木漏れ日の中の光

 私は窓際に座ったので、窓から大きい木が見えた。

 木の間からは木漏れ日が差し込んでいた。

 思わず、私はマスクを持っていた手でかざす。

「翔月。見て」

 私はバスの中から外を指さした。

「木の間から光が漏れてる」

そう言うと、翔月も私と同じように手をかざした。

ほんの少し、この光が私たちを照らしてくれますように。

どんな隙間でも、空いている穴でも。

漏れている光が見えなくても、私たちが私でいられるように。

小柳通駅前~小柳通駅前~

「あ、私ここで降りる」

 私は翔月の肩を優しく叩いて、降りる準備をする。

「え? 降りる場所、ここだっけ?」

 翔月は目を見開き、聞いた。

「いや、違う。ちょっと歩きたくて」

 私は停車ボタンを押してから、にこやかに答えた。

 小柳通駅前です。小柳通駅です。

 車内からアナウンスが流れて、小柳通駅前のバス停に止まった。

「翔月。またね」

 私は手を振って、翔月とまたハイタッチをした。

「詩。また」

 翔月と私は手を握り合って、「またね」と言って別れた。

 これからも過去に腹を立てるのではなく、信じていきたい。

 どんな優しさであろうとも、人を信じていく。

 いろんな心を持ち合わせる人間になりたい。

 この手からマスクが離れるのが難しくても、あの木漏れ日の中の光であり続けたい。

 私たちはこれからもその光を通して、前に進んでいく。

       完