翌日、朝。
空が明るくなり始めた頃。
ルアンとセリスは、神聖樹のある神域へと向かう為の準備を済ませ、王城の城門前に立っている。
「セリス」
「ルアン……」
セリスはソワソワとし落ち着かない様子だ。意気込んではいたが、やはり多少なりとも緊張するのだろう。
セリスの表情には少し不安の色が浮かんでいる。
そんなセリスに苦笑いしつつ、安心させるように、セリスの頭にポンと手を置いた。そして、
「心配すんな、俺も一緒に行くんだから」
そう言った。その言葉は短くてもセリスにとっては、とても心強い物だった。
セリスは緊張が解れ、柔らかな表情に戻った。
「大丈夫そうだな」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「よし、じゃ行くか」
そう言って馬に乗り、城門に向かってルアンに遅れぬようセリスもまた後を着いていく。
城門の前で待機していた兵士達は、ルアン達の姿を確認すると、門を開けた。
城門を出た二人は神域へと出発した。
王都を抜け、村を抜け、森の中の奥深くへと騎馬を並べ進む。
休憩を挟みながら馬を走らせること四日。
鬱々と茂っていた雑草や木々が徐々に少なくなり、光が差し始めた。
そのまま森の中を進むと、黄金色に輝く草原が見えてきた。
本当に同じ森の中に居るのかと不思議に思うほどの美麗さに、セリスと、ルアンは目を惹かれ、思わず立ち止まる。
「キレイ…」
「ああ、キレイだな。そろそろ近いのかもな」
そして、その美しさに思わず呟いた。
ルアンも彼女の言葉に同意をする。
それほどに美しく神秘的な草原であった。
しかし、いつまでも立ち止まっているわけにも行かない。二人は、再び馬を歩かせ進んでいった。
そうして、更に馬を進めること数時間。
「あ!あれかな!」
「かもな…」
セリスが突然、前方を指さして声をあげた。
ルアンが彼女の指さした方向に目を向けると、その先は神々しく金色に輝く 聳え立つ一本の巨大な木があった。
他とは明らかに違う異彩を放つそれに、ルアンは間違いないだろうと思うものの、実際に見たことがない為、曖昧に返した。
「やっと着いたか…」
「長かったね…」
「本当にな…」
少し疲れた顔をするルアンに、セリスは苦笑いを浮かべる。
「少し休む?」
「いや、良い」
「そっか。じゃ近くまで行こう」
二人は馬から降りて、近くの木に綱を繋ぐと、休む間もなく神聖樹の近くまで行こうと歩き出す。
少し近づいた所で、神聖樹の後ろに人影らしき物が居ることにルアンが気がついた。
"それ"は、二人を窺うようにじっと視ている。
ルアンも同じように人影らしき物を警戒しつつ見返す。
(あれは何だ。人か?……今のところ攻撃してくる様子はないな。様子を見るか。)
ルアンが思考を巡らせていると、金髪で十代くらいの少年のような風貌の、"それ"は彼らの方にゆっくりと歩いて二人の前まで来た。
「お前は誰だ?」
「僕はこの神域を守る者だ。まぁ、神聖樹の精霊のようなものだと思ってくれれば良いよ。君達がここに入ってきた時から視ていたんだ。」
「精霊、だと?」
彼は自分の後ろにセリスを隠すと、精霊だと言う"それ"に問いかけた。すると、金髪の青年のような精霊は、笑みを浮べて答えた。
人形の精霊がいるなんて聞いたことがない、ルアンは訝しげな表情をして聞き返す。
精霊という言葉にセリスもピクリと反応する。
「あぁ。こういう姿の精霊は僕だけだ。ま、僕の事は良いだろう。それより本題に入ろうか」
そう言うと精霊は、笑みを消し真面目な顔に変えた。
「君達は、何の用でここに来たのかな?」
「それは、私の魔法を…聖天魔法を覚醒させるために、ここに行くよう言われて…」
「その魔法、久々に聞いたな。ここにはずっと誰も来ていなかったからね。そういう事なら、仕方ないね。君達の絆を見せてもらおう」
精霊がセリスに魔法をかける。
すると、セリスは糸が切れたように地面に座り込んだ。かと思うと、数秒して、スクっと立ち上がった。
「……」
「セリス!大丈夫か!?…セリス?」
「………」
「無駄だよ。今の彼女に君の声は聞こえていない」
しかし、その目に光はなく、ルアンが呼びかけるが返事はない。それどころか反応も示さない。そんな彼女を見たルアンは憤怒し、精霊を睨みつけ怒声をあげる。
「こいつに何をした!」
「直に分かるよ」
「どういう…!」
ことだ。と続けようとした言葉は続かなかった。セリスが、突然ルアンに魔法で攻撃をしかけたのだ。
「!?」
ルアンは瞬時にバックステップで避ける。
セリスが追撃してきたが最小限の動きで避けきり一旦距離を取った。
そんな一連を見ていた精霊に食ってかかるように言葉をぶつけた。
「まさか……洗脳でもしたのか!?」
「違うよ。これは僕は魔法で操っているだけさ」
「似たようなものだろうが!早くセリスを元に戻せ!」
「全然違うよ。この魔法は聖天魔法を覚醒させる手助けをするものなんだ」
「何?」
セリスが放ってくる光弾を躱しながら、ルアンは怪訝な顔で精霊を見る。
すると、精霊はしたり顔で魔法の説明を始めた。
「僕の魔法はね、聖天魔法の使い手として、膨大な魔力を引き出せるようになる為の強化を促すんだ」
「だったら、何で操る必要がある!こんな事する必要はないだろ!」
「言っただろう。君達の絆を見せてもらうと。君には、命がけで僕が彼女にかけた魔法を解いて戻してもらう。
ちなみに僕は手を出さないよ。頑張ってね。じゃ」
(ちっ…。何が、じゃ!だ。ふざけんな!)
颯爽と神聖樹の下に戻っていく精霊にルアンは、苛立ち心の中で毒づいた。
空が明るくなり始めた頃。
ルアンとセリスは、神聖樹のある神域へと向かう為の準備を済ませ、王城の城門前に立っている。
「セリス」
「ルアン……」
セリスはソワソワとし落ち着かない様子だ。意気込んではいたが、やはり多少なりとも緊張するのだろう。
セリスの表情には少し不安の色が浮かんでいる。
そんなセリスに苦笑いしつつ、安心させるように、セリスの頭にポンと手を置いた。そして、
「心配すんな、俺も一緒に行くんだから」
そう言った。その言葉は短くてもセリスにとっては、とても心強い物だった。
セリスは緊張が解れ、柔らかな表情に戻った。
「大丈夫そうだな」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「よし、じゃ行くか」
そう言って馬に乗り、城門に向かってルアンに遅れぬようセリスもまた後を着いていく。
城門の前で待機していた兵士達は、ルアン達の姿を確認すると、門を開けた。
城門を出た二人は神域へと出発した。
王都を抜け、村を抜け、森の中の奥深くへと騎馬を並べ進む。
休憩を挟みながら馬を走らせること四日。
鬱々と茂っていた雑草や木々が徐々に少なくなり、光が差し始めた。
そのまま森の中を進むと、黄金色に輝く草原が見えてきた。
本当に同じ森の中に居るのかと不思議に思うほどの美麗さに、セリスと、ルアンは目を惹かれ、思わず立ち止まる。
「キレイ…」
「ああ、キレイだな。そろそろ近いのかもな」
そして、その美しさに思わず呟いた。
ルアンも彼女の言葉に同意をする。
それほどに美しく神秘的な草原であった。
しかし、いつまでも立ち止まっているわけにも行かない。二人は、再び馬を歩かせ進んでいった。
そうして、更に馬を進めること数時間。
「あ!あれかな!」
「かもな…」
セリスが突然、前方を指さして声をあげた。
ルアンが彼女の指さした方向に目を向けると、その先は神々しく金色に輝く 聳え立つ一本の巨大な木があった。
他とは明らかに違う異彩を放つそれに、ルアンは間違いないだろうと思うものの、実際に見たことがない為、曖昧に返した。
「やっと着いたか…」
「長かったね…」
「本当にな…」
少し疲れた顔をするルアンに、セリスは苦笑いを浮かべる。
「少し休む?」
「いや、良い」
「そっか。じゃ近くまで行こう」
二人は馬から降りて、近くの木に綱を繋ぐと、休む間もなく神聖樹の近くまで行こうと歩き出す。
少し近づいた所で、神聖樹の後ろに人影らしき物が居ることにルアンが気がついた。
"それ"は、二人を窺うようにじっと視ている。
ルアンも同じように人影らしき物を警戒しつつ見返す。
(あれは何だ。人か?……今のところ攻撃してくる様子はないな。様子を見るか。)
ルアンが思考を巡らせていると、金髪で十代くらいの少年のような風貌の、"それ"は彼らの方にゆっくりと歩いて二人の前まで来た。
「お前は誰だ?」
「僕はこの神域を守る者だ。まぁ、神聖樹の精霊のようなものだと思ってくれれば良いよ。君達がここに入ってきた時から視ていたんだ。」
「精霊、だと?」
彼は自分の後ろにセリスを隠すと、精霊だと言う"それ"に問いかけた。すると、金髪の青年のような精霊は、笑みを浮べて答えた。
人形の精霊がいるなんて聞いたことがない、ルアンは訝しげな表情をして聞き返す。
精霊という言葉にセリスもピクリと反応する。
「あぁ。こういう姿の精霊は僕だけだ。ま、僕の事は良いだろう。それより本題に入ろうか」
そう言うと精霊は、笑みを消し真面目な顔に変えた。
「君達は、何の用でここに来たのかな?」
「それは、私の魔法を…聖天魔法を覚醒させるために、ここに行くよう言われて…」
「その魔法、久々に聞いたな。ここにはずっと誰も来ていなかったからね。そういう事なら、仕方ないね。君達の絆を見せてもらおう」
精霊がセリスに魔法をかける。
すると、セリスは糸が切れたように地面に座り込んだ。かと思うと、数秒して、スクっと立ち上がった。
「……」
「セリス!大丈夫か!?…セリス?」
「………」
「無駄だよ。今の彼女に君の声は聞こえていない」
しかし、その目に光はなく、ルアンが呼びかけるが返事はない。それどころか反応も示さない。そんな彼女を見たルアンは憤怒し、精霊を睨みつけ怒声をあげる。
「こいつに何をした!」
「直に分かるよ」
「どういう…!」
ことだ。と続けようとした言葉は続かなかった。セリスが、突然ルアンに魔法で攻撃をしかけたのだ。
「!?」
ルアンは瞬時にバックステップで避ける。
セリスが追撃してきたが最小限の動きで避けきり一旦距離を取った。
そんな一連を見ていた精霊に食ってかかるように言葉をぶつけた。
「まさか……洗脳でもしたのか!?」
「違うよ。これは僕は魔法で操っているだけさ」
「似たようなものだろうが!早くセリスを元に戻せ!」
「全然違うよ。この魔法は聖天魔法を覚醒させる手助けをするものなんだ」
「何?」
セリスが放ってくる光弾を躱しながら、ルアンは怪訝な顔で精霊を見る。
すると、精霊はしたり顔で魔法の説明を始めた。
「僕の魔法はね、聖天魔法の使い手として、膨大な魔力を引き出せるようになる為の強化を促すんだ」
「だったら、何で操る必要がある!こんな事する必要はないだろ!」
「言っただろう。君達の絆を見せてもらうと。君には、命がけで僕が彼女にかけた魔法を解いて戻してもらう。
ちなみに僕は手を出さないよ。頑張ってね。じゃ」
(ちっ…。何が、じゃ!だ。ふざけんな!)
颯爽と神聖樹の下に戻っていく精霊にルアンは、苛立ち心の中で毒づいた。


