鏡の向こうの私たち

 全校生徒が集まって開かれた、終業式。
 私は窓の外を眺めながら、校長先生の長い話を聞き流していた。
 うとうとしているうちに式も終わって、明日から夏休み。
 教室の空気が一気に弾けた。
 帰りのホームルームで、担任が最後にひとこと。

「怪我や事故に気をつけて。絶対に、怪しいバイトには手を出さないように。また九月に元気な顔を見せてください」

 その言葉にも、みんな適当に「はーい」と返す。気持ちはもう、とっくに夏休みへ飛んでいた。

「ねえ、夏休みどこ行く!?」

 誰かが声を上げると、すぐに何人かが話に加わった。

「やっぱ海とか?」
「海は混むでしょ。花火大会は?」
「それも混むじゃん」
「じゃあ、どこならいいのよ」

 くだらない話でみんなと盛り上がる中、健が鞄を持って席を立った。どうやら、もう帰ってしまうらしい。

「健」

 呼び止めると、健が振り返る。

「このあとファミレス行くんだけど、健も行かない?」
「あー、ごめん。予定あるんだわ」
「そっかあ」

 なんだ。残念。
 でも、夏休みはこれからだし。去年の冬休みだって、みんなで駅前に集まって、買い物したり、イルミネーション見たり、ファミレスで何時間も喋ったりしたんだから。
 今年の夏も、きっと同じように遊ぶ。

「健も海とか花火大会、行くでしょ?」
「おお、行く行く」
「じゃあ、決まったら連絡するね」
「うん。よろしく」

 あっさり頷く健に胸が弾んだ。明日からの夏休みが、ますます楽しみになる。
 さっきまでの残念な気持ちなんて、どうでもよくなっていた。