キミの1番にはなれないと思ってたけど、

ーーーーFukamachi Sideーーーー

昨日大活躍だったと思えない男が、

目の前でメロンソーダに刺さったストローをぐるんぐるん掻き回している。

「そういや昨日、後半さぁ、

瀬良ちょっと元気なかったくない?」

長谷部にそう言われて、俺はウーロン茶が入ったグラスをテーブルに置いた。


『……違うクラスなのによく見てんな?』

「お陰様で視界はいい方なんすよ」

これがバレーでも活かされてて!

と語りながら長谷部は何食わぬ顔でメニューを開いた。

「俺、パフェ食べよっかな」

『食べ盛りか』

「環も食べる?」

『いらん』

「じゃあ俺だけ食べよ」

ベルを鳴らし、店員さんにポテトとチョコパフェを追加で注文する。

お昼ご飯を食べた後だと言うのに、よく入るな…こいつ

……身長、ちょっと分けてくれへんかな。

と願いながら、昨日のことを思い返す。


確かに、少しだけ違った。

いつもなら、もう少し笑う。

話しかければ、何かしら返してくれる。

なのに昨日は、どこか上の空だった。

『んー…でも疲れてたんちゃう?』

瀬良のことだとは言わずに話題を戻したが、すぐに話にノッてきた。

「まあ、あんだけ動けばな」

長谷部はそう言って、またストローでカランコラン鳴らす。

その姿を見て、自分もグラスに手をかけたが飲むのをやめた。


…どうしても、瀬良のことが頭から離れない。

昨日の瀬良。

リレーの前、少し緊張した顔。

俺が「瀬良なら大丈夫」と言ったときに、素直に頷いてホッとした顔。

それから。

俺からバトンを受け取って、走っていった背中。


……なんで俺、こんなに気になるんやろ。

ふぅ、と思わず小さく息を吐いた。

最初は、こんなことなかった。

むしろ………

…少し苦手だった。



瀬良は、明るかった。

誰とでも話す。

誰にでも笑う。

けれど、当たり障りのないことしか言わない。

何を考えているのか、よく分からない。

不信感、とまではいかなかった。

ただ、どこか信用できない。

勝手に、そう思っていた。

席が近くなるまでは。



最初にちゃんと話したのは、消しゴムを拾ったときだった。

落ちていた消しゴムを拾って、机の上に置く。

『はい』

「ごめん、ありがとう」

それだけで終わると思っていた。

けれど。

「……深町ってさ」

『ん?』

「前に、どっかで会ったことない?」

一瞬、頭が真っ白になった。

……え。

どっかで会ったことある?

それって、あれか。

ナンパとかでよくあるーー……

いや。

そんなわけないやろ。

瀬良がそんなこと言うわけない。

そう思い直したのに、返事が少し遅れた。

『……ないんちゃう?』

「そっか」

瀬良は、それ以上何も言わなかった。

俺も、それ以上は聞かなかった。



ただ。

その日から、気づけば、瀬良を見ることが増えていた。

授業中。

休み時間。

誰かと話しているとき。

ぼーっとしているとき。

そして、よく目が合った。

目が合うたびに、瀬良は少し驚いた顔をして、それから笑う。

……なんか可愛いな。


思わずそう思って、慌てて視線を逸らす。

何考えてんねやろ、俺。

ただ目が合っただけ。

なのに、なんでこんな嬉しいんやろ。

最初は、何を考えているのかさえ、分からないと思っていた。

でも。

見ているうちに、少しずつ分かるようになってきた。

眠そうなとき。

困っているとき。

誰かと話して笑っているとき。

そんな小さな変化まで、気づけば目で追っていた。

……俺、瀬良の何を見てたんかな、

そう思うくらい。

最初の印象なんて、とっくに薄れていた。