農作業をする人の夜は早い。
と聞いたことがあったけど、夕飯が終わると、先生たちは風呂に入って寝るからと言われて、僕と萱も自分たちの部屋に戻った。
時間はまだ、8時だ。
「流石に、はえーよな……」
「でも疲れたから、すぐにでも寝られそうだけど」
「……美瑛ちゃんは幾つなんだろうな? 俺らぐらいに見えたよな?」
萱はスマホをいじりながら、さりげなく女の子の話を出した。
「そういえば、萱は免疫あるんだもんな」
「免疫ってなにが?」
「その……」
「ああ、女子と? まあな、今年の3月までは彼女はいたしな」
萱は高校一年の時にディベート大会で知り合った他校の一つ年上の女の子と付き合っていた。
でも、いつの間にか別れていた。
「でも、お前も中学の時に好きな子がいたって話してくれたじゃん」
「まあ、好きな子はね。一応、デートみたいなのはしたけど、結局僕が受験に追われて気が付いたら他のやつと付き合っていた」
「お前はモテそうなのに、その石橋を叩き割っちゃうぐらいの慎重さが仇となってるよなー」
「なにを、エラそうに!」
萱の分析は間違ってはいないけど……
「さっきの子に興味持ったのか?」
「ん? 家出してきた先で女の子と知り合うってちょっと漫画の世界みたいでさ、キュンキュンするけど。でもまあ、俺はパスだな」
萱はベッドに大の字に寝ると、両手を頭の後ろで組んだ。
「どうして? 熱く語るのかと思ったけど」
「いや、非効率じゃん。ここで知り合って先があると思うか? 清里だよ? 遠距離とか無理、無理」
いきなり付き合うという話に飛躍して、それを否定する。
しかも、恋愛を効率か非効率かで推し量るのが萱らしい。
僕はそこまで考えていないけど……
「それに、なんか訳ありっぽいじゃん。俺たちに顔を向けなかったし、無視されたし。俺は地雷踏みたくないわー」
「地雷か……」
萱の分析が面白いと思っていると、LINEの着信音がした。
「……お母さんだ」
「もう? まだ8時だぞ」
僕は今の今まで親のことなんて、忘れ去っていた。
スマホを握る手が、少し震えた。
「マズい……」
「俺と一緒にいて、俺の家に泊まるって返しておけよ」
「え、でもそしたら萱の両親にお世話になりますって電話するっていいだすよ」
「じゃあ、夏休みで俺の親は兄さんがいるアメリカに会いに行ってるからって言え!」
「え?」
萱のお兄さんがアメリカの大学にいるのは事実だし、確かに親が夏休みに会いに行くのは筋道が立ってはいるけど……
「早く、絶対バレないから安心しろ」
「お前はどう言い訳するんだよ」
「……俺はどうとでもなるから」
萱の声のトーンが変わった。この前感じた時と同じように、乾いた響きに。
――萱の家に泊まる。予備校の相談にも乗ってもらってるし、実際に予備校でやっている数学の問題も解かせてもらってるから。お父さんたちはアメリカにいるお兄さんのところに行っていて不在なんだ
これをお母さんが信じるかは、わからなかった。
でも、疑う理由もない。
――二人だけで大丈夫なの? 泊まるなら泊まると事前に言いなさい。明日は帰って来るのね?
――わからない。萱もひとりで寂しそうだから何日かいるかも
――そんな勝手なことして。毎日連絡をいれなさいよ。夏休みだからってハメを外さないでね
僕は、お母さんとのLINEのやりとりを萱に見せた。
「まあ、親の定型文って感じだな。これで当分は誤魔化せるだろ」
「ホントに、萱は大丈夫なのか?」
「気にすんな。明日は5時に起きなくちゃいけないんだろ? 寝ようぜ」
萱に話を打ち切られた。
電気を消して、キングサイズのベッドに二人並んで寝る。
詮索する気はないけど、でも萱のことが気になって、目をつむってもなかなか寝付けなった。
と聞いたことがあったけど、夕飯が終わると、先生たちは風呂に入って寝るからと言われて、僕と萱も自分たちの部屋に戻った。
時間はまだ、8時だ。
「流石に、はえーよな……」
「でも疲れたから、すぐにでも寝られそうだけど」
「……美瑛ちゃんは幾つなんだろうな? 俺らぐらいに見えたよな?」
萱はスマホをいじりながら、さりげなく女の子の話を出した。
「そういえば、萱は免疫あるんだもんな」
「免疫ってなにが?」
「その……」
「ああ、女子と? まあな、今年の3月までは彼女はいたしな」
萱は高校一年の時にディベート大会で知り合った他校の一つ年上の女の子と付き合っていた。
でも、いつの間にか別れていた。
「でも、お前も中学の時に好きな子がいたって話してくれたじゃん」
「まあ、好きな子はね。一応、デートみたいなのはしたけど、結局僕が受験に追われて気が付いたら他のやつと付き合っていた」
「お前はモテそうなのに、その石橋を叩き割っちゃうぐらいの慎重さが仇となってるよなー」
「なにを、エラそうに!」
萱の分析は間違ってはいないけど……
「さっきの子に興味持ったのか?」
「ん? 家出してきた先で女の子と知り合うってちょっと漫画の世界みたいでさ、キュンキュンするけど。でもまあ、俺はパスだな」
萱はベッドに大の字に寝ると、両手を頭の後ろで組んだ。
「どうして? 熱く語るのかと思ったけど」
「いや、非効率じゃん。ここで知り合って先があると思うか? 清里だよ? 遠距離とか無理、無理」
いきなり付き合うという話に飛躍して、それを否定する。
しかも、恋愛を効率か非効率かで推し量るのが萱らしい。
僕はそこまで考えていないけど……
「それに、なんか訳ありっぽいじゃん。俺たちに顔を向けなかったし、無視されたし。俺は地雷踏みたくないわー」
「地雷か……」
萱の分析が面白いと思っていると、LINEの着信音がした。
「……お母さんだ」
「もう? まだ8時だぞ」
僕は今の今まで親のことなんて、忘れ去っていた。
スマホを握る手が、少し震えた。
「マズい……」
「俺と一緒にいて、俺の家に泊まるって返しておけよ」
「え、でもそしたら萱の両親にお世話になりますって電話するっていいだすよ」
「じゃあ、夏休みで俺の親は兄さんがいるアメリカに会いに行ってるからって言え!」
「え?」
萱のお兄さんがアメリカの大学にいるのは事実だし、確かに親が夏休みに会いに行くのは筋道が立ってはいるけど……
「早く、絶対バレないから安心しろ」
「お前はどう言い訳するんだよ」
「……俺はどうとでもなるから」
萱の声のトーンが変わった。この前感じた時と同じように、乾いた響きに。
――萱の家に泊まる。予備校の相談にも乗ってもらってるし、実際に予備校でやっている数学の問題も解かせてもらってるから。お父さんたちはアメリカにいるお兄さんのところに行っていて不在なんだ
これをお母さんが信じるかは、わからなかった。
でも、疑う理由もない。
――二人だけで大丈夫なの? 泊まるなら泊まると事前に言いなさい。明日は帰って来るのね?
――わからない。萱もひとりで寂しそうだから何日かいるかも
――そんな勝手なことして。毎日連絡をいれなさいよ。夏休みだからってハメを外さないでね
僕は、お母さんとのLINEのやりとりを萱に見せた。
「まあ、親の定型文って感じだな。これで当分は誤魔化せるだろ」
「ホントに、萱は大丈夫なのか?」
「気にすんな。明日は5時に起きなくちゃいけないんだろ? 寝ようぜ」
萱に話を打ち切られた。
電気を消して、キングサイズのベッドに二人並んで寝る。
詮索する気はないけど、でも萱のことが気になって、目をつむってもなかなか寝付けなった。



