僕は萱に塚田先生と話したことを伝えた。
先生が萱にも話しておいた方がいいと言ってくれたから。
「なるほどね。しかし、陰険だな、校長も戸谷も。絶対、校長にチクったのは戸谷だよ。自分が不利になると思って、探偵でも雇ったのかもな」
「そこまで、するのかな」
「お前さあ、少しは人のことを疑えよ。戸谷だよ、お前にセクハラしてるサイテーな奴だよ。自分の身を守るためならどんな手だって使うだろ。結局、塚田先生は被害者だよな」
どうして、同僚に対してそこまで憎んだり、酷いことが出来るのか理解ができなかった。
ただ、僕はそんな狂気めいた人に、執着されているという事実に身体が震えた。
「本気で、お前も身を守らなきゃいけなくなったな」
「うん。どうしよう……」
「……あの録音は使えるな」
でも、職員室の会話を録音した音声しかないとも言えた。
しかも、あの時職員室には他の先生もいたのに、僕や萱が大きな声をだしても完全に無視していた。
それが怖い……
「で、いつ帰ることにしたんだ?」
「うん……そろそろお母さんからまた電話が来そうな気がする。あと、一週間は無理だよね」
「正直に話すのか? 俺の家にいるんじゃなくて、塚田先生のところにいるって」
萱が、珍しく眉間に皺を寄せていた。
ここは、真剣に考えないといけない。
絶対に、先生を悪者にするわけにはいかなかった。
「僕は何を言われても、覚悟ができてるけど、萱や塚田先生にとばっちりがいくのは絶対に避けたい。だから、萱は僕のことが心配で、ついてきたってことにして」
「俺のことはどうでもいいからさ。塚田先生だけは守ろうぜ!」
萱の力強い言葉に、僕は励まされた。
朝の収穫に、美瑛ちゃんが来た。
僕は、昨日の今日でどういう顔をしていいかわからなかった。
距離は近づいた気がしているけど、でも、昨日萱に揶揄われたこともあって、妙に意識してしまう。
萱は、少し離れたところでニヤニヤしているのが見える。
僕は声を出さず、口の動きだけで萱に対して文句を垂れていた。
「おはよう。島谷くん、今日もあそこで話さない?」
「おはようー。え、うん。いいよ」
キャップを被ったままではあったけど、僕の答えに白い歯を出して微笑んだ。
僕は嬉しいという気持ちを誤魔化すために、いびつな顔で笑っていた。
隣で作業を続ける美瑛ちゃんがキラキラしていて、今の僕には眩しすぎた。
🔸🔸🔸
昼食の前に、二人で昨日の林に行った。
やっぱり、空気が違う。
この心地よさを上手く表現できない自分が恨めしい。
萱だったら、的確な言葉で表現するんだろうな……
美瑛ちゃんは、昨日と同じ石に座るとキャップを脱いだ。
「ふぅー、キャップも暑いんだよね」
「意外と、帽子って暑いって知ったよ。蒸れるのかな」
「そうだね。お父さんとかほわーって湯気出てたりしたよ」
「マジで?」
想像したらおかしくて、二人で笑った。
美瑛ちゃんはパーカーのポケットから何かを出すと、僕に手渡した。
「なにこれ?」
「クッキー焼いたの。あとで、皆には持っていくけど先に食べよう」
赤いジャムが挟まったクッキーが可愛い袋の中に入っていた。
女の子だな……今更ながら僕は隣に座っている美瑛ちゃんを見た。
美瑛ちゃんは細くて華奢だけど、マシュマロみたいに柔らかくて、ふわふわしている感じがする。
「何?」
「いや、男子校だからこういう手作りのお菓子とか新鮮で」
「バレンタインデーにもらわないの?」
「ば、バレンタインデーなんて、無い! 無い! モテる先輩は校門の前や駅で出待ちされているのは見たことあるけど……」
相馬先輩や、他の先輩の顔がチラついた。
「そうなんだ。じゃあ、来年のバレンタインデーには私が島谷くんに作ってあげるね」
「えー!」
僕のリアクションがオーバーだったのか、美瑛ちゃんが目を見開いて僕の顔をまじまじと見た。
「な、何?」
「島谷くんって、可愛いねって思って」
「は? 可愛いのは美瑛ちゃんでしょ! って、あ……」
墓穴を掘った。
暑いけど、それ以上に違う汗が全身から流れてきそうだ。
「ありがと。島谷くんとだと同じ目線で話せてる気がする」
「……同じ目線? そうかも。たぶん、それは僕が美瑛ちゃんの悩んでいることに似たような経験をしているからかな。だから、共感してるのかもね」
「共感?」
先生が萱にも話しておいた方がいいと言ってくれたから。
「なるほどね。しかし、陰険だな、校長も戸谷も。絶対、校長にチクったのは戸谷だよ。自分が不利になると思って、探偵でも雇ったのかもな」
「そこまで、するのかな」
「お前さあ、少しは人のことを疑えよ。戸谷だよ、お前にセクハラしてるサイテーな奴だよ。自分の身を守るためならどんな手だって使うだろ。結局、塚田先生は被害者だよな」
どうして、同僚に対してそこまで憎んだり、酷いことが出来るのか理解ができなかった。
ただ、僕はそんな狂気めいた人に、執着されているという事実に身体が震えた。
「本気で、お前も身を守らなきゃいけなくなったな」
「うん。どうしよう……」
「……あの録音は使えるな」
でも、職員室の会話を録音した音声しかないとも言えた。
しかも、あの時職員室には他の先生もいたのに、僕や萱が大きな声をだしても完全に無視していた。
それが怖い……
「で、いつ帰ることにしたんだ?」
「うん……そろそろお母さんからまた電話が来そうな気がする。あと、一週間は無理だよね」
「正直に話すのか? 俺の家にいるんじゃなくて、塚田先生のところにいるって」
萱が、珍しく眉間に皺を寄せていた。
ここは、真剣に考えないといけない。
絶対に、先生を悪者にするわけにはいかなかった。
「僕は何を言われても、覚悟ができてるけど、萱や塚田先生にとばっちりがいくのは絶対に避けたい。だから、萱は僕のことが心配で、ついてきたってことにして」
「俺のことはどうでもいいからさ。塚田先生だけは守ろうぜ!」
萱の力強い言葉に、僕は励まされた。
朝の収穫に、美瑛ちゃんが来た。
僕は、昨日の今日でどういう顔をしていいかわからなかった。
距離は近づいた気がしているけど、でも、昨日萱に揶揄われたこともあって、妙に意識してしまう。
萱は、少し離れたところでニヤニヤしているのが見える。
僕は声を出さず、口の動きだけで萱に対して文句を垂れていた。
「おはよう。島谷くん、今日もあそこで話さない?」
「おはようー。え、うん。いいよ」
キャップを被ったままではあったけど、僕の答えに白い歯を出して微笑んだ。
僕は嬉しいという気持ちを誤魔化すために、いびつな顔で笑っていた。
隣で作業を続ける美瑛ちゃんがキラキラしていて、今の僕には眩しすぎた。
🔸🔸🔸
昼食の前に、二人で昨日の林に行った。
やっぱり、空気が違う。
この心地よさを上手く表現できない自分が恨めしい。
萱だったら、的確な言葉で表現するんだろうな……
美瑛ちゃんは、昨日と同じ石に座るとキャップを脱いだ。
「ふぅー、キャップも暑いんだよね」
「意外と、帽子って暑いって知ったよ。蒸れるのかな」
「そうだね。お父さんとかほわーって湯気出てたりしたよ」
「マジで?」
想像したらおかしくて、二人で笑った。
美瑛ちゃんはパーカーのポケットから何かを出すと、僕に手渡した。
「なにこれ?」
「クッキー焼いたの。あとで、皆には持っていくけど先に食べよう」
赤いジャムが挟まったクッキーが可愛い袋の中に入っていた。
女の子だな……今更ながら僕は隣に座っている美瑛ちゃんを見た。
美瑛ちゃんは細くて華奢だけど、マシュマロみたいに柔らかくて、ふわふわしている感じがする。
「何?」
「いや、男子校だからこういう手作りのお菓子とか新鮮で」
「バレンタインデーにもらわないの?」
「ば、バレンタインデーなんて、無い! 無い! モテる先輩は校門の前や駅で出待ちされているのは見たことあるけど……」
相馬先輩や、他の先輩の顔がチラついた。
「そうなんだ。じゃあ、来年のバレンタインデーには私が島谷くんに作ってあげるね」
「えー!」
僕のリアクションがオーバーだったのか、美瑛ちゃんが目を見開いて僕の顔をまじまじと見た。
「な、何?」
「島谷くんって、可愛いねって思って」
「は? 可愛いのは美瑛ちゃんでしょ! って、あ……」
墓穴を掘った。
暑いけど、それ以上に違う汗が全身から流れてきそうだ。
「ありがと。島谷くんとだと同じ目線で話せてる気がする」
「……同じ目線? そうかも。たぶん、それは僕が美瑛ちゃんの悩んでいることに似たような経験をしているからかな。だから、共感してるのかもね」
「共感?」



