【毎日更新】魔法王国の幼馴染み(旧・魔法王国の絆の軌跡)

「え?誰?」
「リシュエル様の妹で、メルトビアの王女のレイリア様だよ」

レイリアと初対面のガレンが、グレースに尋ねた。そんなガレンにルアンは呆れるように答えた。

「は!?失礼しました。エルヴェリアの宮廷魔法士のガレンと申します」
「そんな畏まらなくてもいいですよ。堅苦しいのは好きではないので」

慌てて挨拶をするガレンにレイリアは微笑んだ。

「それで、兄様をここへ連れてくれば良いのですよね?」
「はい、そうですが…」
「でしたら、任せてください。直ぐに連れてきます。」
「えっと、直ぐにってどうやってですか?」
「私の魔法は転移魔法で、です」

セリスが聞くと、彼女は自身の魔法である転移魔法を使った。 レイリアが指をパチンと鳴らすと、足の下に魔法陣が出現し、その場から一瞬で消えた。
そして、次に彼女が現れたのは、リシュエルのいるであろう訓練所だった。

「兄様!」
「レイリアか…。ちょうどいい転移魔法で部屋まで送れ。」
「そのつもりですが、その後、また直ぐに移動しますよ。」
「どこにだ?」
「医務室にです!ルアンさん達がお待ちです」

レイリアが再び指を鳴らすと、彼女とリシュエルは訓練所からリシュエルの部屋に、場所が移った。

「なんでお前まで来た」
「言いましたよね、まだ直ぐに移動すると。私が居ないと無理でしょう?
ほら、セリスさんとの婚約届を持って、医務室に行きますよ」
「どうして、あちら側につく。お前だってセリスの事を慕っているだろう」
「婚約の事、本気だったんですか。
てっきり冗談なのかとばかり思ってました。
私は別にセリスさんに姉になってほしいわけじゃないです。
それより、セリスさんに怪我させたこと怒ってるんですからね!ほら、早く紙を持ってください!謝りにいきますよ兄様」
「………」

リシュエルは、レイリアに急かされ渋々婚約届を出して手に持った。それを確認したレイリアは、リシュエルを連れてまた転移魔法を使い、医務室へと移動した。

「連れてきました!」

本当にレイリアがリシュエルを連れてきたので、ルアン達は目を丸くする。
だが、直ぐに気を取り直したルアンがリシュエルに言う。

「セリスとの婚約届を破け。今ここでだ」
「………分かった」

ルアンの言葉に、リシュエルは素直に
従い、セリスとの婚約届を破り捨てる。

「婚約の話はなかったことにする」
「兄様、ルアンさんとセリスに謝ってください」
「済まなかった…」

リシュエルは深々と頭を下げた。
そんなリシュエルを見て、ちゃんと謝れるんだと、失礼な事を思ったレイリア以外の四人だった。

「そんな止めてください!リシュエル様!私達は大丈夫ですから!」

(いや、大丈夫じゃねぇよ。)

セリスが頭を下げるリシュエルを慌てて止めさせる。
その隣では、ルアンが内心でツッコんでいた。

「それに、恋人にも婚約者にもなれませんが、好意を持ってくれた事自体は嬉しいです。」

セリスは微笑んでリシュエルに言った。
リシュエルは、その笑顔に一瞬見惚れるがすぐにハッとなり頭(かぶり)を振る。そして彼は医務室を出ていった。その後を追うようにレイリアも出ていった。

「これで一件落着か?」
「そうみたいだね」
「ごめんね、みんな。お騒がせして。心配もかけたし」
「いや、今回の事はセリスは悪くないだろ。」
「だな」

リシュエルと、レイリアが去った後こんな会話をしていると、メルトビアの国王が医務室に入ってきた。
どうやら、リシュエルに話を聞き出したレイリアが怒り、父親のメルトビア国王に顛末を伝えたようだ。

メルトビア国王は、それを聞き息子の不祥事を直々に謝りに来たと言い、「本当に申し訳なかった!セリス嬢」と深々と頭を下げた。

それをまたセリスは慌てて止めさせた。先程よりも大分強めに。

こうして、セリスとリシュエルの婚約騒動は幕を閉じたのだった。

ルアン達一行は、もう日が暮れ始めていた為、一泊してから帰ることになった。




翌朝。
メルトビアから、エルヴェリアへの帰り支度の途中。

「セリスは、陛下と一緒に馬車に入れてもらえ。その足じゃ馬に乗れないだろ。馬は俺が連れて行くから」
「え?でも、それを言うならルアンもじゃない?お腹に響くでしょ?」
「俺は大分痛みは引いた。それに響くのは、どっちも同じだ」
「それも、そっか。じゃあお願いするね。」
「あぁ……」

ルアンとセリスはこんな会話をしている。
そこへレイリアがやって来た。
何やら小さな容器を持っている。

「セリスさん、ルアンさん、これを持っていって下さい」
「これは?」

レイリアが、持っていた容器を二人に手渡した。中を見ると、小粒の錠剤が詰まっていた。
それを見てセリスが不思議そうにレイリアに尋ねた。

「鎮痛剤です。帰りの道中、痛むようでしたら飲んで下さい」
「貰っていいのですか?」
「はい、勿論です」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます。有り難く頂きます。」

レイリアからの願ってもない申し出に、二人は随喜した。帰りの道中、痛みがぶり返す事を懸念していたのだ。

ルアンとセリスは、レイリアに礼を言うとそれぞれ内ポケットにしまった。
レイリアが去った後、ガレンとグレースが、騎士達も合流してきた。
各自自分の馬を馬小屋から出す。馬車も準備された。

まず馬車には国王が乗った後に、セリスが乗った。

その後に護衛各自が馬に乗っていく。

「グレース、少しセリスの馬の手綱を持っていてくれるか」
「いいよ」

ルアンは、彼女にセリスの馬の手綱を持っていてもらい、自分の馬に乗る。その際に腹部が痛み、僅かに顔を顰めた。

「…、いいぞ、渡してくれ」
「ん…。」
「よし、じゃあ俺達も馬に乗るか」
「そうだね」

ガレンとグレースも馬に乗り出発する。

道中、馬車の中ではセリスは気まずそうにしている。そんな彼女にアリサンドが話しかけた。

「今回は災難だったな、ミライルよ」
「えっ!?あ、はい。ご迷惑おかけしました。」
「いや、良い良い。こちらには何もなかったからな。帰ったら十分に休むと良い。ヴァイオレンにも、そう伝えてくれ。」
「はい、ありがとうございます。伝えておきます」

畏まっているセリスに、アリサンドは咎めるでもなく優しく話す。
それはまるで、祖父がいたら、このような感じなのだろうとセリスは思った。

帰り道はルアンの怪我の事を考慮し、休憩を多めに挟みながら帰路を進める。
休憩になる度に、セリスは馬車から降りる
と、ルアンの所に様子を見に行く。
すると、足怪我してるんだから、あんまり動くなと一喝されるのだった。

その道中、魔物にも出くわさず何事もなく進み、無事にセレスティアのエスカーラ城へと帰った。