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シロクマ愛ランドの出口。
俺たちは、
約束の初雪に目を細めた。
チラリ、チラリ、と
俺たちに舞い降りては、
微かな冷たさを残し
すうっと消えていく。
さっきまでの
作り物の結晶とは違う。
今、空から舞い落ちてきた雪。
それが、
俺と煌人の体温を
冷やしきれずに消えていく。
「風太、
触れていいですか。」
煌人の
真っ黒なまつ毛が、
上下しながら
近づいてくる。
――いいよ。
俺も、お前に触れたい。
返事の代わりに
俺も少し背伸びをする。
すぐそこに
お互いの温度を感じる。
胸がキュッとなる。
鼓動が
リズミカルに走り出す。
「煌人……俺もお前が……」
「――そこ。今すぐ離れて。
綺麗なエンディングなど与えない。」
――ピタリ。
ふたり、近づいたまま
声の方へと目線を向ける。
そこには、
ドンッと《《シロクマ風》》が立っていた。
またコイツかよ。
めんどくせぇ。
「出たな。シロクマ風。
なんだよ、邪魔すんなよな。」
「わっ……風太っ……
ダメです、アイツはダメッ。」
煌人が慌てて俺の口を塞ぐ。
シロクマ風が腰に手を当て
ビシッと俺を指差す。
「おい、煌人。
このチンチクリンが
お前の言ってた“想い人”か?」
「あ、はっ……はい。
俺の“想い人”、
牙の生えたハムちゃんです。
ふふっ♡照れますね♡」
「ふーん、牙の生えたハムね……。
看板シロクマを
パンダにすると言ったお前を、
俺は――絶対に認めない。」
なんだ、コイツは。
ムカつく野郎だ。
「おい、お前。
パンダじゃなくて
ツキノワでもいいぞ。
ちょっとだけ白を残してやるよ。」
――バチバチッ!!
俺とシロクマ風に火花が散る。
「あぁぁ、ダメです。
お二人とも、仲良くしましょう?」
「うるせぇ。」
「うるさい。」
チッ!
ハモっちまった。
ゴソゴソ……
バッ!!
シロクマ風が頭をとる。
正直、驚いた。
現れたのは、
煌人と同じ顔した茶髪の男。
煌人が額に手を当て
大きなため息をつく。
「俺の双子の兄貴です……。」
「ええぇぇーー!?」
ソイツは俺たちを見て、
ニヤリと笑った。
「よろしくな。
俺の《《クラスメイト》》くん。」
なんだと!?
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一夜明けた。
……おい。
ぜんっぜん眠れなかったぞ!!
チュンチュン♫
ガラッ!!
窓を開ける。
「うるせぇ!
チュンども!黙れ!」
パタパタパタッ……
腹立つくらいの朝日の中、
飛んでいくチュン共を見送る。
ふん。
今朝はチュンチュンの
気分じゃねぇんだよ。
「あー、やってらんね!
なんだアイツ。」
ムカムカ
ムカムカ
ムカムカ
苛立ちが止まらない。
この苛立ちは、
キスを寸止めされたからか?
それとも、
あのムカつく野郎の態度か?
知るか!!
どっちもだよ!!
「あーっ!
ムシャクシャする!!」
髪を掻きむしり、
ブレザーに袖を通す。
鏡に映った
ボサボサ頭の俺。
ゆるふわ王子はどこ行った?
「ブハッ!
ひでぇな、これは。
これ日常にすりゃ
悩みも減るんじゃね?」
とはいえ、そんな勇気もなく。
サッサッと手ぐしを通し
はい。いつもの俺。
まぁ、天パは楽でよろしい。
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教室の入口。
中をそっと覗く。
「……うん、“シロクマ風”居ないな。
何がクラスメイト君だ。
ビビらせんじゃねぇよ。」
そろっと足を出す。
「おっはよーん!」
――トンッ!!(←富士川)
――トンッ!!(←茄子)
――ドーンッ!!(←鷹野)
ズサァ!!
見事にぶっ飛んだ。
「わぁぁ!!」
「ごめん、大丈夫!?」
「まさか吹っ飛ぶとは!!」
バリケード三人が
俺を囲んだその時、
「コォラァァ!!
手を離しなさい!!」
お約束のように
煌人が走ってくる。
バリケード三人が怯む。
「わわわ!ごめんって。」
「俺らをぶたないで!」
「洞、落ち着け!」
ふふん。
はたかれろ。
「ぶったりしませんよ。」
ため息をつく煌人。
「え?
はたいてしまえよ。
こんなゲス共。」
起き上がり、
バリケード三人を指差す。
「ハムちゃん、
ちょっとごめんなさーい。」
トン。
煌人の手が俺の胸を押す。
「ぅわわわ。」
トサッ……
油断していた俺は、
再び床に転がった。
え?
なんで?
なになに?
キョトンとする俺を
煌人の目がウハウハと見ている。
「な、なんだよ……。」
後ろにずずっと下がる。
その俺の傍に
煌人が膝まづく。
「風太っ!大丈夫ですか!」
「――は?」
「ほら、こっちへ……」
煌人の腕が
テキパキと俺を抱き上げる。
ひょいっ!
――ヒィッ……
お姫様抱っこぉお……!
ゾゾゾゾ。
全身に鳥肌が立つ。
「下ろせ!今すぐ下ろせ!」
「ノンノンノン♡
これだけ言わせてください。」
「なんだよ。」
煌人が
じっと俺の瞳を覗き込む。
うっ……
その目に俺は、弱い。
「な、なんだよ。」
「風太、
俺が来るまでよく耐えた。
もう安心だ。」
――キリッ。
すぐさま、俺を抱えたまま
ブンブンと振り回す。
「ぎゃぁぁぁ♡
言っちゃった!言っちゃった!
仮面ドライバーの名セリフーッ♡」
相変わらず……
コイツ、バカだ。
ん?
あれ?
「煌人、お前、
戻りました~みたいな挨拶は?」
「んー。ちょっと嫌なんでやめました。」
「え。やめるとか、有りなの?」
「まぁ、有りにしました。」
はいはい。
そうだ。
コイツはそういう奴だ。
それがまかり通る奴だ。
うっかり忘れてた。
「ふーん。
……で、おろせ?」
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「おはよう。
みんな揃ってるかぁ?」
担任が入ってくる。
「揃ってまーーーーす!」
「うむ。元気でよろしい!!」
笑顔の担任が、
ドアの向こうに声をかける。
「おーい。入っていいぞー。」
――カタッ……
すらっとした長い足が
教室へと伸びる。
ザワッ……
「えー、洞くんそっくり!」
「どういうこと?」
「はいはい、みんな、静かに。
今日から卒業まで、
このクラスの仲間になった
――“洞遥人”君だ。」
シレッとした顔で
黒板の前に立つソイツ。
あのムカつく目つきは――……

「あーっ!!シロクマ風!!」
思わず叫んで立ち上がる。
一斉に
みんなが俺を振り返る。
やべ……思わず……
「風太っ……」
煌人が立ち上がろうとする。
遮るように
同じトーンの声が響いた。
「あの、そこのキミ、
ちょっと話したいんですけど?」
――うわ、最悪だ。
「ん?
洞遥人、光星と知り合いか?」
担任が俺とシロクマ風を
交互に見る。
「ええ、ちょっと。
急ぎなので少し話しても?」
シロクマ風が
にこやかに担任に伝える。
首を傾げながら、担任が頷く。
「戻ったら、席は洞煌人の横な。」
「わかりました。
ありがとうございます。」
カツカツカツ……
乾いた足音が俺に近づいてくる。
カツ……
「光星くん、
ちょっと廊下までいいかな?」
俺の頭めがけて
煌人そっくりの声が
容赦なく落ちてきた。
「うん、いいよ。何かな?」
ニコッと笑い、立ち上がる。
視界の端に
今にも飛び出してきそうな
煌人の顔が見える。
目だけで合図する。
“大丈夫だから”
シロクマ風の後ろについて
ドアを出る。
カラカラカラ……
後ろ手でドアを閉める。
「こっちに来てくれる?」
「ああ……。」
階段の踊り場に向かう俺たち。
「うん。
光星くん、この辺でいいよ。」
周りには誰もいない。
ゴクッ……
なんだよ、何かあんのか?
こないだの続きか?
――ダンッ!!
驚く間もなく、
俺は、
踊り場の壁に
全身を押し付けられていた。
脚の間には
シロクマ風の膝が入っている。
身動きが取れない。
「何すんだよ!!離せよ!!」
精一杯噛み付く俺を
シロクマ風のギラギラとした目が
睨みつける。
「――おい。」
――ビクッ。
煌人と同じ声なのに、
全然、違う……。
「なんだよ。
さっさと言いたいこと言えよ。」
「――お前。」
「だから、何だよ。」
「シロクマ舐めてんのか?」
「は……い?」
この状況で
“お前、シロクマ舐めてんのか?”だと?
「プッ……あ、ごめんなさい。」
うっかり笑ってしまった。
ギリギリギリッ……
掴まれた襟元、
そして俺の股間が
押し上げられる。
「ちょっ……お前っ……
下はやめろ!!」
「黙れ。
あんな大勢の前で、
俺の事“シロクマ”って呼ぶな。」
「は?」
「シロクマの中の人が
俺だってバレるだろうが。」
「あ、はい……。
え?言いたいことはそれ?」
「それ以外に何があるんだよ。」
「いや……はい。うん。」
ギリギリギリッ……
ぐわー
また押し上げてきやがる!!
「だから、下はやめろって!」
「シロクマ舐めてんのか?」
「舐めてない舐めてない!
だからもうやめろ!!」
「じゃぁ――いい。」
パッ。
開放される。
なんなんだ、コイツは。
「どけよ。
お前っ……さぁ……
同じ男として、最低だぞ。」
シロクマ風を押しのけ、
制服を整える。
その前をシロクマ風は
何事もなかったかのように通り過ぎ
教室へと歩き出した。
「おい。聞いてんのかよ。」
チラッと俺を振り返った
シロクマ風がクスッと笑った。
「ロックしただけなのに。
牙ハムちゃんは、ウブだねぇ。」
ヒラヒラと手を振ると、
ドアを開け、中へと戻って行った。
なっ……!!
なんだ!?
アイツ、絶対危ないヤツだ!!



