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文化祭の約束をしたファミレスの日から、数日が経った。
体育祭が終わって、少しずついつもの学校生活に戻ってきていた。
そんなある日の昼休み。
「瀬良、私のやつも取って」
『ん』
各自で返却するように、教卓に置いてあったノートを田中さんの分も取って渡す。
「ありがと」
『どういたしまして』
「……なんか、今の長年連れ添った感出てなかった?」
『は?』
思わず声が出た。
言った本人は、ケラケラ笑っている。
「ウソウソ、冗談」
『びっくりしたわ……』
「瀬良さぁ、最近田中さんと仲良いよな」
近くにいたクラスメイトが、話に入ってくる。
『んー…まぁそうね』
深町への好意がバレてから話すことが多くなったのは事実だったため否定はしない。
「めっちゃ喋ってるでしょ」
他のクラスメイトも話に参加しだした。
「確かに。昼もよく話してるし」
「もしかして?!付き合ってたりして?」
「ないない」
田中さんが笑いながら否定する。
「いやでもワンチャン?!」
「実は好きだけどまだ言ってなかった、とか?!
だとしたら茶化しちゃって悪……」
その言葉にカッとなって、
『俺!!別に、好きな人いるし』
その言葉に、周りにいた人たちは固まった。
幸いにも昼休み中でクラスの半数以上は居なかったため助かった。
「あちゃー……」
田中さんが頭を抱えている姿を見て、思わず言ってしまった言葉の重大さを知る。
そしたら案の定周りから、
「え、誰?」
「田中さん知ってんの?!」
「教えてよ」
と、一気に声が飛んできた。
『秘密』
俺が笑って誤魔化す。
田中さんも、
「黙秘します」
真顔で拒否した瞬間、
そのときだった。
「はいはい、もういいだろ」
佐藤が、横から口を挟んだ。
「えー、別に聞いてるだけじゃん」
「でも本人が秘密って言ってんじゃん」
「それはそうだけど」
「第一、お前らも好きなやつ茶化されんの嫌だろ?
自分がやられて嫌なことやんなよ」
「……そうだよな、悪かった、瀬良」
『あ、うん……全然』
「じゃあもう終わり」
拍子抜けだった。
いつもの調子で言って、佐藤は机に出していたお菓子を1つ取って食べながら、
「てか田中さん困ってたし」
「え、私?」
「俺の気のせい?」
「……いや…まあ、実はちょっとだけ」
田中さんが苦笑する。
「ほら」
「なんで佐藤が仕切ってんの」
「俺、こういうの得意だから」
「何が?」
「空気読むの」
「自分で言う?」
「ほら、謝んな、田中さんにも」
「ごめんな、田中さん」
「いや!私は全然!ありがとね、佐藤」
「俺はなーんも?」
みんなが笑う。
結局、それ以上は誰も聞いてこなかった。
佐藤も、それ以上何も言わなかった。
ただ、いつも通りくだらない話を始めた。
俺も笑った。
でも。
さっきのことが、少しだけ頭に残っていた。
佐藤って。
こういうとこあるんだな。
普段はふざけてばっかりで。
授業中も先生に怒られて。
誰かが何か言えば、すぐ乗っかってくるようなやつなのに。
ちゃんと、人のことを見てる。
田中さんが困っていることにも。
俺がそれ以上聞かれたくないことにも。
気づいていた。
……そういえば。
前にも、似たようなことがあった気がする。
俺が言いたくなさそうにしてたら、
佐藤は、いつものようにふざけながらも、それ以上は聞いてこなかった。
あのときも。
俺は、ただ助かったと思っただけだった。
でも。
今なら、少し分かる。
佐藤は、ちゃんと俺を見ていたんだ。
そう思ったら、
ふと、中学の頃のことを思い出した。
あれから俺は、
人と仲良くなるのが、少し怖くなった。
仲良くなったと思ったら、実は陰で誰かに何かを言われるんじゃないかって。
何気ないことが、いつの間にか噂になっている。
だから。
高校では、あまり深く関わらないようにしようと思っていた。
誰とでも話す。
誰にでも笑う。
でも、それ以上は踏み込まない。
そのくらいが、ちょうどいいと思っていた。
なのに。
気づけば。
田中さんと恋バナをして。
佐藤とくだらないことで笑って。
体育祭では、クラスのみんなと一緒に走って。
……いつの間にか。
俺にも、ちゃんと友達ができていた。
それも。
俺が知らないところで、俺のことを見てくれている人たちが。
「瀬良?」
『ん?』
田中さんが、こっちを見る。
「どうしたの? ぼーっとして」
『いや……』
少しだけ考えて。
『なんか、いいなって思って』
「何が?」
『こういうの』
「なにそれ?」
田中さんが笑う。
俺も笑った。
前なら。
こんなふうに笑えることさえ、当たり前だと思っていなかった。
でも今は。
この教室にいることが、少しだけ嬉しい。
『……佐藤、ありがとな』
クラスメイトとまた騒ぎ始めた佐藤に声をかける。
「何が?」
『まあ、いろいろと?』
「なんだそれ、変なの」
そう言って、佐藤は何も気にしていないようにまたお菓子を食べ始めた。
その横顔を見て、思わず笑ってしまった。
好きな人だけじゃなくて。
大切な友達。
そう思える人が、いつの間にか増えていた。
キーンコーンカーンコーン……
そんなことを考えていたら昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
文化祭の約束をしたファミレスの日から、数日が経った。
体育祭が終わって、少しずついつもの学校生活に戻ってきていた。
そんなある日の昼休み。
「瀬良、私のやつも取って」
『ん』
各自で返却するように、教卓に置いてあったノートを田中さんの分も取って渡す。
「ありがと」
『どういたしまして』
「……なんか、今の長年連れ添った感出てなかった?」
『は?』
思わず声が出た。
言った本人は、ケラケラ笑っている。
「ウソウソ、冗談」
『びっくりしたわ……』
「瀬良さぁ、最近田中さんと仲良いよな」
近くにいたクラスメイトが、話に入ってくる。
『んー…まぁそうね』
深町への好意がバレてから話すことが多くなったのは事実だったため否定はしない。
「めっちゃ喋ってるでしょ」
他のクラスメイトも話に参加しだした。
「確かに。昼もよく話してるし」
「もしかして?!付き合ってたりして?」
「ないない」
田中さんが笑いながら否定する。
「いやでもワンチャン?!」
「実は好きだけどまだ言ってなかった、とか?!
だとしたら茶化しちゃって悪……」
その言葉にカッとなって、
『俺!!別に、好きな人いるし』
その言葉に、周りにいた人たちは固まった。
幸いにも昼休み中でクラスの半数以上は居なかったため助かった。
「あちゃー……」
田中さんが頭を抱えている姿を見て、思わず言ってしまった言葉の重大さを知る。
そしたら案の定周りから、
「え、誰?」
「田中さん知ってんの?!」
「教えてよ」
と、一気に声が飛んできた。
『秘密』
俺が笑って誤魔化す。
田中さんも、
「黙秘します」
真顔で拒否した瞬間、
そのときだった。
「はいはい、もういいだろ」
佐藤が、横から口を挟んだ。
「えー、別に聞いてるだけじゃん」
「でも本人が秘密って言ってんじゃん」
「それはそうだけど」
「第一、お前らも好きなやつ茶化されんの嫌だろ?
自分がやられて嫌なことやんなよ」
「……そうだよな、悪かった、瀬良」
『あ、うん……全然』
「じゃあもう終わり」
拍子抜けだった。
いつもの調子で言って、佐藤は机に出していたお菓子を1つ取って食べながら、
「てか田中さん困ってたし」
「え、私?」
「俺の気のせい?」
「……いや…まあ、実はちょっとだけ」
田中さんが苦笑する。
「ほら」
「なんで佐藤が仕切ってんの」
「俺、こういうの得意だから」
「何が?」
「空気読むの」
「自分で言う?」
「ほら、謝んな、田中さんにも」
「ごめんな、田中さん」
「いや!私は全然!ありがとね、佐藤」
「俺はなーんも?」
みんなが笑う。
結局、それ以上は誰も聞いてこなかった。
佐藤も、それ以上何も言わなかった。
ただ、いつも通りくだらない話を始めた。
俺も笑った。
でも。
さっきのことが、少しだけ頭に残っていた。
佐藤って。
こういうとこあるんだな。
普段はふざけてばっかりで。
授業中も先生に怒られて。
誰かが何か言えば、すぐ乗っかってくるようなやつなのに。
ちゃんと、人のことを見てる。
田中さんが困っていることにも。
俺がそれ以上聞かれたくないことにも。
気づいていた。
……そういえば。
前にも、似たようなことがあった気がする。
俺が言いたくなさそうにしてたら、
佐藤は、いつものようにふざけながらも、それ以上は聞いてこなかった。
あのときも。
俺は、ただ助かったと思っただけだった。
でも。
今なら、少し分かる。
佐藤は、ちゃんと俺を見ていたんだ。
そう思ったら、
ふと、中学の頃のことを思い出した。
あれから俺は、
人と仲良くなるのが、少し怖くなった。
仲良くなったと思ったら、実は陰で誰かに何かを言われるんじゃないかって。
何気ないことが、いつの間にか噂になっている。
だから。
高校では、あまり深く関わらないようにしようと思っていた。
誰とでも話す。
誰にでも笑う。
でも、それ以上は踏み込まない。
そのくらいが、ちょうどいいと思っていた。
なのに。
気づけば。
田中さんと恋バナをして。
佐藤とくだらないことで笑って。
体育祭では、クラスのみんなと一緒に走って。
……いつの間にか。
俺にも、ちゃんと友達ができていた。
それも。
俺が知らないところで、俺のことを見てくれている人たちが。
「瀬良?」
『ん?』
田中さんが、こっちを見る。
「どうしたの? ぼーっとして」
『いや……』
少しだけ考えて。
『なんか、いいなって思って』
「何が?」
『こういうの』
「なにそれ?」
田中さんが笑う。
俺も笑った。
前なら。
こんなふうに笑えることさえ、当たり前だと思っていなかった。
でも今は。
この教室にいることが、少しだけ嬉しい。
『……佐藤、ありがとな』
クラスメイトとまた騒ぎ始めた佐藤に声をかける。
「何が?」
『まあ、いろいろと?』
「なんだそれ、変なの」
そう言って、佐藤は何も気にしていないようにまたお菓子を食べ始めた。
その横顔を見て、思わず笑ってしまった。
好きな人だけじゃなくて。
大切な友達。
そう思える人が、いつの間にか増えていた。
キーンコーンカーンコーン……
そんなことを考えていたら昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

