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寝■■■■■■■薬■■
気分■落■着■■■薬■■
不安■緊張■和■■■薬■■
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一週間これを飲んでくださいと言われ、わたしは半信半疑で薬を受け取った。
けれど、言われたとおりにきっちり飲んでいても、わたしの状況に変化は無かった。
漢字だけがぐるんぐるんと、踊る世界。
わたしは普通にみんなとLINEして、スタンプ送りあって、流行りの言葉で笑い合いたいのに。
夜の十二時頃に眠って、朝の七時頃目覚める。
いつになく健康的な生活である。
夜更かしをしなくなって、肌の調子だけは良くなったようだけど、わたしのスマホを震わせていたメッセージの通知は、とうとう途絶えてしまった。
友達のグループLINEにも返事をしていないのだから、仕方ない。
次第にわたしは恐ろしくなった。
ひらがなとカタカナを失って、それに対して嘘を重ねた事は、かなりの大事になっていた。
わたしが持っていた、いろいろな物が、手の中から音を立てて落ちていく。
闇に飲み込まれて、呼吸するのさえ難しくなっていた。
もう一週間以上トールの顔を見ていない。
その日。
三回目の診察日がやってきた。
今年のクリスマスイブは日曜日だ。
トールはイブをわたしと過ごすために、一ヶ月前からバイトのシフトは絶対に入れないと言っていた。
それなのに。
『明後日さぁ。急に、シフト入れられちゃって、ごめん。無理だわ』
受話器越しに伝わる声に、優しさの色を見出す事が出来なかった。
「なんで!? だって、絶対休めるって言ってたじゃん!」
わたしの声に、暫くの沈黙の後、トールが言った。
『……お前さあ。オレの事、まじで好きなわけ?』
何でそんな事言うのだろう。
『携帯壊れたとか言ってさ、嘘じゃん。オレと会ってるとき、なんで電源オフにしてるんだよ? 最近のSNSの更新も止まってるし、LINEも既読スルーだしさ』
「――勝手にチェックしてたの?」
声が震える。
『それって、あからさまにおかしくねぇ? オレ、まじで嘘吐くオンナ嫌いなんだよね。なんかお前の事、信じられねーって感じだよ。自分だけ不幸ぶってさ』
おかしいよ。
おかしいけど、それはわたしの所為じゃない。
だって、わたしは今、漢字しか読めないのだ。
それを治す為に病院だって行っている。
『いやだからさあ、そういう嘘吐くなよっつーの……つーかもう無理。付き合いきれないから』
残酷な言葉を吐き出して、電話がぶつりと切れる。
嘘じゃない。
今、言った事は嘘じゃない。
携帯が壊れたって言ったのは嘘だけど、漢字しか読めないのは本当なのだ。
慌てて携帯の電源を入れて、短縮の一番に電話する。
けれど、着信を拒否する、非情な機械音が流れるばかりで、わたしはトールまで失ってしまったのだと、泣いた。
なんで、ひらがなとカタカナが読めないだけで、普通の高校生ができなくなっただけで、トールはわたしのことを嫌いになっちゃったんだ。
もう、こんな狂った世界で生きていたくない。
わたしものすごく、不幸だ。
可哀相、可哀相……。
年末が近いからなのか、診察室は混雑していた。
診察室の扉を叩きつけるような顔をして出てきた「アンドウさん」が、わたしの隣にどすんと座る。
漢字以外は判るくせに何でそんなに怒っているんだろう。
わたしは「アンドウさん」怒りに怯え、俯いた。
ひらがなとカタカナを見る事ができる世界は羨ましかった。
先週は来なかったけれど「アンドウさん」も金曜日の四時半前後に予約をいれているようだった。
診察室の顔ぶれも、受付に来る順は違えど、だいたい一緒。
わたしは「アンドウさん」と話をしてみたいと思った。
「アンドウさん」の世界に、わたしの世界を足せば、完璧な世界が出来る上がる気がした。
普通の女子高生としての生活も、友達もカレシも無くした今、なんとなく「アンドウさん」だけが、わたしの事を理解してくれると思い込んだ。
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寝■■■■■■■薬■■
気分■落■着■■■薬■■
熟睡■■■■■■■■薬■■
不安■緊張■和■■■薬■■
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少し増えた薬を、願いを込めて飲みくだす。



