豹紋もどき

 地元紙の記事より抜粋。

 五月四日の未明、山間部の温泉旅館で火事があり、宿泊客と従業員合わせて九十八人が避難する騒ぎとなった。火が出たのは六階建ての新館の一階の客室からで、この建物と、隣接する四階建ての本館の二棟が全焼している。この火事により、逃げ遅れた宿泊客の男女二人の遺体が、別々の客室から見つかっている。
 警察と消防の調査では、女の遺体の見つかった客室の損傷が極めて激しい事から、火元の疑いが強いと見ている。客室は普段は火の気のない場所でもあるため、警察は失火と放火の両面で調査を進めている。新館は数年前にオープンしたばかりであった。敷地の一部に国内でも珍しい蝶の生息地が含まれていたため、地元の環境保護団体から開発反対の強い声も聞かれており――。