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『……じゃあ』
「うん」
『俺たちって……付き合うってことで、いいんかな』
「……たぶん」
『たぶん?』
「いや、俺もよく分からん」
『……俺も』
2人で顔を見合わせる。
さっきまであんなに真剣に話していたのに。
いざ「付き合う」という言葉を口にすると、
急に現実味がなくなった。
『……よろしく』
「……うん、よろしく」
それだけ言って、また黙る。
付き合うことになった。
たぶん。
……いや、なったんだと思う。
でも、何をすればいいのかなんて、全然分からない。
結局そのあと30分くらい。
俺たちは文化祭を回った。
……回った、というか、
ほとんど何も頭に入ってこなかった。
『あ、あれ見て』
「うん」
『……』
「……」
『なに話してたんだったっけ、今』
「え?なんやろ」
そんなことを繰り返しながら、さっきまでとは少し違う距離で歩いた。
隣にいるのは、いつもと同じ深町なのに。
意識すると、どうしていいか分からなくなる。
そんな妙な時間を過ごしていると、スマホが震えた。
グループメッセージだった。
【久世:みんなどこいる?】
続けて、
【久世:俺のクラス来てよ】
【久世:せっかくだし模擬店も寄ってって】
『……慧からだ』
ちなみに模擬店は「夏祭り」をテーマにしたカフェらしい。
スーパーボールすくい、ヨーヨー釣りや、
輪投げを楽しめるコーナーと、
ジュースとわたあめを座って楽しめるカフェコーナーとで分かれてるらしい。
「あ、長谷部も行くって」
【長谷部:今から向かう】
【久世:おっけー!】
『俺らも行こか』
「うん」
歩き出す。
さっきまでなら何も考えずに並んで歩けたはずなのに。
今は、少しだけお互いを意識してしまう。
それでも。
隣に深町がいることが、なんとなく嬉しかった。
久世のクラスの前まで来ると、ちょうど向こうから長谷部が歩いてきた。
「お、いたいた」
「長谷部」
「2人ともどこ行ってたん?」
『ちょっとブラブラしてた』
「そっか。じゃ、行こうぜ」
3人で教室へ向かう。
扉を開けた瞬間。
「お!来たなー!」
背中に大きく【祭】と書かれた法被を着た慧が、満面の笑みで出迎えてくれた。
「なんかやる?」
いつもよりテンションが高い。
『……なんかあった?』
「聞いちゃう?聞いちゃうんだな?!」
『あ、じゃあいいです』
「え、待って待って!聞いて!」
慧が慌てて、俺らに一歩近寄ってくる。
「なんと!」
一拍置いて。
「女子と連絡先、交換しちゃったんだな〜!」
嬉しそうにスマホを掲げる。
『……』
もしかして。
志賀さんかな。
良かった。
ちゃんと、砕けずに済んだんだ。
「よかったな」
「しかも、あっちから言ってくれたんだよ?」
「へぇ」
「俺にも春、来ちゃったわ」
「……夏やけどな」
「まぁまぁ、それは置いといて!」
慧は楽しそうに笑っている。
頭良いし、顔もまぁまぁらしいし?昔からそれなりにモテているくせに。
こういうことには驚くほど鈍感な男が、こんなにも嬉しそうにしている。
なんだか、こっちまで嬉しくなった。
『ほんとよかったね!』
「だろ?」
『ちゃんと終わったら連絡返しなよ?相手も頑張ったんだろうから』
「分かってるって」
『絶対だよ?』
「分かってるってば」
慧は笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。
「てか、ほんと弦だけだわ〜喜んでくれるの!」
そう言って、勢いよく抱きつこうとしてくる。
その瞬間。
バッ。
俺と慧の間に、深町が入った。
「抱きつくな」
慧の右肩を掴んで、ぐっと止めている。
「えーー!いいじゃん!分かち合わせてよ、この嬉しさ!」
「だめ」
「けち!」
「なんでやねん」
長谷部が呆れたように2人を見る。
そして。
「……なぁ」
『ん?』
「お前ら、もしかして……」
深町と顔を見合わせる。
さっきまでとは違って。
今度は、ちゃんと言えた。
「……まさか?」
「その、まさかやな」
「…マジか!?」
『それが、マジなんです…』
長谷部の目が一気に見開かれる。
「さすがやな、お前には隠せへんわ」
「おー…まじか、いやぁ、そうなったら良いなぁとは思ってたけど」
「え、なになに?!」
慧が慌てて俺らの間に割って入る。
「待って!何の話!?」
『え?』
「俺だけ状況が全然つかめてないんだけど!」
「ふっ」
「どういうこと?教えて?!」
必死な慧を見て、思わず吹き出した。
「久世、ほんまに分かってないん?」
「分かるわけないだろ!」
「いや、まぁ……」
「なんだよ!」
長谷部も笑いながら、慧の肩をぽんと叩く。
「お前はそのままでいいんじゃね?」
「なにそれ?待って待って、わかった!
今のがヒントだろ?」
『…そうだね…うん、そのままでいて(笑)』
「おい〜!弦まで俺を見放すなよ〜!」
教室の中には、文化祭のざわめきと笑い声が溢れていた。
外からは、呼び込みの声が聞こえる。
その中で。
俺は、隣にいる深町をちらっと見た。
目が合う。
ほんの少しだけ、笑ってくれた。
まだ、付き合うってことにも慣れていない。
これからどうなるのかだって、分からない。
それでも。
慧がいて。
長谷部がいて。
隣には、深町がいる。
そんな当たり前みたいな時間が。
これからも続けばいい。
ふと、そんなことを思った。
俺らの夏は、まだ始まったばかりだった。
『……じゃあ』
「うん」
『俺たちって……付き合うってことで、いいんかな』
「……たぶん」
『たぶん?』
「いや、俺もよく分からん」
『……俺も』
2人で顔を見合わせる。
さっきまであんなに真剣に話していたのに。
いざ「付き合う」という言葉を口にすると、
急に現実味がなくなった。
『……よろしく』
「……うん、よろしく」
それだけ言って、また黙る。
付き合うことになった。
たぶん。
……いや、なったんだと思う。
でも、何をすればいいのかなんて、全然分からない。
結局そのあと30分くらい。
俺たちは文化祭を回った。
……回った、というか、
ほとんど何も頭に入ってこなかった。
『あ、あれ見て』
「うん」
『……』
「……」
『なに話してたんだったっけ、今』
「え?なんやろ」
そんなことを繰り返しながら、さっきまでとは少し違う距離で歩いた。
隣にいるのは、いつもと同じ深町なのに。
意識すると、どうしていいか分からなくなる。
そんな妙な時間を過ごしていると、スマホが震えた。
グループメッセージだった。
【久世:みんなどこいる?】
続けて、
【久世:俺のクラス来てよ】
【久世:せっかくだし模擬店も寄ってって】
『……慧からだ』
ちなみに模擬店は「夏祭り」をテーマにしたカフェらしい。
スーパーボールすくい、ヨーヨー釣りや、
輪投げを楽しめるコーナーと、
ジュースとわたあめを座って楽しめるカフェコーナーとで分かれてるらしい。
「あ、長谷部も行くって」
【長谷部:今から向かう】
【久世:おっけー!】
『俺らも行こか』
「うん」
歩き出す。
さっきまでなら何も考えずに並んで歩けたはずなのに。
今は、少しだけお互いを意識してしまう。
それでも。
隣に深町がいることが、なんとなく嬉しかった。
久世のクラスの前まで来ると、ちょうど向こうから長谷部が歩いてきた。
「お、いたいた」
「長谷部」
「2人ともどこ行ってたん?」
『ちょっとブラブラしてた』
「そっか。じゃ、行こうぜ」
3人で教室へ向かう。
扉を開けた瞬間。
「お!来たなー!」
背中に大きく【祭】と書かれた法被を着た慧が、満面の笑みで出迎えてくれた。
「なんかやる?」
いつもよりテンションが高い。
『……なんかあった?』
「聞いちゃう?聞いちゃうんだな?!」
『あ、じゃあいいです』
「え、待って待って!聞いて!」
慧が慌てて、俺らに一歩近寄ってくる。
「なんと!」
一拍置いて。
「女子と連絡先、交換しちゃったんだな〜!」
嬉しそうにスマホを掲げる。
『……』
もしかして。
志賀さんかな。
良かった。
ちゃんと、砕けずに済んだんだ。
「よかったな」
「しかも、あっちから言ってくれたんだよ?」
「へぇ」
「俺にも春、来ちゃったわ」
「……夏やけどな」
「まぁまぁ、それは置いといて!」
慧は楽しそうに笑っている。
頭良いし、顔もまぁまぁらしいし?昔からそれなりにモテているくせに。
こういうことには驚くほど鈍感な男が、こんなにも嬉しそうにしている。
なんだか、こっちまで嬉しくなった。
『ほんとよかったね!』
「だろ?」
『ちゃんと終わったら連絡返しなよ?相手も頑張ったんだろうから』
「分かってるって」
『絶対だよ?』
「分かってるってば」
慧は笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。
「てか、ほんと弦だけだわ〜喜んでくれるの!」
そう言って、勢いよく抱きつこうとしてくる。
その瞬間。
バッ。
俺と慧の間に、深町が入った。
「抱きつくな」
慧の右肩を掴んで、ぐっと止めている。
「えーー!いいじゃん!分かち合わせてよ、この嬉しさ!」
「だめ」
「けち!」
「なんでやねん」
長谷部が呆れたように2人を見る。
そして。
「……なぁ」
『ん?』
「お前ら、もしかして……」
深町と顔を見合わせる。
さっきまでとは違って。
今度は、ちゃんと言えた。
「……まさか?」
「その、まさかやな」
「…マジか!?」
『それが、マジなんです…』
長谷部の目が一気に見開かれる。
「さすがやな、お前には隠せへんわ」
「おー…まじか、いやぁ、そうなったら良いなぁとは思ってたけど」
「え、なになに?!」
慧が慌てて俺らの間に割って入る。
「待って!何の話!?」
『え?』
「俺だけ状況が全然つかめてないんだけど!」
「ふっ」
「どういうこと?教えて?!」
必死な慧を見て、思わず吹き出した。
「久世、ほんまに分かってないん?」
「分かるわけないだろ!」
「いや、まぁ……」
「なんだよ!」
長谷部も笑いながら、慧の肩をぽんと叩く。
「お前はそのままでいいんじゃね?」
「なにそれ?待って待って、わかった!
今のがヒントだろ?」
『…そうだね…うん、そのままでいて(笑)』
「おい〜!弦まで俺を見放すなよ〜!」
教室の中には、文化祭のざわめきと笑い声が溢れていた。
外からは、呼び込みの声が聞こえる。
その中で。
俺は、隣にいる深町をちらっと見た。
目が合う。
ほんの少しだけ、笑ってくれた。
まだ、付き合うってことにも慣れていない。
これからどうなるのかだって、分からない。
それでも。
慧がいて。
長谷部がいて。
隣には、深町がいる。
そんな当たり前みたいな時間が。
これからも続けばいい。
ふと、そんなことを思った。
俺らの夏は、まだ始まったばかりだった。

