穢れた龍神と生贄の花嫁

「そ、そんな……!翔澪様はすでに私に居場所をくださいました。これ以上望むことは何もありません」

 水夜が慌ててそう言うと、翔澪は撫でていた水夜の頬を優しくつまむ。

「欲が無い花嫁だな。そんなだとむしろ与えたくなるだろう。水夜はもっと欲を持っていいのだぞ」

(欲……そんなもの持っていいなんて言われたことなかったから、よくわからないわ)

 いつだって欲に忠実なのは妹の珠奈だった。水夜はその生い立ちのせいで、何かが欲しいという気持ち自体が欠落している。

「さて、可愛い水夜が安らげる場所を早くつくらないとな。掃除には何が必要だ?」
「えっ、えっと、箒にちりとり、あとは雑巾とバケツに水、でしょうか。掃除用具一式あればありがたいです」
「なるほど、それくらいなら今の俺でも創りだせる」

 そう言って翔澪が両手をかざすと、キラキラと光り何かが形つくられていく。そしてそれは水夜が言っていた掃除道具になった。

「わあ!すごい!」

 水夜が目を輝かせて掃除用具を手に取ると、翔澪は満足そうに微笑む。

「これでも神だからな。水夜のおかげで力も少しだが戻ってきている今、何かを創りだすことはたやすい」

(神様ってやっぱりすごいのね!)

「これで掃除に取りかかれます!ありがとうございます」
「礼を言うのはこちらの方だ。俺も手伝おう」

 翔澪が掃除用具に手を伸ばすと、水夜は慌ててそれを制した。