穢れた龍神と生贄の花嫁

 水夜が龍神の生贄になる日、水夜は馬車に揺られ隣町の湖へ向かっていた。

 水夜は今まで着たこともないような美しい着物に身を通し、化粧をされている。馬車の窓に映った自分の姿はまるで別人のようだ。

『よかったわね、死ぬ前に綺麗な姿になれて。みすぼらしいお姉様でも、着飾ればましにはなるのね。そうだ、はい、これ』

 馬車に乗り込む前に屋敷の前で珠奈から手渡された勾玉を、水夜は静かに見つめる。群青色に光る勾玉には、珠奈の神力がこめられていた。

「きちんと懐にいれておけ、無くすんじゃないぞ。その勾玉を持っていれば、お前に神力が無いことは一時的にごまかせるはずだ。どうせ生贄の花嫁と言っても、その場で龍神様に食われるだけだ。その神力を食らって一時的に龍神様も落ち着くだろうが、その後のことは知ったことではない。青条家としては、やるべきことはやったと国へ報告できればいいのだからな」

 向かいに座る清四朗は、そう言って窓の外を眺めた。

(お父様は、私のことなんて本当にどうでもいいんだわ)

 水夜はうつろな目をしたまま勾玉をしまい、同じように窓の外を見た。屋敷から一度も出たことのなかった水夜は、窓の外を眺めるが何の感情もわかない。見てみたいと思っていた外の景色も、今の水夜の目には何の色も映さずただモノクロのように見えていた。