【毎日更新】魔法王国の幼馴染み(旧・魔法王国の絆の軌跡)

 エルヴェリア城の食堂は広く、木製の机と椅子がたくさん並べられている。
  天井も高く開放感がある作りだ。

 今は昼食時なこともあり、ガレンとグレースを含む他の魔法士や騎士達もいて賑わっている。

 「おーい!ルアン、セリス!こっちだ!」

 ガレンが食堂に入ってきたセリスとルアンに気が付き二人を呼んだ。

 喧騒の中でも、ガレンの声が二人に届き、二人は呼ばれた方向へと顔を向ける。
 目立つ赤髪を見つけたルアンは、取り敢えず手を上げて返すと、昼食を買い、ガレンと同じテーブルの席に着いた。
 そこにはグレースもいたようだ。ガレンの正面で食べ物を咀嚼していた。

 ガレンの横にルアン。グレースの横にセリスが座り食事をする。

 四人はそれぞれ食事を済ませた後、食後のお茶を飲んでいると、ガレンが突然、ルアンに話を振った。

 「で?実際の所どうなんだよ」
 「何がだ。」
 「何がって、ルアンとセリス二人の事だよ。」
 「?」

 突然問いかけられたルアンは、ガレンの真意が分からず、訝しげな表情で彼を見やる。まるで何が言いたいんだこいつはとでも言うよう目つきだ。

 「だーかーら!あれから進展はあったのかって聞いてんだよ。恋人同士になってからキスとかハグとか何かあるだろ。」
 「……ない」
 「嘘つけ。本当はあるんだろ?」
 「うるせぇな、ないものはないんだよ」

 ルアンの頭の中に浮かんだのは、先日の神域でしたキスの事だ。 
 あれを数(カウント)に入れて良いものかと逡巡し、結果無かったことにした。

 セリスの事を考えてもだが、自分としても、あれを初めてにしたくはなかったのだ。

 「んじゃあ、その先の事を考えてるのか?結婚とか」
 「ゲホッ、っお前!急に何を言い出す!」
 「け、けけけけ、結婚!?」

 結婚と言う言葉に動揺し、盛大に飲んでいたお茶を吹き出したルアン。
 セリスも彼の横で顔を真っ赤にし狼狽えている。

 「いや、だってさ。もう神聖樹には認められたんだろう?だったら、後はもうお前ら二人の気持ち次第だろ。」
 「なんでそうなるんだ!神聖樹は関係ないだろ!」

 ルアンは顔を赤くしたまま怒鳴った。
 しかし、ガレンはお構いなしに、ニヤニヤしながら、再度ガレンがルアンに訪ねる。

 「で?どうなんだよ?」
 「……」

 正直、色々ありすぎて結婚を意識する余裕はなかった。
 だが言われてみれば、そろそろそこに進んでも良いと、ルアンは思う。
 と、言うかしたいという願望もあったりする。
 のだが、それをガレンにいうのも、どうも腹に据えかねている。

 「ちょっと、ガレン!いい加減に…」

 グレースが流石にマズイかと止めに入った。

 「だからっ!何でお前に言わなきゃならないんだ!誰が教えるか!」
 「そんな怒鳴るなよ。みんな見てるぜ?」

 しかし、時既に遅く、ルアンが憤怒して怒声を上げた。
 ガレンに言われて、ルアンが周囲を見渡すと確かに視線を集めていた。それもそうだ、いつもは冷静なルアンが怒鳴ったのだから、何事だと思うだろう。

 「ーーーっ!俺はもう行く!」

 視線に居たたまれなくなり、お茶を一気に飲み干すと、ルアンは食堂から荒々しく出ていった。

 その後を慌ててセリスが追っていった。

 「あー、流石にからかいすぎたか。」
 「もー、何やってんの。バカ!」

 ルアンとセリスが居なくなった後、ガレンがバツが悪そうな顔をしながら言うと、グレースが呆れ顔で叱った。


(結婚、か……。セリスはどう思っているんだろうか。したいと思っているのか?待たせたりしているのか?)
「ルアン!待って!」

 先程ガレンに言われた事を思い出し、思案顔で悶々としながら歩いていると、セリスが追いついた。

 「セリス……どうした?」
 「あ、いや、えっと……」
 「……さっきの話の事か?…」

 言いづらそうに口淀むセリスに代わって、ルアンが口火を切った。

 (ガレンの言ってた、結婚の事、だよね?)

 「俺は、したくないわけではない。むしろ……」

 ルアンが意を決して話そうとした時、城内にけたたましい音が鳴り響いた。
 城内も一気にザワザワと騒然としだす。
 エルヴェリア城の防御は更に強固な物で、本来なら容易には突破出来ないはずなのだ。
 だがしかし、それを破って侵入したとすれば、相当な強者だろう事が想像がつく。
 二人の表情に緊張の色が浮かぶ。

 「(た、助かったかも。今言われても気持ちが追いつかない)この警報音って」
 「(今言うタイミングでもないか…)あぁ、侵入者か…」
 「でも、この城の警備は、相当なはずでしょ。そう簡単には破れないのに、どうやって。」
 「さぁな、とにかく俺たちも急ぐぞ!」

 二人は、警報音がする城内の青い廊下を駆け出した。その途中、一人の兵士が向かいから走ってきて二人の前で止まる。

 「ルアン様、セリス様!」
 「何があったの!?」
 「敵襲です!城内に何者かが入り込んだ模様!」
 「敵の狙いは?」
 「…セリス様のようです」
 「セリスを?」
 (私?)

 セリスは自分の名前が出た事に、顔を強張らせる。
 国王から自分を狙う輩が増えると言うことは聞いたが、まさか城にまで攻めてくるとは思わなかったのだ。

 それはルアンも同じだったようで、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 「チッ、わざわざ城にまで来るやつがいるとは…。分かった。戻っていい。」

 「はっ!……ぐは!」

 兵士は一礼すると戻ろうとする。
 だがしかし、何者かに攻撃され二人の前で倒れた。
 ルアンは兵士を一先ず壁際に移すと、周りを見渡す。その傍らでは、セリスが兵士に聖天魔法で治癒を施そうとしている。

 「…待て。誰か来る」

 すると、ルアンが目をスッと鋭くさせた。どうやら灰色(グレー)の外套(がいとう)を被った見慣れない服装の人物が歩いて近づいてくるのが遠目に見えた。

 その人物にルアンは、剣呑な目を向け警戒する。
 胡乱(うろん)な男が近くまで来ると、ルアンは、再び鋭い双眸で侵入者に問い詰める。

 「お前が侵入者だな…」
 「だったら何だ」
 「ここで排除する。セリス、お前は先に行け!」
 「でも!」
 「狙いがお前な以上、俺一人と居るより、他の奴らが集まってる方に居る方が良い!それに恐らく城内には、おそらくコイツだけだ。俺だけで、どうにかなる。」
 「……。分かった!」

 そう言って、セリスは他の魔法が居るであろう場所に向かって駆けていった。

 「一人で行かせて良いのか?」
 「何?」
 「誰が一人で来たと言った。俺の他にも、まだ居る来ているぞ」

 侵入者が、含み笑いをしながら言うと、ルアンは訝しげに聞き返す。

 「……お前をさっさと始末して、追いかければ良いことだ」
 「舐めるな!」

 兵士もとい、敵の侵入者がルアンをめがけて、斬りかかる。それを俊敏な動きで躱すと、回し蹴りで蹴り飛ばす。

 凄まじいまでの威力で吹き飛ばされて、壁に叩きつけられ呻き声を上げる。
 だが、侵入者も直ぐに立ち上がり、直ぐに魔法のエネルギー弾を繰り出す。
 負けじとルアンも魔法で対抗する。

 しばらく互いに一歩を引かない攻防が
 続いたが、決着は直ぐについた。

 「悪いが、お前に時間をかけてられない」

 ルアンは片手で掬うような動作をし風で侵入者を浮かせながら、天雷球連弾《サンダーボールラピド》を食らわせた。

 侵入者は雷撃のダメージで完全に意識を失った。

 「ハァ……さて、セリスを追わないとな(無事なのか、あいつは)」

 彼は侵入者を無力化すると、安堵する暇もなくセリスの後を追うように駆けていく。