車の中では、僕は堰を切ったように塚田先生に対して校長先生に呼ばれた日の話をしていた。
あの日のやるせない感情が蘇ってきて、話しながらも声が震えていた。
運転をしている塚田先生は、僕の話を黙って聞いてくれていた。
「校長はサイテーだな。って生徒の前で言うことじゃないけどな。その場に俺がいたら、少しは庇うことができたかもな。悪かったな」
「逆に、先生にご迷惑をかけることになってしまって申し訳ないです。結局、戸谷先生の猿芝居を見せられて終わったかと思うと、やるせないし、頭にくるし、感情がぐちゃぐちゃになりました」
「……校長が戸谷をそれほど庇う理由がよくわからんけど、不適切な対応なのは確かだな」
塚田先生の言葉に力が入ったように思えた。
「大人を信じられなくなるよなー」
「え?」
僕の心を見透かされているようで、思わず先生の顔を見た。
片方の手でハンドルを握り、片方の手は顎髭をなぞっている。
先生は何かを言おうと迷っているようにも見えた。
でも、僕にはそう見えているだけで、実際何を考えているかわからない。
ただ、僕は塚田先生が大人でも信頼していた。
「先生のことは信じられます。だから、来ました。それに……」
「それに?」
「どうして休職になったのかの理由も知りたいです。直接的ではないにせよ、間接的には戸谷先生の件が絡んでいるはずなので」
「子供はそういうことを心配せんでいい」
「心配します! 聞かなければ、僕は一生後悔しそうです」
先生は、ははっと声を出して笑った。
「島谷は真面目だなー。まあ、だからこそ戸谷にとっては良いカモだったのかもな。お前たちがここに滞在している間には話すよ。でも、今じゃない」
「わかりました」
僕はすっかり、窓の外から見える風景が変わっていたことに気づいた。
一面、緑色に染まり、山が幾つも見える。
「ここに居る間は一緒に、農作業をしてもらうからな。そのかわりタダで三食飯、風呂、寝床つきだ」
「はい。覚悟してきました」
僕の答えに、先生は満足そうに頷いた。
🔸🔸🔸
そこは大きなログハウスだった。
小さい頃に旅行で来て泊まったことがあるペンションのようでもあり、誰かの別荘のようにも見えた。
「格好いいな! こんなところで生活しているってスゲーな」
萱は興奮気味に話していた。
確かに、自給自足と聞いてもっと簡素な古い空き家に住んでいるのかと想像していた。
「なんだよ、どうした。掘っ立て小屋にでも住んでると思ったか?」
「はい。正直そう思ってました」
「島谷は正直だなー。ここは、管理をする目的もあってな。まあ、中に入れ」
中に入ると、広いダイニングキッチンがあり、6人ぐらいは座れる大きなダイニングテーブルと、同等の人数が座れそうなソファがあった。
僕と萱は、お風呂やトイレをチェックし、二階のドアが開いていた客間も見に行った。
「スゲーじゃん。ヘンにホテルなんか行くよりも快適じゃね?」
「マジでちょっとビビった。でも、僕たちはここにタダで置いてもらう代わりに農作業を手伝うんだよ」
「そんなの、全然オッケーじゃん。っていうか、塚田に『家出』のこと言ったのか?」
「え? 言ってない……」
「まだ、隠しておこうぜ」
萱は大して気にしていない風に見える。
でも僕は、快適な宿を提供してもらうのに、本当のことを言わないのは悪い気がしてきた。
いつまで隠し通せるかはわからないけど、『今じゃない』。
さっき、車の中で先生が言った言葉を僕にも当てはめた。
それぞれ、隠したいことがあるんだ。
あの日のやるせない感情が蘇ってきて、話しながらも声が震えていた。
運転をしている塚田先生は、僕の話を黙って聞いてくれていた。
「校長はサイテーだな。って生徒の前で言うことじゃないけどな。その場に俺がいたら、少しは庇うことができたかもな。悪かったな」
「逆に、先生にご迷惑をかけることになってしまって申し訳ないです。結局、戸谷先生の猿芝居を見せられて終わったかと思うと、やるせないし、頭にくるし、感情がぐちゃぐちゃになりました」
「……校長が戸谷をそれほど庇う理由がよくわからんけど、不適切な対応なのは確かだな」
塚田先生の言葉に力が入ったように思えた。
「大人を信じられなくなるよなー」
「え?」
僕の心を見透かされているようで、思わず先生の顔を見た。
片方の手でハンドルを握り、片方の手は顎髭をなぞっている。
先生は何かを言おうと迷っているようにも見えた。
でも、僕にはそう見えているだけで、実際何を考えているかわからない。
ただ、僕は塚田先生が大人でも信頼していた。
「先生のことは信じられます。だから、来ました。それに……」
「それに?」
「どうして休職になったのかの理由も知りたいです。直接的ではないにせよ、間接的には戸谷先生の件が絡んでいるはずなので」
「子供はそういうことを心配せんでいい」
「心配します! 聞かなければ、僕は一生後悔しそうです」
先生は、ははっと声を出して笑った。
「島谷は真面目だなー。まあ、だからこそ戸谷にとっては良いカモだったのかもな。お前たちがここに滞在している間には話すよ。でも、今じゃない」
「わかりました」
僕はすっかり、窓の外から見える風景が変わっていたことに気づいた。
一面、緑色に染まり、山が幾つも見える。
「ここに居る間は一緒に、農作業をしてもらうからな。そのかわりタダで三食飯、風呂、寝床つきだ」
「はい。覚悟してきました」
僕の答えに、先生は満足そうに頷いた。
🔸🔸🔸
そこは大きなログハウスだった。
小さい頃に旅行で来て泊まったことがあるペンションのようでもあり、誰かの別荘のようにも見えた。
「格好いいな! こんなところで生活しているってスゲーな」
萱は興奮気味に話していた。
確かに、自給自足と聞いてもっと簡素な古い空き家に住んでいるのかと想像していた。
「なんだよ、どうした。掘っ立て小屋にでも住んでると思ったか?」
「はい。正直そう思ってました」
「島谷は正直だなー。ここは、管理をする目的もあってな。まあ、中に入れ」
中に入ると、広いダイニングキッチンがあり、6人ぐらいは座れる大きなダイニングテーブルと、同等の人数が座れそうなソファがあった。
僕と萱は、お風呂やトイレをチェックし、二階のドアが開いていた客間も見に行った。
「スゲーじゃん。ヘンにホテルなんか行くよりも快適じゃね?」
「マジでちょっとビビった。でも、僕たちはここにタダで置いてもらう代わりに農作業を手伝うんだよ」
「そんなの、全然オッケーじゃん。っていうか、塚田に『家出』のこと言ったのか?」
「え? 言ってない……」
「まだ、隠しておこうぜ」
萱は大して気にしていない風に見える。
でも僕は、快適な宿を提供してもらうのに、本当のことを言わないのは悪い気がしてきた。
いつまで隠し通せるかはわからないけど、『今じゃない』。
さっき、車の中で先生が言った言葉を僕にも当てはめた。
それぞれ、隠したいことがあるんだ。



