悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「まあ、それはもう終わったことだからいいの。結婚しなくても本を売って収入が安定すれば一人でもやっていけるわ。それより私はクロムにちゃんとお嫁さんを見つけてもらいたいわ」

 親戚に一人はいる、お節介なお見合いおばちゃんみたいなことを言ってしまうが、苦労性な弟には是非とも幸せな結婚をしてほしいものだ。

 私も今世で貴族に生まれてしまった以上、お家のためにどこかで結婚しないといけないのはわかるけれど、それは今じゃなくてもいい。
 
「な、何をいうんですか姉上。俺は姉上がきちんと嫁ぐのを見届けないと、心配で嫁を貰うなんてできませんよ」

「心配性ねえ」

「今日だって、せめてドレスで来ていれば王子の目に留まったかもしれないのに」

 舞踏会が始まったけれど、王子は結婚に乗り気な令嬢たちに囲まれて身動きが取れなくなっている。

 まるで、空港でマスコミとファンに取り囲まれた訪日ハリウッド俳優。もしくは上野動物園のパンダ。

 ああいうふうに囲まれても立場上邪険に扱えないだろうし、王族に生まれなくてよかった。

 見ているだけで息が詰まりそう。

「父上が行ってきなさいっていうから参加しただけよ。私は自分が王妃になれるなんて思っていないわ。王族って、国と国民の未来を考えられる人じゃないといけないでしょう」

「姉上……」