次の作戦会議は、僕たちの学校の登校日後に設定した。
僕と萱は登校日があることをすっかり忘れていた。
「登校日はいつ?」
「え? あー登校日! あさってだっけ……」
「8月10日です。そうだった、学校行かなくちゃいけないんだ」
「じゃあ、その後にまた集まろう。島谷くんはなるべく、戸谷と距離を置いたほうがいいよ」
「大丈夫です。俺が見張ってるんで」
「萱くん、頼もしいね」
そのまま品川駅で別れた。
萱と僕も路線が違うため、登校日の確認を再度して別れた。
僕は電車に乗りながら、清水川兄弟という仲間が増えたことが嬉しかった。
美瑛ちゃんにLINEで事の詳細を送った。
――凄いね! 大進歩じゃない? 絶対に柚くんは勝てるよ!
美瑛ちゃんはいつも励ましてくれる。
彼女からネガティブな言葉は聞いたことがなかった。
僕は、圭くんから言われた塚田先生が復職したくないのかもという話も書いた。
――塚さんのところによく行ってたのは塚さんと話をすると前向きになれたから。私のことを全て肯定してくれたから。だから塚さんはカウンセラーみたいだなって思ってた
――そうだね。先生はまず話を聞いてくれるから
――柚くんは嫌かもしれないけど私は塚さんにはそんな居心地が悪いところへ戻ってほしくない
美瑛ちゃんの言葉に、僕は唇を噛んでいた。
すぐに返す言葉が見つからない。
美瑛ちゃんの気持ちもわかる、でもここでも否定されたことに、今の僕は素直に受け取ることができなかった。
僕は誤魔化すために、半泣きしているスタンプを送った。
――ごめんね。柚くんたちの努力を無駄にするようなこと言って。でも私は嘘を吐けないから
――わかってる。今電車の中だから帰ったら電話するね
――待ってるね♡
無理やり会話を終わらせたようで、少し罪悪感を覚えた。
でも、モヤモヤとした気持ちに覆われて感情的になるのを避けたかった。
正解を知っているのは、塚田先生だけだ。
でもそれを教えてもらわないかぎり、僕たちはただ不正解を積み上げていく。
その不毛な行為に、すでに疲れていた。
🔸🔸🔸
家に着くと、すでに8時を回っていた。
お父さんがちょうど帰ってきたところだった。
「ご飯だから、座って」
お母さんに言われて、僕は手洗いをしてテーブルに着いた。
お父さんがおもむろに、口を開いた。
「毎日、どこに行ってるんだ?」
何日ぶりかに、お父さんの声を聞いた気がする。
最後に聞いたのは、僕を叩いた時だっけ……
「図書館」
「図書館で何をしてるんだ?」
「勉強」
「何の勉強だ? 予備校にも行ってないのに。大学受験はどうするんだ?」
「予習、復習をしてる」
ごく当たり前の会話に終始した。
僕は余計な感情を込めずに、淡々と事実だけを話した。
お父さんは、つっこむことが出来ずに会話を止めた。
後は、いつものように箸が皿に当たる音だけがしていた。
「ねえ、いつまで柚は不機嫌でいるつもりなの? 夏休み中ずっとこのままでいる気?」
「……」
「お母さんが聞いているんだから、何か答えなさい!」
お母さんがヒステリックに声を上げた。
僕はそれに乗ることなく、同じように事実だけを話す。
「やることはやってる。機嫌が良くても悪くてもお母さんに迷惑はかけてないから気にしないで」
「柚! じゃあ、夕飯も食べないで! そんな態度をお父さんやお母さんにとるなら、食事も、掃除も洗濯も自分で勝手に生きていきなさい!」
「やめなさい! お前が柚にそういう態度をとってどうする」
「だって、お父さん。こんな息子に育てたつもりはないでしょう」
お母さんとお父さんが揉めるのを見るのも嫌だった。
それでも、僕が謝るのも嫌だった。
「柚、お母さんの言うことは気にするな。お前はお前なりに学生としての本分を忘れてないならそれでいい」
「……ごちそうさまでした」
僕は自分が食べた食器を持って、キッチンに行くと洗って、拭いて仕舞うという毎日やっていることを繰り返した。
ダイニングではまだ二人は言い合っていた。
僕はそのまま自分の部屋に入ると、ベッドに突っ伏した。
両親が揉めるのも、美瑛ちゃんに電話するのも、すべてが面倒になっていた。
僕と萱は登校日があることをすっかり忘れていた。
「登校日はいつ?」
「え? あー登校日! あさってだっけ……」
「8月10日です。そうだった、学校行かなくちゃいけないんだ」
「じゃあ、その後にまた集まろう。島谷くんはなるべく、戸谷と距離を置いたほうがいいよ」
「大丈夫です。俺が見張ってるんで」
「萱くん、頼もしいね」
そのまま品川駅で別れた。
萱と僕も路線が違うため、登校日の確認を再度して別れた。
僕は電車に乗りながら、清水川兄弟という仲間が増えたことが嬉しかった。
美瑛ちゃんにLINEで事の詳細を送った。
――凄いね! 大進歩じゃない? 絶対に柚くんは勝てるよ!
美瑛ちゃんはいつも励ましてくれる。
彼女からネガティブな言葉は聞いたことがなかった。
僕は、圭くんから言われた塚田先生が復職したくないのかもという話も書いた。
――塚さんのところによく行ってたのは塚さんと話をすると前向きになれたから。私のことを全て肯定してくれたから。だから塚さんはカウンセラーみたいだなって思ってた
――そうだね。先生はまず話を聞いてくれるから
――柚くんは嫌かもしれないけど私は塚さんにはそんな居心地が悪いところへ戻ってほしくない
美瑛ちゃんの言葉に、僕は唇を噛んでいた。
すぐに返す言葉が見つからない。
美瑛ちゃんの気持ちもわかる、でもここでも否定されたことに、今の僕は素直に受け取ることができなかった。
僕は誤魔化すために、半泣きしているスタンプを送った。
――ごめんね。柚くんたちの努力を無駄にするようなこと言って。でも私は嘘を吐けないから
――わかってる。今電車の中だから帰ったら電話するね
――待ってるね♡
無理やり会話を終わらせたようで、少し罪悪感を覚えた。
でも、モヤモヤとした気持ちに覆われて感情的になるのを避けたかった。
正解を知っているのは、塚田先生だけだ。
でもそれを教えてもらわないかぎり、僕たちはただ不正解を積み上げていく。
その不毛な行為に、すでに疲れていた。
🔸🔸🔸
家に着くと、すでに8時を回っていた。
お父さんがちょうど帰ってきたところだった。
「ご飯だから、座って」
お母さんに言われて、僕は手洗いをしてテーブルに着いた。
お父さんがおもむろに、口を開いた。
「毎日、どこに行ってるんだ?」
何日ぶりかに、お父さんの声を聞いた気がする。
最後に聞いたのは、僕を叩いた時だっけ……
「図書館」
「図書館で何をしてるんだ?」
「勉強」
「何の勉強だ? 予備校にも行ってないのに。大学受験はどうするんだ?」
「予習、復習をしてる」
ごく当たり前の会話に終始した。
僕は余計な感情を込めずに、淡々と事実だけを話した。
お父さんは、つっこむことが出来ずに会話を止めた。
後は、いつものように箸が皿に当たる音だけがしていた。
「ねえ、いつまで柚は不機嫌でいるつもりなの? 夏休み中ずっとこのままでいる気?」
「……」
「お母さんが聞いているんだから、何か答えなさい!」
お母さんがヒステリックに声を上げた。
僕はそれに乗ることなく、同じように事実だけを話す。
「やることはやってる。機嫌が良くても悪くてもお母さんに迷惑はかけてないから気にしないで」
「柚! じゃあ、夕飯も食べないで! そんな態度をお父さんやお母さんにとるなら、食事も、掃除も洗濯も自分で勝手に生きていきなさい!」
「やめなさい! お前が柚にそういう態度をとってどうする」
「だって、お父さん。こんな息子に育てたつもりはないでしょう」
お母さんとお父さんが揉めるのを見るのも嫌だった。
それでも、僕が謝るのも嫌だった。
「柚、お母さんの言うことは気にするな。お前はお前なりに学生としての本分を忘れてないならそれでいい」
「……ごちそうさまでした」
僕は自分が食べた食器を持って、キッチンに行くと洗って、拭いて仕舞うという毎日やっていることを繰り返した。
ダイニングではまだ二人は言い合っていた。
僕はそのまま自分の部屋に入ると、ベッドに突っ伏した。
両親が揉めるのも、美瑛ちゃんに電話するのも、すべてが面倒になっていた。



