【毎日更新】魔法王国の幼馴染み(旧・魔法王国の絆の軌跡)

 そうこうしていると、山の中でも木々が少なく平地な少し開けた場所に出た。馬車はそこで止まった。どうやら一旦休憩にするようだ。

 ルアン達は馬から降りると、馬に水をやり休ませると、ルアンとセリスとグレースは大きな岩に腰を掛けて休憩し、ガレンは体を軽く伸ばしている。

 騎士達も馬から降りて体を伸ばす者、水を飲む者、談笑する者、それぞれが束の間の休憩時間を過ごしていた。

 その時。

 「キャーー!」と、女性らしき人の悲鳴が四人の耳に聞こえてきた。

 「今の声って…」
 「ああ、悲鳴だな。それも女の」

ガレンとグレースが、聞こえてきた悲鳴に反応し聞こえてきた方を見ながら話す。

 「私、行ってくる!」
 「は?…っておい待て!セリス!」

その横で、セリスは俊敏な動きで岩から立ち上がった。そして自身の馬に騎乗し、声のした方へと馬を走らせる。
ルアンが止めようと声をかけるが、すでに遅く。
セリスは猛然と馬で駆けていった後だった。

 (アイツなら大丈夫だと思うが…)

 セリスの実力は、誰よりもよく知っているつもりだ。それでも万が一の事を考えると不安を拭いきれない。

 「俺も行ってくる!陛下の護衛は任せた!」
 「分かった!」

 ルアンは、ガレンに言伝を頼むと急いで馬を走らせ、セリスの後を追った。

 「行っちゃたね、二人とも」
 「あぁ…だな」

 ルアンとセリスの二人の後ろ姿を見ながら、ガレンとグレースは二人で顔を見合わせ呟いた。
 セリスが声のした方へ馬を走らせると、樹木が少なく少し開けた場所に出た。

 (多分、この辺りだと思ったんだけど…)

 辺りを見渡すと、一人の女性が三体の狼型の魔物に襲われそうになっていた。
 その女性はつづまやかな装いで、いかにも平民といった風貌だ。女性は腰が抜けて動けないようだ。そんな彼女に魔物は徐々に近づいている。

 (この道に魔物が!?それよりも、助けないと!)

 セリスは、襲われている女性を助けるべく、馬の上から光の矢を魔物に向けて放った。すると、魔物達は突然の攻撃に一瞬た怯み、後退る。

 「大丈夫ですか?」
 「は、はい」
 「立てますか?私があの魔物を倒すので、貴女は逃げてください」

 セリスは、彼女に手を差し出しながら言う。その間、魔物はセリスの魔法を警戒してか、様子を伺うように見ている。

 「は、はい!すみません!」

 女性はセリスの手を借り立ち上がると、走り去っていった。

 (一気に三体倒すには…あれしかないかな。)

 セリスは逡巡すると、手の平に魔力を込め、

 「光小爆弾(フラッシュボム)!」

野球ボール程の大きさの光弾を複数個作り、魔物に向けて穿った。
光弾は魔物三匹に着弾すると爆発し魔物達は絶命した。
 そこへ、追ってきたルアンが追い付いた。

 「セリス!お前な。勝手に一人で行くな!今は護衛中なんだぞ!」

ルアンは少し怒った表情でセリスに指摘をする。そんな所が好きなんだけどなと思ったりしながら。

 「ご、ごめん。解ってるんだけど。悲鳴聞こえたから助けなきゃと思って。」
 「気持ちは分かるが、護衛の役目もあるんだ。気をつけろよ」

 セリスはバツが悪そうに謝った。頭では解ってはいるのだが、どうしても体が先に動いてしまうのだ。

 「うん、ごめん」
 「まぁ、済んだことだ。それより何があった?」
 「女の人が魔物に襲われてたから助けた。」
 「そうか…それでお前に怪我は?」
 「ない、大丈夫」
 「本当だろうな?」

 ルアンはセリスを訝しげな目で見る。
 それには訳がある。
セリスはルアンや周りの人間を心配させまいと、良く怪我を隠すことが度々あった。そして、その都度、直ぐバレて、ルアンやギルバードに怒らせていたのだ。
今回は本当に怪我をしてないようだ。と、彼女の話し方から察したルアンは、心配していた事が杞憂に終わり安堵した。

 「心配してくれてありがとう」
 「あぁ…全くだ。とりあえず、戻るぞ」
 「うん」

 溜め息を吐きながら言うと、馬に騎乗する。セリスも同じように馬に騎乗し、二人は元来た道を急ぎ戻り始める。そして、休憩場所に戻ってくると、まだ出発していなかったようで、他護衛メンバーがいた。
 しかし、そろそろ出発するのか準備を始めている。ギリギリといったところだろう。

 「お!戻ってきたな!」
 「本当だ!」

 二人に気がついたガレンが視線を二人の方向に向けながら言うと、エミリアもつられて顔を向ける。

 「間に合ったみたいだな…」
 「そうみたいだね。私ちょっと陛下に、さっきの事報告してくる」

 セリスはそう言うと、騎乗したまま馬車の横に行き、中に乗っているアリサンドに魔物の件を簡潔に伝えた。

 「そうか。報告ご苦労」
 「いえ、では私はこのまま護衛に戻ります」
 「うむ、頼んだ」
 「はい!」

 (しかし、この森に魔物が現れるなんてな……しかも三匹も。活発化しているのか?)

 アリサンドは考えを巡らせるが答えは出なかったようだ。そしてセリスは皆の所まで戻ると、護衛ポジションに着くのだった。

 休憩を終えた一向は、再び出発した。