鏡の向こうの私たち

 夕飯もろくに食べずに、私はさっさとベッドに飛び込んだ。
 涙ももう出なくなった。
 その代わり、イライラと悔しさだけが、どんどん募っていく。

 どうして、あんな子を褒めるの?
 どうして、私のことわかってくれないの?
 どうして、私のこと追いかけてきてくれないの?
 どうして、「ごめん」って連絡してくれないの?

 何回スマホを見たって、健からの通知は鳴らないまま。
「可愛い」って言ってくれたじゃん。可愛いと思ってくれるなら、中身なんてどうだっていいじゃん。どうとだって取り繕えるんだから。
 なのに──。

“──中身は最悪だな”

 健の言葉が、頭から離れない。

 違う、違う、違う、違う──!

 それを言うなら、私のことをからかって、いじめてきたヤツらのほうが、何万倍も最悪じゃないか。
 私はこんなに頑張って、自分を磨いて、それでやっとここに来たんだ。それを、菊池 彩葉は──。

 むしゃくしゃする気持ちのまま、SNSを開く。
 今日も「いいね」の数は増え続けていた。

 ──ほらね。
 やっぱり私、可愛いんだよ。

 スクロールしたすぐ先には、花火大会の写真。
 見切れた健の頭が写っている。
 夏休みは本当に楽しくて、幸せで、ずっと続けばいいなって思ってたのに。

 どうして、こんなことになっちゃったんだろう。

 健の頭をじっと見つめているうちに、スマホの画面が暗転した。
 真っ黒な画面に反射して、鏡のように写ったのは──あの頃の私だった。