「結局収まるところに収まったってわけか」
いつものファミレスでケーキを平らげながら、みづほがよかったねと笑ってくれた。その笑みは陽大のことを祝福してくれているのか、はたまたケーキをごちそうしてもらってうれしいのかの判断がつきかねる。
陽大はコーラに差したストローを柔く噛みながら、なんとも言えない気恥ずかしさに耐えていた。一応相談に乗ってもらった手前結果を報告しておいたほうがいいかなあと悩んだ末、奏人が釘を刺しておこうと言うので今日、一堂に会している。
「そういうことだから。みづほちゃん、よろしくね?」
陽大とは裏腹に晴れ晴れしい笑みを浮かべている奏人に、みづほが相変わらずだねえと言いたげな顔をする。奏人がいったいなにに釘を刺そうとしているのか、陽大にはちっとも理解ができない。
「ようちゃん、激重彼氏ができてよかったね」
「激重って。面白いこと言うなあ、みづほちゃんは」
「ぴったりなたとえだと思わない?」
みづぼからそう問われるのに、陽大はますます縮こまってしまう。盛大に揶揄されているだけだとわかるのに、上手い反応の仕方がちっともわからないのだ。
「じゃあ、ケーキもごちそうしてもらったし、わたしはそろそろ帰ろうかな」
「え? もう?」
「だって藤吉くんといると目立つからいやなんだもん。耐えられるのなんてようちゃんくらいしかいないよ」
呆れたようにそう言われて絶句した。たしかにみづほはこの前もそう言っていたし、たしかに奏人は今日もそこにいるだけで周りの視線を集めている。
けれどそれを居心地悪いと思ったことなど一度もなかった。
――俺、最初から奏人のことしか見てなかったんじゃ……?
自分の鈍さに打ちのめされている間に、みづほがじゃあねと帰ってしまった。奏人が満足そうに見送っているのを横目に見ながら、相変わらず今日もかっこういいなあと思ってしまう。
「なんか、日に日にキラキラ度が増してない?」
「ええ? なにそれ。いつもと変わらないでしょ。俺がそう見えるんだったら、ようちゃんに原因があるんだよ」
「俺の目がおかしくなったとか?」
「俺のことがすきだって、気づいてくれたからだよ」
ぐっと顔を寄せられて、間近でそんな言葉を吐かれたら心臓が持ちそうになかった。
距離を取ろうとボックス席の限界まで下がっても、その分奏人に追い詰められてしまう。これでは意味がないじゃないか! と当てつけのように睨んでも、奏人は甘い笑みを零すだけでちっともわかってはくれない。
否、わかっていて揶揄われているのか。
「奏人、ちょっと離れて」
「ようちゃんが逃げるからでしょ?」
「だって、おまえといると心臓が持たない」
「ええ? いつももっとすごいことしてるのに?」
にやりと笑うその肩を押しのけると、わざとらしく痛がるのがかわいかった。なにをされても許してしまいそうなほど、自分の心が奏人に対して甘くなっているのがわかる。
「ようちゃん、早く帰ろう。それで俺の部屋に来てよ」
ね? と甘い強請り声を出した奏人が、伝票を持ってレジへと行ってしまった。じんわりとした甘さに耳が痺れるのを感じながら、陽大はどうにかうるさい鼓動を落ち着けてそのあとへと追いついていく。
付き合い始めてから、奏人には翻弄されっぱなしだった。いつも以上に甘やかされているものだから、なにかあったのだろうと友人たちにも勘繰られている。
それに陽大は困っていた。
だって、全然いやじゃないのだ。
了
いつものファミレスでケーキを平らげながら、みづほがよかったねと笑ってくれた。その笑みは陽大のことを祝福してくれているのか、はたまたケーキをごちそうしてもらってうれしいのかの判断がつきかねる。
陽大はコーラに差したストローを柔く噛みながら、なんとも言えない気恥ずかしさに耐えていた。一応相談に乗ってもらった手前結果を報告しておいたほうがいいかなあと悩んだ末、奏人が釘を刺しておこうと言うので今日、一堂に会している。
「そういうことだから。みづほちゃん、よろしくね?」
陽大とは裏腹に晴れ晴れしい笑みを浮かべている奏人に、みづほが相変わらずだねえと言いたげな顔をする。奏人がいったいなにに釘を刺そうとしているのか、陽大にはちっとも理解ができない。
「ようちゃん、激重彼氏ができてよかったね」
「激重って。面白いこと言うなあ、みづほちゃんは」
「ぴったりなたとえだと思わない?」
みづぼからそう問われるのに、陽大はますます縮こまってしまう。盛大に揶揄されているだけだとわかるのに、上手い反応の仕方がちっともわからないのだ。
「じゃあ、ケーキもごちそうしてもらったし、わたしはそろそろ帰ろうかな」
「え? もう?」
「だって藤吉くんといると目立つからいやなんだもん。耐えられるのなんてようちゃんくらいしかいないよ」
呆れたようにそう言われて絶句した。たしかにみづほはこの前もそう言っていたし、たしかに奏人は今日もそこにいるだけで周りの視線を集めている。
けれどそれを居心地悪いと思ったことなど一度もなかった。
――俺、最初から奏人のことしか見てなかったんじゃ……?
自分の鈍さに打ちのめされている間に、みづほがじゃあねと帰ってしまった。奏人が満足そうに見送っているのを横目に見ながら、相変わらず今日もかっこういいなあと思ってしまう。
「なんか、日に日にキラキラ度が増してない?」
「ええ? なにそれ。いつもと変わらないでしょ。俺がそう見えるんだったら、ようちゃんに原因があるんだよ」
「俺の目がおかしくなったとか?」
「俺のことがすきだって、気づいてくれたからだよ」
ぐっと顔を寄せられて、間近でそんな言葉を吐かれたら心臓が持ちそうになかった。
距離を取ろうとボックス席の限界まで下がっても、その分奏人に追い詰められてしまう。これでは意味がないじゃないか! と当てつけのように睨んでも、奏人は甘い笑みを零すだけでちっともわかってはくれない。
否、わかっていて揶揄われているのか。
「奏人、ちょっと離れて」
「ようちゃんが逃げるからでしょ?」
「だって、おまえといると心臓が持たない」
「ええ? いつももっとすごいことしてるのに?」
にやりと笑うその肩を押しのけると、わざとらしく痛がるのがかわいかった。なにをされても許してしまいそうなほど、自分の心が奏人に対して甘くなっているのがわかる。
「ようちゃん、早く帰ろう。それで俺の部屋に来てよ」
ね? と甘い強請り声を出した奏人が、伝票を持ってレジへと行ってしまった。じんわりとした甘さに耳が痺れるのを感じながら、陽大はどうにかうるさい鼓動を落ち着けてそのあとへと追いついていく。
付き合い始めてから、奏人には翻弄されっぱなしだった。いつも以上に甘やかされているものだから、なにかあったのだろうと友人たちにも勘繰られている。
それに陽大は困っていた。
だって、全然いやじゃないのだ。
了

