私×0.5+わたし×0.5=◎

「お前って、いっつも薄着だよな」

「慣れているんだもん。これくらいの寒さだったら、まだ、コートいらないよ」

ともかくそれは突然起こった。
どうしようか。
トールに話したら、嫌われちゃうかもしれない。と思うと、何も言えなかった。

十二月に突入した街並みは、クリスマスのイルミネーションで彩られて、冬枯れを誤魔化すようにきらきらしていた。

わたしは冷たい手を、トールのポケットの中に忍び込ませる。
一瞬びくりと震えた固い肌が、仕方ないなぁといった感じで、わたしの手を握りこんだ。

トールは近所の大学に通う大学生で、ファミレスのバイト先の先輩だった。
高校生のわたしにとって、少し年上の彼は自慢の彼氏だ。
ほやほやと体温と体温が伝わって、ひとつに溶けてゆく。

やっぱり幸せだなあと思う。

冬の冷たい空気の中、わたしの手は常に暖かいものに守られていて、それが当たり前だったのだ。
当たり前の何かがなくなるなんて想像したことなど、たった一度も無かった。
そう自信を持って、胸を張れるくらい、わたしの17歳の人生は順風満帆で、また、それを当然のように受け止めていた。

「イブどうする?」

「まだ三週間以上あるじゃん」

「ばか、今から予約しておかないと駄目なんだよ」

「えーそうなのー?」

「東京のクリスマスを舐めちゃいけねーよ。凄いんだから」

「あはは、何それ」

だから。
大丈夫。大丈夫だよ。自分に言い聞かせるようにした。

クリスマスの大切さなんて良くわからないけれど、せっかくカレシがいるのに一人きりで過ごすというのも寂しい。
SNSを開けば、他のクラスメイトたちもこぞってカップルでの予定をアピールしている。「普通」の女子高生として、ここで遅れをとるわけにはいかない。

「横浜、とかどうかな。中華街」

わたしの答えに、トールはちょっと顔を顰める。

「なんか渋くねぇそれ。せっかくならミレナリオとかさあ」

「渋いけど……みなとみらいも近いし、赤レンガ倉庫だってあるし。たぶんイルミネーション綺麗だとおもうなあ。中華街でご飯食べてさ、その後、デザートしに行こうよ。わたし、くるくる回るテーブルで中華食べてみたいな。食べた事ないんだもん」

少しだけ考えてトールは頷いた。

「うーん。判った」

わたしは自分の提案が、思いの他、うまく通ったことに安心して、ひそかに胸をなでおろした。
なんとも情けない。
どこに行くのにも、何かするのにも、怯えなければいけないこの状況は、とても呪わしい。