
- 作品番号
- 1790490
- 最終更新
- 2026/09/30
- 総文字数
- 18,921
- ページ数
- 7ページ
- ステータス
- 完結
- いいね数
- 7
- ランクイン履歴
-
ヒューマンドラマ5位(2026/09/23)
- あらすじ
- 親の期待に応えられず、ストレスから味覚と嗅覚を消失してしまった女子高生、あゆり。
雨の日に学校に行けなくなったところで、不思議な女性、志田メイサに出会う。
メイサに誘われて、彼女の家についていくあゆりだったが……。
歳の離れたふたりの間に芽生えた、ほのかな灯火。
この作品の感想ノート
読み終わってまず感じたのは、繭というタイトルが最後まで読んで初めて完成する作品だということです。
冒頭の、味も匂いも感じられなくなったあゆりの描写から、すでに彼女が自分の人生を生きているというより、親の期待の中に閉じ込められていることが伝わってきました。特に正しいのはいつも姉で、まちがっているのは私」という感覚が痛いほどリアルで、成績や進路だけではなく、自分自身まで否定してしまう苦しさが丁寧に描かれていると思います。
そして何より、志田さんというキャラクターが圧倒的に魅力的でした。
最初は美しくて自由で何を考えているのか分からない人物なのに、読み進めるほど彼女自身もまた傷を抱え、大人という繭の中にいたことが分かる。
この構造が本当に上手いです。
親の期待に苦しむあゆりと、社会に適応できず引きこもってしまった志田さん。
一見まったく違う二人なのに、自分の居場所がないという部分で繋がっていく。その関係性が、この作品の一番好きなところです。
特に終盤の蚕の羽化と、あゆりの味覚が戻る場面は、とても綺麗でした。
繭から出ることと、自分の人生を選び始めることが重なっていて、タイトルの意味がそこで一気に立ち上がります。
しかも、すべてが解決したわけではなく、これから闘わなくてはいけないというところで終わるからこそ、物語が現実に続いていく感じがしました。
重い題材を扱いながら、最後にはちゃんと光を残している。
登場人物の危うさ含めて、とても印象に残る作品でした。
読後にタイトルをもう一度見返したくなる作品でした。
17歳の思春期の悩みの繭に包み込まれた、あゆりの心を覗き込んだような。美しい文体に情景描写と心理描写が相混ざり合い、世間では悪と言われる行為にさえ、美しさを感じました。それぞれの人生の中で、最後の朝食の時間はいつまでも残るんだろうなと、読後感も良かったです!いい結果になりますように。
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