Embrace it all―すべてを抱いて、生きていく―

 あれは、亞紗斗さんと付き合い始めて三カ月くらい経った頃の夜。
 あたしは、亞紗斗さんといるところを週刊誌に撮られて――世間では熱愛だ、密会だと騒がれて。

 連日、群がるように待ち伏せた記者たちに囲まれた亞紗斗さんが。



『彼女は俺の恋人ではありません。婚約者です』
と。



 あっさり勝手に全国へ発表した。



 いや。

 婚約の話は、付き合い始めて割と早い段階から、あたしたちの間でもしていた。

「いつか結婚しよう」じゃなくて、亞紗斗さんは最初から「いずれ結婚する」と言っていて。
 あたしも、それを拒んだことはなかった。
 だけど。

 (だからって、正式なプロポーズより先に全国発表するなんて、誰が思うのよ)


「あれ本当にびっくりしたんだからね」

「事実だっただろ」

「まだ正式にプロポーズされてなかった!」

「だから今している」 

「順番!!」


 また。

 亞紗斗さんの口元が、少しだけ緩んだ。


「開けろ」

「……もう」

 観念して、ケースを開く。



 息が止まった。



 細身のプラチナリング。

 小さなダイヤが並んでいて。

 中央は、わずかに柔らかな曲線を描いている。


 派手じゃない。

 でも。


 細部まで繊細なデザインで――とても綺麗だった。

 亞紗斗さんらしいと思った。


 無駄がなくて。

 静かで。


 でも、ちゃんと目を引く。 


「綺麗……」

 あたしは思わず呟いた。


 そして、気づく。


 その形。