穢れた龍神と生贄の花嫁

「ここが、龍神様が祀られているはずの湖だ」

 大きい湖のほとりに、古びた鳥居がひとつある。その前に、水夜と清四朗は立っていた。

(本当に禍々しくてどす黒くなっている……)

 空は清々しいほどに晴れているのに、湖は正反対に真っ黒だ。神力を持たない水夜でもその禍々しい邪気を感じ、背中に冷や汗が流れる。

 清四朗は両手を合わせて目を瞑ると、祝詞を唱え始める。すると清四朗の周囲が光り出し、風がふわりと舞った。長い祝詞を唱え終えると、湖が光り出す。その中央から、何かがザバザバと大きな水音を立てて現れた。

(もしかして、あれが龍神様……)

 湖の中央から大きな銀色の龍が空へ登っていく。そして急に急降下すると、湖へまた入っていった。湖は大きな波をつくって揺れている。

 そして、鳥居のすぐ近くにまた龍神は湖の中から現れた。キラキラと水滴をはじいてその場にたたずむ龍神を見て、水夜は目を大きく見開く。

(なんて美しいの……!)

 日の光に照らされて、龍神は神々しく輝いていた。だが、輝いているのにその周囲の気はどす黒い。

──我を呼び出したのはお前か

(龍神様の、お声!?)

 どこからともなく声がして水夜は驚く。低く威厳のあるその声に、全身が雷に打たれたようにビリビリと震えた。

「お初にお目にかかります。この地域を管轄しております、青条家当主、清四朗と申します。こちらは、娘の水夜でございます」

 清四朗に言われ、水夜は慌てて深々とお辞儀をした。