Embrace it all―すべてを抱いて、生きていく―

 あの夢のステージから七年後の秋を迎えた。


 若葉とエディは昨年の春に結婚して、最近子どもが生まれた。若葉そっくりの可愛い女の子で、エディがもう「これでもか!」ってくらいベタ惚れなんだとか。


 あたしはあのステージの後、とあるレコード会社から声がかかって、念願の歌手デビューの夢が叶った。
 先日、地方のライブツアーを終えて、今度は音楽のラジオ番組のゲストとして出演予定。

 EDENは、もともとどこにも所属がないインディーズのまま活動していて、一躍有名にはなったけど、メンバーのそれぞれの進路もあり、あの素顔公開のライブ以降は活動を休止している。


 忙しくも充実した毎日を送っている反面、どこか物足りなさを感じることもある。


 その正体が何なのかわからないまま、二十五歳を過ぎた頃。

 若葉とエディの結婚が決まったと聞いて、あたしは真っ先に二人の元へ駆けつけた。

 結婚式では、友人代表スピーチを務めさせてもらった。


 二人の幸せそうな姿を見て、あたしは心からの祝福をした――つもりだった。


 そして、同時に気づいてしまった。



 もし、涼ちゃんがまだ生きていたら。


 あたしにも、こういう未来があったのかもしれない……と。



 でも、今更そんなことはできない。

 涼ちゃんが遺してくれたこの指輪。未だに外せずにいたけれど。


 少し前から、涼ちゃんのことをあまり考えなくなっていることに気づいた。


 あたし、涼ちゃんのこと……忘れかけている?



 途端に、怖くなった。


 でも、涼ちゃん以外の人と恋をするイメージがどうしてもできなくて。

 いや、そう思い込みたかっただけなのかもしれない。



 本当は、既に別の人を見始めている。


 あたしの今、一番気になる人。



 それは……。