魔法王国エルヴェリア。
自然豊かでいたる所に緑があり、地面には水路が張り巡らされ、空には魔法のキラキラと輝く。
そんな美しいこの国では、魔法士の育成に国を挙げて力を注いでいる。
身分を問わず、誰でも入学が可能な魔法学校を経て、その中から特に才能を見込まれた者は、国王直属の宮廷魔法師として国の中枢を担う。
今、王城では、その選ばれた者の中でも、若くしてその任に選ばれた一組の男女幼馴染みがいる。
◇
消毒液など薬品のツンと鼻を刺す匂いが漂う、エルヴェリア城の医務室。
窓から射す午後の陽光が、白い簡易的な寝台を照らしている。
何時もは静けさに包まれている、この部屋だが今日ばかりは違う。
「ハァ!? 呪いをかけられたァ!? 」
男性らしき声が医務室中に響き渡った。
調子外れな声を上げたのは、齢二十五の菖蒲色の短髪の美青年。
宮廷魔法士になり七年目の彼は、ベッドの上で、ガタガタとうつ伏せ状態から身を起こそうとしている。
「ちょっと落ち着いて! そんなに大声出したら傷に障るって!」
慌てて制したの薄いベージュのミディアムヘアを、頭頂部で一つに結い上げた、容姿端麗な若い女性。
女性の装いは、宮廷魔法士の制服(金色の刺繍が施された群青色のジャケット)に白シャツ、同じく白いタイトなズボン。
それから、足元は茶色のロングブーツ。
青年も概ね似たような装いだが、異なる点がある。
一つはズボンの色だ。女性が白いのに対し、青年は黒いストレート。
二つ目は上着《ジャケット》だ。女性と同じ物を普段は着用しているが、現在はない。
理由があり破れて寝台の上に広げて置かれている。
おまけに、乱れたシャツからは真新しい包帯が覗いている。
「落ち着いてられるか! どうして黙ってた!」
「だ、だって!私よりルアンの方が大怪我で辛そうだったから…」
いつものルアンからは考えられない語気を荒らげた言い方に、女性はたじろぎながらも正直に答える。
しかし、その返答でルアンの細いキリッとした眉はこれ以上ないほど吊り上がった。
「馬鹿か! お前は! 」
ルアンの怒鳴り声に、セリスは肩をビクッと震えさせる。
「俺は外傷だけだ。治療すれば治る。だがセリス、お前のは違うだろ! 呪いだぞ、呪い!解ってるのかよ!」
ルアンの切れ長で紫色の瞳が、セリスを射抜くように捉える。
その目には、心配と焦りが滲んでいる。
その鋭い眼差しに思わずセリスが一歩後ずさった。その拍子に彼女の髪もユラリと揺れる。
「わ、解ってるよ! でも⋯自分より辛そうな人がいたら、誰だってそっちを心配するでしょ!」
セリスは気圧されながらも言い募る。
「……少なくとも、私には自分を優先するなんてできない⋯」
しかし、その声量はだんだんと小さくなり、最後には俯いてしまう。
ルアンはそんな幼馴染みの悲しそうな表情に、しまったという表情を浮かべる。
そして、平静に戻ったルアンは困り顔で、左寄りで分け、かきあげられた前髪をくしゃりと掴み
「⋯悪かったな⋯怒鳴って⋯。ただ俺と違って、お前のは下手すると命に関わる事なんだ。もっと自覚をもってくれ」
と優しく諭し、セリスの細い肩にそっと手を置いた。
二人が、なぜ医務室にいるのか。
それは、時は数時間前に遡る。
自然豊かでいたる所に緑があり、地面には水路が張り巡らされ、空には魔法のキラキラと輝く。
そんな美しいこの国では、魔法士の育成に国を挙げて力を注いでいる。
身分を問わず、誰でも入学が可能な魔法学校を経て、その中から特に才能を見込まれた者は、国王直属の宮廷魔法師として国の中枢を担う。
今、王城では、その選ばれた者の中でも、若くしてその任に選ばれた一組の男女幼馴染みがいる。
◇
消毒液など薬品のツンと鼻を刺す匂いが漂う、エルヴェリア城の医務室。
窓から射す午後の陽光が、白い簡易的な寝台を照らしている。
何時もは静けさに包まれている、この部屋だが今日ばかりは違う。
「ハァ!? 呪いをかけられたァ!? 」
男性らしき声が医務室中に響き渡った。
調子外れな声を上げたのは、齢二十五の菖蒲色の短髪の美青年。
宮廷魔法士になり七年目の彼は、ベッドの上で、ガタガタとうつ伏せ状態から身を起こそうとしている。
「ちょっと落ち着いて! そんなに大声出したら傷に障るって!」
慌てて制したの薄いベージュのミディアムヘアを、頭頂部で一つに結い上げた、容姿端麗な若い女性。
女性の装いは、宮廷魔法士の制服(金色の刺繍が施された群青色のジャケット)に白シャツ、同じく白いタイトなズボン。
それから、足元は茶色のロングブーツ。
青年も概ね似たような装いだが、異なる点がある。
一つはズボンの色だ。女性が白いのに対し、青年は黒いストレート。
二つ目は上着《ジャケット》だ。女性と同じ物を普段は着用しているが、現在はない。
理由があり破れて寝台の上に広げて置かれている。
おまけに、乱れたシャツからは真新しい包帯が覗いている。
「落ち着いてられるか! どうして黙ってた!」
「だ、だって!私よりルアンの方が大怪我で辛そうだったから…」
いつものルアンからは考えられない語気を荒らげた言い方に、女性はたじろぎながらも正直に答える。
しかし、その返答でルアンの細いキリッとした眉はこれ以上ないほど吊り上がった。
「馬鹿か! お前は! 」
ルアンの怒鳴り声に、セリスは肩をビクッと震えさせる。
「俺は外傷だけだ。治療すれば治る。だがセリス、お前のは違うだろ! 呪いだぞ、呪い!解ってるのかよ!」
ルアンの切れ長で紫色の瞳が、セリスを射抜くように捉える。
その目には、心配と焦りが滲んでいる。
その鋭い眼差しに思わずセリスが一歩後ずさった。その拍子に彼女の髪もユラリと揺れる。
「わ、解ってるよ! でも⋯自分より辛そうな人がいたら、誰だってそっちを心配するでしょ!」
セリスは気圧されながらも言い募る。
「……少なくとも、私には自分を優先するなんてできない⋯」
しかし、その声量はだんだんと小さくなり、最後には俯いてしまう。
ルアンはそんな幼馴染みの悲しそうな表情に、しまったという表情を浮かべる。
そして、平静に戻ったルアンは困り顔で、左寄りで分け、かきあげられた前髪をくしゃりと掴み
「⋯悪かったな⋯怒鳴って⋯。ただ俺と違って、お前のは下手すると命に関わる事なんだ。もっと自覚をもってくれ」
と優しく諭し、セリスの細い肩にそっと手を置いた。
二人が、なぜ医務室にいるのか。
それは、時は数時間前に遡る。


