ、力が……抜ける……」
種がルアンの魔力を吸い取りだし、彼はとうとう崩れるように前のめりに倒れかける。それを寸前の所でセリスが止め、ルアンを仰向けに寝かせた。
玉のように脂汗を流し、顔色も悪く、呼吸も荒い。相当な苦痛な事が見て取れる。
「ルアン!」
「だ、じょうぶ…だ…」
苦しむルアンを見て、戦いの最中だと言うのに、セリスは胸が痛み思わず涙ぐんでしまう。そんな彼女を安心させようとルアンは笑ってみせる。
しかし、その笑顔は弱々しい。
「今直ぐに治すから!」
「俺は……後で、いい。」
「でも!」
「しん…ぱい、す…な…。このくらい…耐えてみ、せる…」
「……。分かった…。直ぐ終わらせるから、そのシールドの中で待ってて。」
「お……う…」
聖天魔法で、回復せようとするセリスの手を掴み、ルアンはそれを制した。
苦痛に耐えながら、声を絞り出すように言うルアンに、セリスは後ろ髪を引かれながらも、一先ず貫かれた傷だけを治し、淡く輝く聖なる結界を、バルファスに真正面から向き合う。
「よくもルアンを!」
「弱い邪魔者から殺るのは当然だろう」
バルファスはニヤリと笑うと、今までにないくらいの闇の魔力を解き放った。


