夕飯には、美瑛ちゃんも来ていた。
家で大量に作ったという、ポテトサラダを持参して。
「一緒に食べていけよ。よしかずがカレーを大量に作り過ぎたから、美瑛ちゃんにも助けて欲しいのが本音だけどな」
「塚さんはまるで僕が悪いように言う」
「拗ねるな。拗ねると島谷に突っ込まれるからな」
「は? どうして僕が出てくるんですか!」
さっきのやり取りから、先生に反撃された。
先生とよしかずさんは、僕を見ながら楽しそうに笑っていた。
萱は美瑛ちゃんと、何かについて話しこんでいる。
僕はそれを見て、ちょっとハブされているような気持ちになった。
でも、その二人の間に入っていくのも嫌だった。
お皿やスプーンをテーブルに並べて、気にしないように振る舞った。
いつの間にか、隣によしかずさんが立っていて、僕はぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「いいよ、そんなことしないで。あっちで会話に入れば?」
「え? いや、いいです」
「どうして? 美瑛ちゃんは島谷くんとも話したいと思うよ」
「は?」
よしかずさんは、僕ににんまりとした笑顔を向けるとその場から離れてキッチンに戻った。
え、わざわざアドバイスをしてくれたってこと?
塚田先生とよしかずさんは、鍋の蓋を開けて楽しそうに話してる。
一方、萱と美瑛ちゃんは一方的に萱が話しているように見えるけど、美瑛ちゃんは頷きながら聞いている。
この部屋で僕だけがボッチだった……
コミュ障じゃない、ただ会話の糸口を見つけるのが下手なだけ。
大人しいから戸谷先生に付け入れられた……というのも間違ってはいない。
そんなことを、悶々と思っていると、美瑛ちゃんが僕の方を見ていた。
僕においでおいでと手で招いている。
僕?
僕はゆっくりと、萱と美瑛ちゃんの元へ近づくと、萱は美瑛ちゃんにスマホの画面を見せていた。
え……これって。
「美瑛ちゃんに見せてたの、お前のFacebookにアップしていた絵。前に先生から見せてもらったことがあるらしいけど、アカウント持ってないっていうからさ」
「そうなの?」
美瑛ちゃんはこくんと頷いた。
「お前、ファンを大事にしろよ。一高校生の絵にこれだけ興味を持ってくれるなんてありがてーことないからな!」
「え、エラそうに……」
「……傘の絵じゃないのもあった」
「ああ、うん。傘の絵は最近描いたものだから」
「俺は、この絵が一番好き」
萱がピンチアウトしたのは、高校一年生の時に描いた校舎と校舎に繋がる道を回廊に見立てて描いた油絵。
受験に合格した安堵感と、実際に入学してからのギャップを表現した、自分でも気に入っている作品。
「学校に対する複雑な思いを表現してるなって思ってさ」
「萱は鋭い!」
僕の言葉に、萱は片方の口角を上げた。
「……学校は嫌い。でも、私もこの絵は好き」
「……美瑛ちゃんは高校に行ってないの?」
もっと慎重に聞くべきことだとは思ったけど、会話の流れとして自然に口から出ていた。
「食べるぞー。席について」
タイミングが良いのか、悪いのか。
先生の合図で、会話は途切れた。
僕はもっと、美瑛ちゃんの話を聞きたかった。
でも、聞いていいのかわからなかった。
「島谷がどんな絵を完成して東京に戻るのか楽しみだなー」
「お? 柚、絵を描く気になったか?」
「うん。二階にすごく立派なアトリエがあったよ」
カレーを頬張っていると、いきなり塚田先生が絵のことを話題に出した。
僕は、その言葉で描かざるを得ない状況に追い込まれたような気もした。
「島谷くんがどんな絵を描くのか楽しみだな。ね、美瑛ちゃん」
よしかずさんが、美瑛ちゃんに同意を促すと黙って頷いた。
「まあ、周りの声をプレッシャーとは感じずに自分の好きに表現しろよ」
「プレッシャーかけてるのは、先生です!」
「そっか? ああ、悪かったなー」
先生は豪快に笑うと、カレーのお代わりに席を立った。
自然も、人も、物も、題材になるものは山ほどあるけど、本当に僕が描きたいものは何なんだろう……
家で大量に作ったという、ポテトサラダを持参して。
「一緒に食べていけよ。よしかずがカレーを大量に作り過ぎたから、美瑛ちゃんにも助けて欲しいのが本音だけどな」
「塚さんはまるで僕が悪いように言う」
「拗ねるな。拗ねると島谷に突っ込まれるからな」
「は? どうして僕が出てくるんですか!」
さっきのやり取りから、先生に反撃された。
先生とよしかずさんは、僕を見ながら楽しそうに笑っていた。
萱は美瑛ちゃんと、何かについて話しこんでいる。
僕はそれを見て、ちょっとハブされているような気持ちになった。
でも、その二人の間に入っていくのも嫌だった。
お皿やスプーンをテーブルに並べて、気にしないように振る舞った。
いつの間にか、隣によしかずさんが立っていて、僕はぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「いいよ、そんなことしないで。あっちで会話に入れば?」
「え? いや、いいです」
「どうして? 美瑛ちゃんは島谷くんとも話したいと思うよ」
「は?」
よしかずさんは、僕ににんまりとした笑顔を向けるとその場から離れてキッチンに戻った。
え、わざわざアドバイスをしてくれたってこと?
塚田先生とよしかずさんは、鍋の蓋を開けて楽しそうに話してる。
一方、萱と美瑛ちゃんは一方的に萱が話しているように見えるけど、美瑛ちゃんは頷きながら聞いている。
この部屋で僕だけがボッチだった……
コミュ障じゃない、ただ会話の糸口を見つけるのが下手なだけ。
大人しいから戸谷先生に付け入れられた……というのも間違ってはいない。
そんなことを、悶々と思っていると、美瑛ちゃんが僕の方を見ていた。
僕においでおいでと手で招いている。
僕?
僕はゆっくりと、萱と美瑛ちゃんの元へ近づくと、萱は美瑛ちゃんにスマホの画面を見せていた。
え……これって。
「美瑛ちゃんに見せてたの、お前のFacebookにアップしていた絵。前に先生から見せてもらったことがあるらしいけど、アカウント持ってないっていうからさ」
「そうなの?」
美瑛ちゃんはこくんと頷いた。
「お前、ファンを大事にしろよ。一高校生の絵にこれだけ興味を持ってくれるなんてありがてーことないからな!」
「え、エラそうに……」
「……傘の絵じゃないのもあった」
「ああ、うん。傘の絵は最近描いたものだから」
「俺は、この絵が一番好き」
萱がピンチアウトしたのは、高校一年生の時に描いた校舎と校舎に繋がる道を回廊に見立てて描いた油絵。
受験に合格した安堵感と、実際に入学してからのギャップを表現した、自分でも気に入っている作品。
「学校に対する複雑な思いを表現してるなって思ってさ」
「萱は鋭い!」
僕の言葉に、萱は片方の口角を上げた。
「……学校は嫌い。でも、私もこの絵は好き」
「……美瑛ちゃんは高校に行ってないの?」
もっと慎重に聞くべきことだとは思ったけど、会話の流れとして自然に口から出ていた。
「食べるぞー。席について」
タイミングが良いのか、悪いのか。
先生の合図で、会話は途切れた。
僕はもっと、美瑛ちゃんの話を聞きたかった。
でも、聞いていいのかわからなかった。
「島谷がどんな絵を完成して東京に戻るのか楽しみだなー」
「お? 柚、絵を描く気になったか?」
「うん。二階にすごく立派なアトリエがあったよ」
カレーを頬張っていると、いきなり塚田先生が絵のことを話題に出した。
僕は、その言葉で描かざるを得ない状況に追い込まれたような気もした。
「島谷くんがどんな絵を描くのか楽しみだな。ね、美瑛ちゃん」
よしかずさんが、美瑛ちゃんに同意を促すと黙って頷いた。
「まあ、周りの声をプレッシャーとは感じずに自分の好きに表現しろよ」
「プレッシャーかけてるのは、先生です!」
「そっか? ああ、悪かったなー」
先生は豪快に笑うと、カレーのお代わりに席を立った。
自然も、人も、物も、題材になるものは山ほどあるけど、本当に僕が描きたいものは何なんだろう……



