来た時のように、塚田先生とよしかずさんの軽トラに別れて乗り、バス停まで送ってもらった。
僕は同じように塚田先生の横に乗り込んだ。
来る時にはこんなに緑に囲まれた土地にいることが新鮮だったけど、今はこののどかな場所から離れることが不思議だった。
朝5時の目覚め、食事の準備や片付け、作業の合間のくつろぎ、9時前の就寝の生活を送る必要がなくなるという現実を、ひしひしと感じていた。
「都会っ子に戻れるな」
先生は僕の心の声を拾ったかのように、言葉にした。
「たった一週間なのに、僕はもう寂しくて仕方ないです」
「また、来ればいいさ。来年の夏はそれこそ受験前で難しいだろうが、無事に大学に受かったら、後は自由だろ」
先生の言葉の端々に、もう学校へは戻る気がないことを僕は感じていた。
それでもまだ僕は希望を抱いていたかった。
「もう、家出はするなよ」
「先生もエスケープはしないでください」
「お前が心配することじゃない」
「僕は、ずっと言い続けると思います」
「お前は、弱そうに見えて実は強いよなー。それが知れただけで、俺にとってもこの一週間は実のある日々だったよ」
いつの間にか、緑色だった視界が様々な色に染まり始めた。
僕はデイバック以外に、よしかずさんからもらったブルーベリーのジャムと今朝採れたプチトマトやナスなどの野菜、美瑛ちゃんが焼いてくれたスコーンやパン、それに描きかけのキャンバスが入った紙袋を抱えていた。
来る時にはなかった荷物が、僕の家出の終わりを告げているようだった。
「本当にありがとうございました」
「この一週間の経験を今後も活かしたいと思います」
僕と萱はバス停で塚田先生とよしかずさんに対して頭を下げた。
先生もよしかずさんも、僕たちにニコニコと笑顔を向けてくれていた。
「気を付けて帰れよ。くれぐれもお母さんたちと喧嘩だけはするな!」
「また、いつでも来て。萱くんも中国語勉強頑張って。わからないことがあれば、連絡くれればいつでも教えるから」
「ありがとうございます。喧嘩は……すると思います! でも、それもここで培ったものなので」
「おい、おい、俺は喧嘩なんて教えなかったぞ!」
塚田先生が、焦って弁解を始めたのがおかしくてみんなで笑った。
僕は、今度いつこんな風にみんなで笑い合えるのだろうかと、寂しくなっていた。
「柚、泣きそうだぞ」
速攻、萱にツッコミをくらった。
でも、これは萱なりの気遣いだと受け取った。
塚田先生とよしかずさんの車が見えなくなるまで、僕たちは手を振っていた。
「家出する時に行ける場所が確保できたな」
「その言い方!」
相変わらずな萱の言い方に呆れながらも、僕も同じ気持ちだった。
同じ清里なのに、ログハウスにいた時の草の生々しい青く強い香りや、清々しい風は感じられなかった。
それは、いやでももうあの場所には戻れないということを痛感させられた。
バスに乗り込むと、僕は名残惜しくてずっと窓の外を見ていた。
隣に座った萱は、一瞬で眠りに落ちたようだ。
新宿に着いてからのシミュレーションを始めた。
言いたいことは言う。でも、必要以上に反発すれば余計にお母さんたちからの締め付けは厳しくなるだろう。
これから起きることに対して、僕は十分な準備をしておきたかった。
そのためには、多少、理不尽なことも受け入れるつもりだった。
今じゃない、大切なのは僕たちの未来だから。
僕は紙袋から描きかけの絵を取り出した。
これが完成した日には、僕も少しは成長しているだろう。
僕は同じように塚田先生の横に乗り込んだ。
来る時にはこんなに緑に囲まれた土地にいることが新鮮だったけど、今はこののどかな場所から離れることが不思議だった。
朝5時の目覚め、食事の準備や片付け、作業の合間のくつろぎ、9時前の就寝の生活を送る必要がなくなるという現実を、ひしひしと感じていた。
「都会っ子に戻れるな」
先生は僕の心の声を拾ったかのように、言葉にした。
「たった一週間なのに、僕はもう寂しくて仕方ないです」
「また、来ればいいさ。来年の夏はそれこそ受験前で難しいだろうが、無事に大学に受かったら、後は自由だろ」
先生の言葉の端々に、もう学校へは戻る気がないことを僕は感じていた。
それでもまだ僕は希望を抱いていたかった。
「もう、家出はするなよ」
「先生もエスケープはしないでください」
「お前が心配することじゃない」
「僕は、ずっと言い続けると思います」
「お前は、弱そうに見えて実は強いよなー。それが知れただけで、俺にとってもこの一週間は実のある日々だったよ」
いつの間にか、緑色だった視界が様々な色に染まり始めた。
僕はデイバック以外に、よしかずさんからもらったブルーベリーのジャムと今朝採れたプチトマトやナスなどの野菜、美瑛ちゃんが焼いてくれたスコーンやパン、それに描きかけのキャンバスが入った紙袋を抱えていた。
来る時にはなかった荷物が、僕の家出の終わりを告げているようだった。
「本当にありがとうございました」
「この一週間の経験を今後も活かしたいと思います」
僕と萱はバス停で塚田先生とよしかずさんに対して頭を下げた。
先生もよしかずさんも、僕たちにニコニコと笑顔を向けてくれていた。
「気を付けて帰れよ。くれぐれもお母さんたちと喧嘩だけはするな!」
「また、いつでも来て。萱くんも中国語勉強頑張って。わからないことがあれば、連絡くれればいつでも教えるから」
「ありがとうございます。喧嘩は……すると思います! でも、それもここで培ったものなので」
「おい、おい、俺は喧嘩なんて教えなかったぞ!」
塚田先生が、焦って弁解を始めたのがおかしくてみんなで笑った。
僕は、今度いつこんな風にみんなで笑い合えるのだろうかと、寂しくなっていた。
「柚、泣きそうだぞ」
速攻、萱にツッコミをくらった。
でも、これは萱なりの気遣いだと受け取った。
塚田先生とよしかずさんの車が見えなくなるまで、僕たちは手を振っていた。
「家出する時に行ける場所が確保できたな」
「その言い方!」
相変わらずな萱の言い方に呆れながらも、僕も同じ気持ちだった。
同じ清里なのに、ログハウスにいた時の草の生々しい青く強い香りや、清々しい風は感じられなかった。
それは、いやでももうあの場所には戻れないということを痛感させられた。
バスに乗り込むと、僕は名残惜しくてずっと窓の外を見ていた。
隣に座った萱は、一瞬で眠りに落ちたようだ。
新宿に着いてからのシミュレーションを始めた。
言いたいことは言う。でも、必要以上に反発すれば余計にお母さんたちからの締め付けは厳しくなるだろう。
これから起きることに対して、僕は十分な準備をしておきたかった。
そのためには、多少、理不尽なことも受け入れるつもりだった。
今じゃない、大切なのは僕たちの未来だから。
僕は紙袋から描きかけの絵を取り出した。
これが完成した日には、僕も少しは成長しているだろう。



