キミの1番にはなれないと思ってたけど、


そんなふうに瀬良を見るようになって、しばらく経った頃。

二人三脚のペアを決めるときだって、

『…良かったら俺と組まへん?』

言ってから、少しだけ自分でも驚いた。

何かを一緒にやろうと、自分から誰かを誘ったのは初めてやった。


なんで誘いたくなったんやろ。

理由なんて、いくらでも作れた。

身長が近いとか。

走る速さが合いそうとか。

……でもなにより、

《瀬良と一緒に》やりたかった。

なんでなのかは、まだ分からなかった。


「いや、もっと身長近い人いるかなって」

『んー……瀬良が1番近い』

「……そう?」

『距離がな』

「……ん?距離??」

聞き返されて、言葉に詰まった。


……心の距離が近い。

そう言いそうになった。

いや。

待て。

何言ってんねん、俺。

それはさすがにキモいやろ。

「……」

『……』

返事を返せないまま、一瞬だけ視線を逸らす。

『じゃ、決まり』

何でもないことみたいに言って、無理やり話を終わらせた。

危なかった。

あのまま口にしてたら、どうなってたやろ。



長谷部と話の流れで3人で帰ったときも。

くだらない話をして。

笑って。

歩いて。

……この時間、ずっと続けばいいのにな、

そう思った。

長谷部と一緒にいる時間も楽しい。

でも。

その中に瀬良がいることが、嬉しかった。

帰り道が終わるのが、少し寂しかった。



数学のプリントを忘れていた瀬良に、あとから渡したときは、その場のノリなのか、グーで殴るふりをされた。

一瞬、どう返せばいいのか分からなかった。

でも、瀬良は笑っていた。

……俺といて、楽しいんかな。

そんなことが、ふと浮かんだ。


柄にもない。

そう思った。

でも。

そんなことを考えるくらいには。

俺たちは、仲良くなっていた。

そして。

もっと仲良くなりたい。

そう思っている自分がいることに、少し驚いた。



自動販売機の前を通ったとき、

ミルクティーが目に入った。

その瞬間、瀬良の顔が浮かんだ。

甘いものがあまり好きじゃない俺からしたら、あんな甘そうなものをよく毎日飲めるなと思う。

でも。

瀬良は、それを飲むと目を細める。

そんな姿を休憩時間に何度か見かけたか。


……そんなに好きなんか。

気づけば、ボタンを押していた。

買ってしまってから、少し迷う。

これ、押し付けみたいにならへんかな。

迷惑やったらどうしよう。

それでも、そのまま渡した。


「……何?」

『飲み物』

「いや、それは見たら分かるけど」

『好きやろ』

戸惑った顔。

やっぱりやめとけばよかったか。

「……なんで?」って聞かれて、

咄嗟によく飲んでるのを見ていることを言ってしまった。


でも。

瀬良は優しいから引かなかったようで、

「ありがと」

そう言って受け取り、しばらく持ったままラベルを照れたような感じで見つめていた。


…なにそれ、かわいい。

そんな嬉しそうに笑うと思わなくて。

『ん』

それだけかろうじて返して、前を向いた。

……喰らってしまった。

たぶん、顔に出ていた。

出てないといいけど。


そのまま昼飯を一緒に食べることになって、

箸を忘れた瀬良に、予備を渡したら、

「……俺みたいなやつのため?」

『ちゃう』

ほとんど反射だった。

考えるより先に否定した。

だって……

図星だったから。

前の日に箸を忘れていたのを覚えていた。

また忘れるかもしれないと思って。

気づけば、1本多く入れていた。

後になってから、急に不安になった。

……待って。

俺、否定するの早すぎたんちゃう?

あれ。

逆に図星っぽくなってない?

……気づかれてないよな。

そこまで考えて、ひとりで少し恥ずかしくなった。



授業中、

少し振り返った先に、瀬良がいた。

ウトウトしてる。

何とか起きようという姿勢は垣間見えて、思わず笑いそうになる。

その姿を見ていても良かったが、先生にバレた方がかわいそうだと思って、紙をちぎった。

【瀬良】

【寝てたな?】

わざわざそんなものを書いて。

しかも、似顔絵まで描いて。

今思えば、起こすだけならもっと普通の方法があった。

でも。

瀬良がどんな顔をするのか、見たかった。

……まあ。

その頃は、それが何故なのか、

…なんて考えてなかったけど。