相変わらず、萱は家に連絡をいれているようには見えなかった。
夕飯を食べて、部屋の中でくつろいでいる時、僕のスマホが鳴った。
「げっ! お母さんから電話だ!」
「まだ2日だぞ?」
「出ないと、マズいよな……」
「出ろ、出ろ。俺が途中で変わって上手いように説明してやる」
僕はスマホを耳に当てると電話に出た。
「もしもし」
『もしもし。ねえ、今日も萱くんの家に泊るの? 毎日連絡しなさいって言ったでしょ。二人で何してるの? さっき、あんたの部屋に入ったらクローゼットの中のTシャツとか減っていたけど、持ち出してるの?』
くどくどと、ウルさい!
なんて思っていても、言えるわけがない。
親の干渉ほど、面倒なものはない……と実感した。
目の前にいる萱は、ニヤニヤ笑っていて、なんだかそれすらも僕をイラつかせた。
「勝手に部屋に入らないでよ! そうだよ、一週間ぐらい萱の家に居るつもりだから!」
『何言ってるの! 迷惑でしょ。それにご飯とかどうしてるの? 勉強はどうするつもりなの?』
萱がスマホをよこせと手で合図を送る。
僕は、そのまま渡すと、萱がスピーカーにした。
「もしもし。おばさんこんばんは」
『ああ、萱くん。ごめんなさいね、迷惑かけて。萱くんも勉強忙しいでしょ、もう柚のこと追い出していいわよ』
「いえ、僕は大丈夫です。ちょうど、ウチの親がアメリカに行っていて僕ひとりで寂しかったので、柚がいてくれて助かってます。柚もどの予備校に行こうか悩んでいたので、その相談も兼ねて、二人で勉強しているので心配しないでください」
優等生な発言。
萱のこういうところは、尊敬する。
いつもは、くだらないことばっかり言ってるくせに。
『そうなの? ご飯とかはどうしてるの? 何か作って持っていこうかしら?』
僕は大きく手を振って、ダメダメと合図した。
でも、普通に考えて萱の家と僕の家は電車で30分ぐらい離れている場所だから、無理な話だけど。
「大丈夫です。僕、これでも料理は作れるんですよ。なので、ご心配なく。あ、柚に変わりますね」
お母さんにこれ以上余計なことを言わせる前に、僕に変わらせた。
「わかった? 何の問題もないから」
『わかったけど、くれぐれも迷惑かけないでね。きちんと勉強するのよ』
「はい、はい。じゃあね」
僕もお母さんにこれ以上何か言わせる前に、電話を切った。
萱は、ジェスチャーでセーフと見せた。
「やっぱ、萱はスゴいな。あれじゃ、お母さんも何も反論できないよ」
「だろ? 俺って上手いのよー。何をどう言えば、大人が納得するか熟知してっからさ」
「……校長に呼ばれた時に、萱もいてくれたら少しは風向きが変わったのかもな。ただでさえ、僕よりも学校からは信頼されてる生徒だし」
「かもなー。だから早く俺に言えばよかったのに」
萱は、テーブルの上にノートを広げた。
「え、勉強始めるの?」
「いや。さっき、よしかずさんから習った中国語の復習しようかなって。よしかずさん、いい人だよなー。日本語も全く問題ないし。優しいし、ちょっとイケメンだし」
「イケメン? そうだね。塚田先生と並んでいると美女と野獣みたい」
「そう、そんな感じだな。でも、俺はあの二人は何かあると踏んでいる」
萱が、シャーペンを握りしめると、何かを確信したような表情を浮かべた。
「何、その顔? 何かあるって、なんだよ?」
「ん? まあ、子供の柚にはちょっと刺激が強すぎるかなー」
「はぁ? 何言ってんの? なんなんだよ、教えろよ!」
「まあ、いいから、いいから」
萱は手をひらひらとさせると、そのままノートに視線を落した。
僕は軽くあしらわれた。
それにしても、よしかずさんにも、美瑛ちゃんにも、傘について言及されたことが気になった。
それに、様々な絵を描いていたのに、先生が二人に見せたのが傘の絵だけだったのも。
「柚……」
「うん?」
「お前、絵描けよ」
「絵?」
「そう。どうせ勉強する気ないならさ、ここにいる間に絵を一枚でも完成させれば、夏休みの自由研究になるだろ」
「自由研究って、小学生じゃないんだぞ! ふざけんなっ」
「はは。ムキになっておもれー」
萱は僕をからかって、笑っているが、僕はその言葉に心が揺れた。
「先生がここで暮らすつもりで来たんなら、絵の道具ぐらい持ってきてんだろ」
萱も、よしかずさんも美瑛ちゃんも、僕の絵に触れる。
「そうだね……」
一階から、先生の風呂入れという大きな声が聞こえていた。
夕飯を食べて、部屋の中でくつろいでいる時、僕のスマホが鳴った。
「げっ! お母さんから電話だ!」
「まだ2日だぞ?」
「出ないと、マズいよな……」
「出ろ、出ろ。俺が途中で変わって上手いように説明してやる」
僕はスマホを耳に当てると電話に出た。
「もしもし」
『もしもし。ねえ、今日も萱くんの家に泊るの? 毎日連絡しなさいって言ったでしょ。二人で何してるの? さっき、あんたの部屋に入ったらクローゼットの中のTシャツとか減っていたけど、持ち出してるの?』
くどくどと、ウルさい!
なんて思っていても、言えるわけがない。
親の干渉ほど、面倒なものはない……と実感した。
目の前にいる萱は、ニヤニヤ笑っていて、なんだかそれすらも僕をイラつかせた。
「勝手に部屋に入らないでよ! そうだよ、一週間ぐらい萱の家に居るつもりだから!」
『何言ってるの! 迷惑でしょ。それにご飯とかどうしてるの? 勉強はどうするつもりなの?』
萱がスマホをよこせと手で合図を送る。
僕は、そのまま渡すと、萱がスピーカーにした。
「もしもし。おばさんこんばんは」
『ああ、萱くん。ごめんなさいね、迷惑かけて。萱くんも勉強忙しいでしょ、もう柚のこと追い出していいわよ』
「いえ、僕は大丈夫です。ちょうど、ウチの親がアメリカに行っていて僕ひとりで寂しかったので、柚がいてくれて助かってます。柚もどの予備校に行こうか悩んでいたので、その相談も兼ねて、二人で勉強しているので心配しないでください」
優等生な発言。
萱のこういうところは、尊敬する。
いつもは、くだらないことばっかり言ってるくせに。
『そうなの? ご飯とかはどうしてるの? 何か作って持っていこうかしら?』
僕は大きく手を振って、ダメダメと合図した。
でも、普通に考えて萱の家と僕の家は電車で30分ぐらい離れている場所だから、無理な話だけど。
「大丈夫です。僕、これでも料理は作れるんですよ。なので、ご心配なく。あ、柚に変わりますね」
お母さんにこれ以上余計なことを言わせる前に、僕に変わらせた。
「わかった? 何の問題もないから」
『わかったけど、くれぐれも迷惑かけないでね。きちんと勉強するのよ』
「はい、はい。じゃあね」
僕もお母さんにこれ以上何か言わせる前に、電話を切った。
萱は、ジェスチャーでセーフと見せた。
「やっぱ、萱はスゴいな。あれじゃ、お母さんも何も反論できないよ」
「だろ? 俺って上手いのよー。何をどう言えば、大人が納得するか熟知してっからさ」
「……校長に呼ばれた時に、萱もいてくれたら少しは風向きが変わったのかもな。ただでさえ、僕よりも学校からは信頼されてる生徒だし」
「かもなー。だから早く俺に言えばよかったのに」
萱は、テーブルの上にノートを広げた。
「え、勉強始めるの?」
「いや。さっき、よしかずさんから習った中国語の復習しようかなって。よしかずさん、いい人だよなー。日本語も全く問題ないし。優しいし、ちょっとイケメンだし」
「イケメン? そうだね。塚田先生と並んでいると美女と野獣みたい」
「そう、そんな感じだな。でも、俺はあの二人は何かあると踏んでいる」
萱が、シャーペンを握りしめると、何かを確信したような表情を浮かべた。
「何、その顔? 何かあるって、なんだよ?」
「ん? まあ、子供の柚にはちょっと刺激が強すぎるかなー」
「はぁ? 何言ってんの? なんなんだよ、教えろよ!」
「まあ、いいから、いいから」
萱は手をひらひらとさせると、そのままノートに視線を落した。
僕は軽くあしらわれた。
それにしても、よしかずさんにも、美瑛ちゃんにも、傘について言及されたことが気になった。
それに、様々な絵を描いていたのに、先生が二人に見せたのが傘の絵だけだったのも。
「柚……」
「うん?」
「お前、絵描けよ」
「絵?」
「そう。どうせ勉強する気ないならさ、ここにいる間に絵を一枚でも完成させれば、夏休みの自由研究になるだろ」
「自由研究って、小学生じゃないんだぞ! ふざけんなっ」
「はは。ムキになっておもれー」
萱は僕をからかって、笑っているが、僕はその言葉に心が揺れた。
「先生がここで暮らすつもりで来たんなら、絵の道具ぐらい持ってきてんだろ」
萱も、よしかずさんも美瑛ちゃんも、僕の絵に触れる。
「そうだね……」
一階から、先生の風呂入れという大きな声が聞こえていた。



